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キミに逢えたら  作者: ちびすけ
再会
14/51

5

 貴族街にあるリュシーさんの家から出た私達は、人々が賑わう商店街に来ていた。

 ルルちゃんと王子が率先してガイドしてくれるので、海外旅行に来ている感じだ。

 会社をズル休みした気持ちになる。

 右手にりんご飴みたいな物を持ち、左手にルルちゃんの手を繋いでこの異世界旅行を満喫中。

 ルルちゃんに手を引かれて目尻が垂れさがりつつ、私の良心はズキズキと痛んでいた。

 携帯の時計の表示を見ると、只今PM18:45。普通であれば私も仕事をしている時間である。

 今日は色々とやる事があったから、皆はまだデスクの前で忙しく仕事をしていることであろう。

 私は遠い世界にいる仕事仲間へと心の中で、すみませんと謝っていたのであった。




 それから少し時が経ち───。



 家全体が傾いた怪しげな店の前を通った時、ルルちゃんがそこで何かを見つけたらしく、急に足を止めた。

 私の手を離したルルちゃんは、お店の前に陳列されている所にダッシュで走って行く。

「全くあいつは……」

 溜息を1つ吐いたエド君は、ウンザリした表情でルルちゃんを連れ戻しに後を追う。

 そんな2人を見ていたら、ルルちゃんの歓喜した声が聞こえてきた。

「わぁ~。このコがこんな値段で売られてるなんて!」

「……ルル、今は材料の調達をしに来たんじゃないんだぞ」

「むぅ~っ。分かってるよぅ。……でも、滅多に手に入らないんだよ?」

「………………」

 口を尖らせ、ブーブー文句を言うルルちゃんにエド君が頭を掻いているのを見詰めながら、私は隣にいるハーシェルさんに声を掛ける。

「ねぇ、ハーシェルさん。あの二人は何をしてるの?」

「多分、珍しい薬の材料でも見つけたんでしょう」

「薬? ルルちゃんって薬を作ったり出来るんですか?」

「えぇ、ルルは薬師なんです」

「薬師? へぇ~、凄いん───」

「まぁ、薬師は薬師でも、頭に“毒”が付きますが」

「………………」

 私の言葉を遮り、王子はサラリとそう言った。

“薬師”の頭に“毒”が付くという事は……毒薬師ってこと?



 あの可愛い顔をしたルルちゃんがっ!?



 余りの衝撃に固まっていると、今までエド君に熱く語っていたルルちゃんがクルリとこちらに振り向き、王子の元へ駆けて来る。

「ねぇっ! このコ、自白剤の魔法薬を作る材料になるの。だから買ってもいいでしょう? ハーシェル」

 何か気になる言葉があった様な気がしたが……そんな事よりも、彼女が持っている物を見た瞬間、私は目を見開いた。

「……ルルちゃん、それは一体何なんでしょうか?」

「ん? これは、ゴルキュシュの森に住んでいるミュミュットって言うの。見た目が可愛いんだけど、猛毒を持っているから、持つ時には注意が必要なの」

「…………へぇ~」

 私は乾いた返事をしながら、ルルちゃんの手元に視線を落とす。



 ……か、わいい? どこがっ!?



