いやすぎるー!
予定通りにコンスタンチノープルへ向かう一行。
カンディードはキュネゴンドに会えると浮かれていたが、カカンボはなぜか苦虫を噛み潰した顔をする。
「どうしたの」
とカエデ嬢がカカンボの袖を引っ張って尋ねる。
「じつはね、キュネゴンドさんだけど」
カカンボはそっとカエデ嬢に耳打ちした。
「それって、かなりやばいのでは・・・・・・」
「だから困ってるんだよね」
「あらら。きっとカンディード、怒るわよ」
カカンボは肩をすくめた。
「でも俺のせいじゃないし、しかたないもんね」
「まあ、そうだろうけどさあ。かわいそうになってきた」
は、とカカンボが笑いだか、ため息だか、複雑な呼吸をした。
「そ、そのうちなれるさ、きっと」
「そういう問題?」
というやり取りを甲板でしていると、そばで聞いていたマルチンが横から口を出した。
「人生そんなもんでしょ」
カカンボとカエデ嬢は、引きつった笑いを浮かべていた。
コンスタンチノープルにつく途中、じつはキュネゴンドの兄とパングロスとが同時にガレー船の奴隷にされていて、生きてました、という出会いが待っていた。
その船こそカンディードたちが乗っていたガレーで、まさに不可思議な偶然!
しかしツンダー・テン・トロンクは変わらずに傲慢で、パングロスはかわらずの楽天主義者であった。
「どんなに不幸でも、わしは幸せなんだよ。カンディード」
いろいろ苦境を味わってきたカンディード、そろそろこの思想に嫌気が差し始めて、パングロスの意見を否定していた。
そしてコンスタンチノープルで待っていたキュネゴンドを見て、カンディードはがっかりする。
もちろん、兄も。
「ああ、なんてこった。僕の最愛の人」
「おお、俺の最愛の妹って、きさまぁ、カンディード。身分をわきまえず、まだキュネゴンドを妻にと申すか」
「なんだよ、妻にしちゃいけないのか。だいたい、こんな鮫肌で、醜い女など、誰が貰い手があろうか。それをこの僕がわざわざ、もらってやろうといってるんだぞ」
「ほざけ」
領主が高飛車に笑い飛ばす。
「貴様にくれてやるほど落ちぶれた姫ではないわ!」
「なにを〜」
たまりかねたカカンボは、いいかげんにしろとけんかに終止符を打ち、カンディードにローマへ送り込んでしまえといった。
トロンクは、ウエストファリアをブルガリアにつぶされて以来、ローマの法王に仕えており、それなら法王庁で面倒を見てもらえればいいじゃないか、という結論に至った。
肩の荷が下りたとカンディード。
ところが一難去ってまた一難、今度はキュネゴンドがヒステリーを上げてカンディードをなじる毎日。
「もうこんなのいやぁぁ」
カンディードはねちねち聞かされる最愛の人、キュネゴンドの文句が、脳裏に残っていくのであった・・・・・・まるで呪いのようにして。
例によって老婆も機織をしたりして生活していたが、マルチンも、パングロスも、そしてカカンボとカエデ嬢も、カンディードの下を去り、残ったのはキュネゴンド姫だけであった。
「これからもずっと一緒よぉ、カンディードぉ。げへっ、げへへっ」
カンディードの悲痛な叫びが、屋敷内をこだまする。
「こんなの、いーやーだぁぁぁぁ・・・・・・!」
カンディードはこれでエンドを迎えたわけだけど、もちろん、この話には続きがあって・・・・・・。
たしかにねえ、こんな最後いやだわ・・・・・・。