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黒刀のピンク・ラビット  作者: のら


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第5話 スカイダイバー戦:2

「ガキには興味ねぇから、とりあえず死ね」

 スカイダイバーの言葉より先に動いたのは、ラビットだった。


 ビルの長い廊下を一足飛びにスカイダイバーとの距離を詰める。

 黒刀のレンジに入る刹那、スカイダイバーはせせら笑った。


「ばぁか」


 スカイダイバーの指先がラビットの背後を指し示した。

 刀に手をかけた瞬間、背後で重力が爆ぜた。ラビットは落ちるように引き戻される。


「……?」

 

 まるで何かに背中を掴まれた感覚。だが、ラビットは視線を敵から外さない。


「ピンク・ラビット!これ、やるよ!!」

 スカイダイバーは重力に引っ張られるラビットに、マフィアが落とした短刀を3本、矢継ぎ早にラビット目掛けて投げつけた。


「ちゃんと見ねぇと、その真っ白な肌が赤く染まるぞーッ!」


 瞬時のラビットの戦闘UIに赤い軌跡線が三本走る。

 一秒後の衝突点まで、点滅していた。

 ラビットは二本を弾き、背後の壁へ跳ぶ。


 ――予測通り。

 3本目を弾こうとした時だった。


「電脳の予想通りに行かねぇのが現実ってもんだよ、メスガキッ!!」

 スカイダイバーは狙ってた通りに、3本目に作用する重力をずらす。

 

 予測が外れた。短刀が左太腿を裂く。


『左太腿損傷:ダメージランク/軽度』

『損耗度:3%』

『ナノマシン修復所要時間:120sec』


 ラビットのUIが警告表示を発する。


 体勢を崩されながらも、すかさず壁を蹴り上げ、スカイダイバーに向き直るが、また重力を変更され、今度は天地が反転する。

 その都度、血が頭に集まり、次の瞬間、空になる。


 視界が一拍遅れる。


「……やりづらいヤツ」


 ラビットは焦る様子もなく、敵を見据えると、重力が発生した天井を蹴り上げ、床にワンタッチして、すぐに右壁へと飛び移る。


(脚力値が20%上がっているけど、相対的に他の値が落とされてる……)


 ラビットは自身のパラメータが変更され、ハイスピードバトル向けになっているのを確認すると、それに合わせた戦況予測を組み直した。


「ちょこまかとッ!どんだけ身体能力上げてある義体なんだ、コイツッ!」

 スカイダイバーの右手が次の重力面を決定できない。


 そして、間合いに入る。

 ラビットの指が刀の鍔に触れる。

 抜刀――首元へ。


「斬られるのはお前だよ、メスガキィッ!」

 そういうと、スカイダイバーはラビットに手を向けて、指を弾いた。


 重力源がラビットを差す。


次の瞬間、スカイダイバーを狙っていたはずの黒刀もまた重力を受けて、ラビットの胴体目掛けて向かってくる。


「死ね、都市伝説!」

 スカイダイバーの目が笑う。


 それは黒刀がラビットの体に触れる直前だった。


 自傷行為と判断したラビットの自己防衛プログラムが発動し、刀はラビットの体に刺さる手前で弾き飛ばされる。

 そして、ラビットもまた後方に飛び、スカイダイバーと距離を取る。


 片膝をついて、廊下に着地した瞬間にラビットは自分の周りの空気を薙ぐように刀を回した。


 空間を裂く一閃。裂け目から現実が戻ってくる。

 黒刀「ブラックアウト」が光を爆ぜる。

 光の裂け目から、現実が戻ってくる。


「おいおい、自己防衛プログラムは反則だろ!めんどくせぇ敵だな、おい」

 この時、立ち上がったラビットを見て、スカイダイバーは違和感を感じていた。


(重力はそこにはないはず……なのに、なぜ廊下に足をつけてる)


 スカイダイバーはラビットが放ったロールバックに気付いていなかった。

 彼のセンサーは「重力」の異常しか追っていない。現実の復元は検知外だった。


 敵が思考を巡らせた瞬間の隙を、ラビットは見逃してはいなかった。

 間を置かず、すぐにその場から飛び跳ね、上下左右の壁や天井を弾かれたピンボールのように跳ねながら、スカイダイバーの重力操作を躱す。


 ラビットの動きが早く、スカイダイバーも照準を合わせきれずにいた。


 吹き荒れる嵐の様な、三次元の動きの中で、ラビットは一瞬だけスカイダイバーと目を合わせた。

 目が合った瞬間、相手の視界に指を差し込む。


 次の瞬間、世界が「偽装された現実」に切り替わった。


 スカイダイバーの目に映っているのは、誰もいない空の廊下。――偽装。


「――ッ!? どこ行った!?」


 サイバーアイのサーチセンサーをノイズが走るギリギリまで感度を上げてもラビットの反応が見当たらない。


「――クッソ!!ヴィジョン・ハックだな!?」

 スカイダイバーは瞬時に視覚系デバイスの再起動を掛け、失った視覚の代わりに、サウンドセンサーのゲインを上げた。


 タタンッ、タンタンッ。


 スカイダイバーは室内に響き渡る足音で、上下左右を移動しながら自分に凶刃を向ける音を察知した。

 床を踏み鳴らす音、体が風を切る音、刀の風切り音、それらのサウンド情報から位置を割り出し、対処しようと電脳が処理を始めた瞬間――


「――ガッ!?」


 ラビットの強烈な蹴りが、スカイダイバーの腹にめり込む。


 その威力で壁を突き破り、狭い室内から屋外へと放り出された。


 地上三階からの落下中、視覚デバイスのリロードが終わった。


、ラビットを睨むスカイダイバー。

 そして、それを見下ろすピンク・ラビット。


「ハハハッ!さすが都市伝説だなッ! かかってこいよ、ピンク・ラビットォッ!!」

 スカイダイバーは両手を開いて、ラビットを挑発する。


「……」


 ラビットは抜き身の黒刀とともに無言のまま、ビルを飛び降りた。


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