 そいつの大きさは体長30㎝ぐらいの大きさで、コウモリみたいな体と羽があった。

 顔の中央に豚の鼻みたいなのがドーンと付いていて、目付きは鋭く、こっちに向かって「キシャーッ!」と威嚇しながら牙をチラつかせていた。

 こいつのどこが可愛いんだ。

 まぁ、可愛い部分を上げろと言われたら、兎のような長くてモフモフした耳と、ミュミュットって言う名前だけだ。

 私はそんなブサ可愛い(?)ミュミュットを見つめる事しかできなかった。

「ねぇ~、いいでしょう? このコがいると、今まで作れなかった薬が3個以上は作れるんだよ」

「…………仕方がないですね」

 王子は懐からお金が入った袋を取り出すと、差し出したルルちゃんの手を素通りして、それをエド君に渡した。

「あっ」

「ルルに渡したら余計な物まで買ってしまうからね。エド、任せたよ」

「あぁ」

「むぅ~っ!!」

 口を尖らせていたルルちゃんであったが、エド君がお金を持って店の中にいる店員さんの所に行くと、慌てて追いかけて行った。

「………………」

「………………」

 そんな2人を見詰めていた私だったが、王子と2人で待っている間、何を話せばいいのか悩む。

 リュシーさんやジークさん以外には、私が異世界から来たという事を話していない。

 別に、秘密にしようとかは思ってはいないけど、彼らに話すのはもう少し後にしようと思っていた。

 だから、べラべラ喋りすぎてボロを出さない為に、私は言葉を選びながら話す必要があるのだが……。

「………………」

「………………」

 しかし、間がキツイ。

 私は何か話の話題は無いかと周りをキョロキョロ見渡す。

 すると、道の先の方に人だかりが出来ているのを見つけた。

 おっ? これを話の話題にすればいいじゃん。

 そう思った私は、早速その話を振る事にする。

「ねぇ、ハーシェルさん。あそこに人が沢山並んでいますが、何をしているんですか?」

「あぁ、あれは……」

 人だかりに指を指しながらそう言うと、王子は1度そちらに目をやってから何かを言い掛けたが、急に黙ってしまった。

「あの、ハーシェルさん?」

 どうしたのかと、彼を見上げたら、王子……いや、奴は前振りもなにもなく突然こう言った。



「トオルさん。私の事は、ハーシェル、とお呼びください」


 

 この人は急に何を言ってるんだ? っていうか、私の質問は無視かよ。

「あ~……年上の方を呼び捨てにするのはちょっと……」

 心の中で勝手に『王子』と呼ばせてもらっているが、本人を前にして呼び捨てにするのはちょっと抵抗がある。

 同じ事をリュシーさんやジークさんにも言われて断った。だから、王子にも同じように言おうとしたのだが。

 彼は悲しそうに目を伏せると、肩をガックリと落とした。

 それがより一層悲壮感を漂わせている。

「どうしても……そう呼んでは頂けないのですか?」

 潤んだ様な目で見つめられ、私は続く言葉が出なかった。

「………………」

「………………」


 いやっ、そんな目で見ても駄目ですから!


