その聖女、????につき
やってみたかった『婚約破棄』のテンプレ。
…からの、ゆるゆるファンタジー。
「婚約破棄はこうじゃない!!」って言わないで(´Д⊂ヽ
「フェリシア、君との婚約は破棄させてもらう」
………? レオノール様、何を仰っているのか分からないのですが…。
ここは王宮。王と王妃、国の重鎮たちを前に、王子であるあなたが、そのような宣言をして良いのですか?
…ですが、何だか皆様、重苦しい表情をされておいでですね。
「………すまない」
レオノール様…、謝罪とは…。
その王子らしからぬ装備といい、隣にいるハレンチ極まりない露出狂のとんがり帽子の女といい、何か理由があるのでしょうか。
―――私、フェリシアは、数百年に一度現れる稀代の『聖女』と呼ばれています。
そのため、この国の王が、私を王子・レオノール様の伴侶と定め、婚約を結んだのです。
………が、ともかく、
「…レオノール様、理由をお聞かせ下さい」
いきなり婚約破棄を申し渡されても、納得は出来ません。
レオノール様のその不格好な鎧兜、大きな盾…。まるで戦にでも向かうかの様です。
私が訝しんでいると、レオノール様は重い口を開きました。
「…先日、この国に『神託』が降りたことは、フェリシア、君も知っているだろう」
ああ、そういえば。
確か、この世界と敵対する今世紀最強の『魔王』に対抗出来る『勇者』が覚醒した、とか。
私が頷くと、レオノール様は、
「その神託を授かった『勇者』が、私なのだ」
! 何という!
それでそのような姿だったのですね。
…ですが、それと婚約破棄と、どういう関係があるのでしょう。
「神託を授かった時点で、私のレベルは58。君も知っているとおり、この世界でのレベル上限は99。…しかし、今この世界を脅かす、あの凶悪な魔王のレベルは、この世界の理を逸脱した、レベル282…」
ああ、そういえばそんな情報ありましたね。
「ここにいる大魔道士ライラ…、レベル72であり、『巨大隕石魔法』の使い手でもある彼女の協力を得ても、あの魔王に敵うかどうか…」
「だ、だいじょーぶよ! 勇者の技・『偉大なる聖光』さえ覚えれば! あと何レベだっけ? 覚えるの…。とにかく、一緒に魔物の森でレベル上げよ!」
うるさいです。このハレンチ大魔道士。
レオノール様の腕にぷにぷにと、自分のお胸を押し付けないで下さい。
「と、とにかく! …そういう訳だ。だから…」
だから? もしや、そのハレンチ大魔道士とイチャコラすれば、魔王を倒せる、とでも?
しかも、ハレンチ…、じゃない、ライラでしたか。そのたわわなお胸を張り出しながら、得意満面のドヤ顔。
私のお胸は…。むう。コメントは差し控えます。
「…だから、もし、私が魔王に倒されてしまったら、この国…、この世界の護りの要である君の伴侶になるなど、とても無理だ! だから、私は身を引こうと思う。………本当にすまない、フェリシア」
意外とまともな理由でした。
ですが、やはり納得は出来ません。
「レオノール様」
「?」
ここは、私が申し上げなければ。
「でしたらその魔王討伐の旅、私も同行させて頂きます」
ざわっ、と周りの方々がざわつきました。何故でしょう。
「な! 何を言う! 先程も言ったとおり、君はこの世界の護りの要! 君を失うことは、世界の損失だ!」
むう…。
私は懐から、一つのクリスタルを取り出しました。
「…では国の護りは、このクリスタルに私の現身を宿らせましょう」
「? それは?」
「これは先日、私が北の山でドラゴンから略奪した、本人の分身を作るクリスタルです」
「「………は?」」
? 何ですか、レオノール様だけでなく、王様も王妃様まで、そんなに驚いて…。
「ちょ、ちょっと待て!」
? 何でしょうか、レオノール様。
「き、北の山の、ドラゴン?」
ええ…、? 重鎮のお一人が青ざめた顔で、
「あ、あれは、言うなれば自然の厄災! 北の山に籠もってはいるが、その逆鱗に触れれば魔王をも凌駕する、一説にはレベル400をも超えるという、触れてはならぬ存在だろう!」
皆様どよめいていますね。そういえばそうでしたか。ですが…。
「私、先日そのドラゴンを倒しましたので」
「「………は?」」
? 何ですかその先程と同じリアクション。タイムリープですか?
