モブになりたい聖女様は田舎でスローライフを目指す
「・・・っ・」
それはあまりに突然で膨大な情報がルイーズの小さい脳みその中を終わりのない流星群のように占領していった。
脳の処理が追いつかず、頭の片隅で流れ星は電波より速いのだろうかとか頭の悪い現実逃避をし始めた頃、キャパオーバーになった私はそのまま気絶したのだった。
事の始まりは、幼馴染であるユリウスのいつもの意地悪である。
私はジョラ山脈にある町でソフィアとイゼルという夫婦が営むお店フィーゼの給仕をいつものようにしていた。
そこへやってきたユリウスがちょっかいをかけてきてバランスを崩した私はその拍子に転んでしまい机で頭を打ったのだ。
そしてこの世界は前世で見ていたアニメ「世界を救え聖女様」の舞台であることを思い出した。
平民ながらに強い魔力を持つ私は貴族が大半を占める魔法学園に入ることになる。貴族に虐められるのに耐えながら、ルイーズの友達となるツンデレな公爵令嬢アンジェリックとその幼馴染侯爵令息コンラッド、次期騎士団長ジェラール、寡黙な第一王子リシャールの逆ハーレムできゃっきゃうふふになるハッピーエンド物語だ。
前世ではブラック企業に勤めてしまい異世界に行き魔法で堕落した生活を送りたいと願っていた私には僥倖だった。しかし魔法学園に行ったら虐められるし容姿はルイーズかもしれないが中身はもう違う人間だ。
それに良くしてくれているソフィアやイゼルと離れたくはない。このまま此処で穏やかな暮らしがしたいーーーそう願っていたはずなのに。
田舎でスローライフをしたいヒロインですが、アニメに定められた運命には逆らえず、いつの間にか物語の中心に巻き込まれていきます。運命に抗おうとする怠惰で意志が弱めのヒロインですがどうぞお楽しみください。
いちゃいちゃは後半に詰め込むつもりです。