「………………」

「………………」


 ホント、年上を呼び捨てにするのは……。


「………………」

「………………」


 見つめ合う事数秒間。



 私は負けた。



「分かりました。…………ハーシェル」

 溜息を吐きつつそう言うと、奴はニッコリ笑ってさらに───。

「敬語もなしで」

 口元が引き攣りそうになる。年上に敬語を使わないで話すのって、ほんっっとぉーに苦手なのに。

「じゃあ、ハーシェルも私の事を呼び捨てでいいし、話す時は敬語もいらないから」

「あっ、それは出来ません」



 即答したがった。



「何でっ!?」

「女性を呼び捨てにするなど、とんでもない!!」

 グッと拳を握り、熱く語る王子。

「リュシーさんやルルちゃんは、呼び捨てにしてたじゃん!」

「それは、あの2人を“女”の部類に入れていないからです」

「………………」

 それってちょっと酷くないか? と、思いもしたが……何かもう、どうでもよくなってきた。

 王子がそうしてほしいなら、敬語も何もかも無しでいいや。

「どうしたんですか? トール様」

 ガックリと項垂れていたら、あのブサ可愛い生き物を鳥籠に入れて、上機嫌に戻って来たルルちゃんに「なにか疲れ切った顔をしてますけど」と心配されてしまった。

 何でもないよと言おうとしたら、口を開く前に王子が「私の事を名前で呼ぶようにしてもらいました」と喋ってしまった。

 おかげで、ルルちゃんとエド君の2人も、「それじゃあ私達も呼び捨てで!」と騒ぎだす。

「あー、はいはい」

 分かったよと言ってから、私もルルちゃんとエド君にお願いした。

「それじゃあ、ルルもエドも、私の事を“様”を付けて呼ばないようにしてくれない? あと、敬語もいらないから」

「……トール、と呼べと?」

 エド君が首を傾げながら聞いて来たので、私はそうだと首を縦に振る。

 前々から思っていたが、様付けで呼ばれると、どっかのお嬢様か何かになった気分だ。



 ───まぁ、見た目は男だが。



「分かりま……分かった」

「うん。わかった」

 数秒悩んでいたエド君であったが、あっさりとそう言ってくれた。そして、それに続くルルちゃん。

「それじゃ、そう言う事でヨロシク」







「ギルドって言うんですか」



 呼び名がうんぬんという話が終わり、私が聞きたかった事を漸くハーシェルから聞く事が出来た。

 道の先に出来ているあの人だかりは、腕に自信がある人が自分を売り込みに『ギルド』という場所に集まっているそうだ。

 そこは年齢性別関係なく、実力があれば入れるし、割り当てられる仕事によって違うらしいが、給料がかなり高いとの事。

 それを知っている為、ギルドに入るために躍起になるとか。

 だから、ギルドの前にはいつも人だかりが出来ているらしい。

 だが、弱ければ門前に控えている大男に、追い払われるとのこと。

「ふ~ん。ギルドね」

 私がなるほどねとか思っていると、突然、前から走って来た人物とぶつかってしまった。

「うわぁ!?」

「いてっ!!」

 倒れそうな所を王子に助けられ、お礼を言いつつ地面に倒れた人物に目を向けると、



 まっ白い髪を肩の所で切り揃え、紫色の瞳をした少年が涙目でお尻を擦っていた。



「いったぁ~」

「ごめんね、大丈夫?」

「いや、僕が前を見ていなかったのが悪かったんだ。お前こそ大丈夫か?」

「大丈夫だよ。立てる?」

「あぁ、すまない。───それじゃあ、僕は急いでるんで」

 手を貸して立たせてあげると、少年は頭を下げて走り去ってしまった。

「行っちゃった」

 まだ12、3歳くらいの少年は、直ぐに人混みの中に隠れてしまった。

「どうしたんだろう?」

「さあな、辺りを見回しながら走っている所を見ると、誰かを探してでもいるんだろ」

「そうなのかな? あ、トール。怪我は無い?」

 ルルが、少年が走り去った方向から目を逸らし、私に心配そうな顔をして聞いて来た。

「大丈夫だよ、倒れそうになったけど、ハーシェルが助けてくれたしね」

「そっか、良かったぁ」

「ありがと、心配してくれて」

 2人で見つめ合いながら笑っていると、エドが「のどが渇きませんか?」と言って来た。

「そう言えば、ずっと歩きっぱなしでのどが渇いたかも」

「私もぉ~」

「そうですね。それでは、少し休憩しましょうか」

 と、言う事で、私達は次にエドの行きつけと言う店に行く事になった。





「あそこの角を曲がったら、『エルモ』という店があります」

 人々が賑わう道から少しずれ、狭い道を歩く事15分。

 エド曰く、そこの『エルモ』と言う店は厳ついおっさんが経営しているらしいが、武骨な手からは想像も出来ないほどの料理を作るらしく、飲み物も絶品らしい。

「うわぁー。楽しみぃ」

 早く飲みたいねと、ルルと2人で話しながら歩いていたら───。



「離してったらっ!!」



 もう少しで『エルモ』に着くという時に、急に女性の嫌がる声が聞こえてきた。

 辺りを見回すと、エドの行きつけの店がある場所の反対方向に、数人の男に囲まれた女性がいた。

 白いフードを深く被っているので顔はよく見えないが、男に右手を掴まれ、下唇をギュッと噛んでいるのが見えた。

 怯えているのか、下を見たまま固まっている。

 それを見た私達は1度目を合わせると、彼女を助けるべく、下ひた笑いをする男達の元へ走り出した。

 王子は腰に佩いていた剣の柄に手を掛け、エドはどこからか取り出したナイフを右手に持ち、ルルは……得体のしれない液体が入った小瓶を持って、ウフフフと不気味な笑いをこぼしていた。

 何が入ってるんだ、あの小瓶……。

 そんな事を思いつつ、私は嫌がる女性を取り囲んでいる男共へと走りながら叫ぶが。

「ちょっと、その人嫌がって───」

「離せって言ってんだろうがぁっ!!!」

 俯いてた女性が、掴んでいた男の手を逆に掴み、急所に思いっきり蹴りをかましていた。



「「「「!?」」」」



「ぐおぉぉぉぉぉっっ!?」

「汚ぇ手で触ってんじゃねぇ!」

 そして、痛みで蹲った男の顎に、膝蹴りがきまる。

「「「「………………」」」」

 私達は、一瞬何が起きたのか分からず、フリーズするしかなかった。

「お前らも同罪だぁ!」

 そう言うと、その人は周りにいた男共を1人でボコボコにやっつけてしまい、瞬く間に彼女の足元には伸びた男が数人転がっていた。

 全くもって、出番が無かった私達。

 助けようと差し出した手が、いやに虚しい。

「ん?」

 パンパンと手を払っていた女性がこちらに気付き、ジッとこちらを注視する。

「ん~!?」



 ……なんか、私を見てる?



 何だろうと思っていたら、その人は突然こちらに向かって走り出して来た。

「えっ!?」

 ギョッとして体を引こうとするも、その人は意外と足が速く、素早く私に近づくと。



「会いたかったぁ~!!」



 私の胸に飛び込み、ギュッと抱きついて来た。

「し、知り合いなのか?」

 エドがビックリした顔で聞いてきたが、私は返事をする事が出来なかった。

 だって、今まで顔が隠れて分からなかったけど……近くで聞いたこ女性の声は。



「……零」

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