表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

21

作者: ぶどう

一日に、500ミリリットルのミネラルウォーターを1本、オフィス近くのパン屋で売られている200円のタマゴサンド1つ、あとはコンビニで売られているマネケンのワッフルを夜に1つ。これで全部。


拒食症のつもりはない。ただ胃の中に何かモノが入っていてぐらついている感覚が嫌いなだけ。いつか仕事のストレスが重なって自暴自棄になり普段食べない弁当を食べたら、どうしようもない吐き気に襲われて翌日まで動けなくなった。食べ物が私の胃の中で私と同化しようとしていると思うと吐き気が込み上げる。だから私の許せる最低限のモノしか食べない。


定期的に貧血が酷くなって病院に点滴を受けにいく。ベッドで横になっているのは楽だけど、病院は嫌いだ。医者が私を見ると、なにか私の過去まで全て見透かされているような気分になる。医者は私の読めないドイツ語でカルテに何やら書き込む。私が知らない私のことを医者が知っていることが許せない。看護婦は猫撫で声だが私を一人の患者として割り切って扱っていると思うとまだ我慢できる。何より女だ。けど医者はわからない。あれは多分勉強もできて私の知らない世界を知っていて男。堪えられない。


昨日、自宅のポストにキリスト系の宗教勧誘のビラが入っていた。どうも私達は神とやらに愛されているみたい。私達が行う善行も悪行も髪の毛一本まで見守られているらしい。そんな気持ち悪い存在が本当に証明されたら、私は誰よりも早く自殺するだろう。


今日も携帯電話がなる。無造作に床に転がって天井を眺める平和な休日は、近年で最悪の発明品、最悪の文明の利器によって妨げられる。仕事を始める前は持っていなかった。持たざるもの働くべからず、誰が言い出したのかは知らない。何度か川に投げ捨てたけど、その度誰かに怒られて新しいものを買うための無駄な出費が増えるだけだった。



そう、私も最近気付いたのだけど、潔癖症だ。この性質は厄介でいつでも社会から圧迫されているように感じてしまう。そしていつでも綺麗で純粋な存在になりたいと夢見ている。


できることならば、森の奥で一人、霞と空気だけを食べて、ゆっくり朽ちていきたい。


それができないから潔癖症なんて言葉が存在する。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