ブルガリア帝国入隊
お城の渡り廊下で見詰め合う恋人たち。
ひとりは名前をカンディードといって、天真爛漫な性格だった。
お相手の貴婦人はキュネゴンドといって、カンディードよりも少し年上。
少年カンディードはこの美しく熟した婦人に、非常に熱を上げてしまい、今日も見詰め合う。
キュネゴンドのほうでも、こんなにかわいらしい少年は世界に彼以外、まずいないといって、そのふくよかな唇をカンディードの顔に近づけていく。
というのも、パケットという女官とカンディードの先生である哲学者、パングロスとがいちゃついているのを目撃し、彼らもまた、興奮してしまったのであった・・・・・・。
そこを通りかかった兄、ツンダー・テン・トロンク二世が通りかかって、おおあわて!
「このくそガキ、よくも恥知らずなことをしてくれたな。俺の目が黒いうちは、貴様を妹に近づけない!」
兄上はカンディードの尻を、二十回も蹴り飛ばし、殴りつけ、ようやく気が晴れたところで追放してしまった。
キュネゴンドは悲しみにくれ、よよよ、と泣き崩れる。
途方にくれたカンディード、がっかりとして城を出て、城下町へと足を向けた。
ところが城下町の酒場に行くと、傭兵らしき男がカンディードに愛想良く声をかけてきた。
これが悲劇の始まりで、しかし何も疑わないカンディードは、この傭兵と食事をする。
「あんたは、ブルガリア帝国を愛しているか」
と聞けば、カンディードは、
「いいえ。僕がこよなく愛するのは、キュネゴンド姫です。また会いたいなあ」
傭兵は苦笑しながら、
「じゃあ、とりあえず兄ちゃん。皇帝さんのためにいっぱいやらねえか。なんせよう、ハプスブルクに忠誠誓っておけば、まず間違いなく・・・・・・そう・・・・・・あれよ、そのキュネゴンドさんにだって会えるぜ」
だまされたとも知らずにカンディードが酒をあおると、兵士が鎖を持ってきてカンディードの足にはめた。
足かせである。
つまりカンディードは、帝国の軍事施設に無理やり入隊させられて、訓練をおこなう羽目になってしまったのである!
こまったことに巻き込まれたカンディード。
いえいえ、これだけじゃすまないのが、この話の味噌なのですよ・・・・・・。