「た、倒した、だと!?」
ええ。それが何か?
「で、デタラメだ! それが事実だとすれば、フェリシア様が勇者を超えている、ということになるではないか! いくら何でも…」
「…ありえん! そのようなこと…」
王や王妃、重鎮の皆様も、一層青い顔をされていますが。これは事実を述べるしかありませんね。
………ダダダダダ。
…? どなたか走ってらっしゃいます…。
あ、グレゴリー司教様。私の親代わりともいうべき方です。
「………はあ、はあ、レ、レオノール様! 皆様も!」
どうされましたか、司教様。
キッ!
? 私、今、司教様に睨まれたような。何故。
「その…、レオノール様に『勇者』の神託が降りたのですよね?」
「あ、ああ、そうだ、グレゴリーよ。それで…」
―――かくかくしかじか。
ひとまず、私のドラゴン討伐を疑問視されたところまで説明されました。
「くっ…」
? 司教様、何故憤っているのでしょう。
「………実は、ここにいる聖女・フェリシアなのですが…」
やはり睨まれています。むう。
「数百年に一度現れる稀代の聖女…、その言葉通り、彼女はとても優秀です。…ですので、この王宮に眠る『禁断の書庫』…、そこへの入出許可を与えられました。………が!」
司教様が再び憤ってらっしゃいます。何故。
「それが、間違いの元でした! 申し訳ない! このグレゴリー、一生の不覚!」
くっ、じゃありません。失敬な。
「い、一体、それのどこが間違いなのだ?」
王様が尋ねると、司教様は、
「…フェリシアが書庫に入ると、手に取った一冊の本から、守護獣が現れたそうなのです」
―――そう、その守護獣こそ、不死鳥。
私はまず、不死鳥を捕獲し、『再生』、『瀕死自動回復』、『再生時経験値獲得大幅上昇』のスキルを得たのです。
「「………は?」」
だからタイムリ(以下略)。
「…次にフェリシアが手に取った禁書は、過去誰にも読めなかった一冊…。それを彼女は解読し―――」
ええ。あの禁書を解読した私は、『基準限界突破』のスキルを得たのです。恐らく現在の魔王も、このスキルを会得しているのでしょう。
「なんと…」
皆様、またざわつかれてますね。何故。
「…その後彼女は、順当に禁書を解読していき、現在のスキルは―――」
えーと、
『再生』
『瀕死自動回復』
『再生時経験値獲得大幅上昇』
『基準限界突破』
『完全体力回復』
『完全魔力自動回復』
『常時全状態回復』
それから…
『聖光砲』
ですね。
「ですね、じゃないですよ!」
くっ、と再び司教様が憤ってらっしゃいます。何故。
「す、すごいではないか! 確かにそこまでの回復師が一緒であれば、魔王討伐の旅は安泰…」
「ち、違うのです! 問題はそこではなく…、スキルを揃えたフェリシアが取った行動は…!」
「アレの何が問題なのです」
私が尋ねると、司教様は慌てふためきながら、
「問題でしょう! お陰で私が、先程まで大司教様に捕まって、散々お小言を頂いていたのですよ!」
ああ、それは申し訳ありませんでした。でも何故。
「何故、じゃありませんよ! あなたがその後、誰も立ち入らない葬られた地下ダンジョンで何をしたのか、ご自分の胸に問うて下さいませ!」
えええ…。
「い、一体、何をしていたのだ?」
王様に尋ねられ、司教様は半泣きしながら、
「くっ…、彼女はダンジョンで何を血迷ったのか、自分で自分に『聖光砲』を撃っては再生を繰り返す、という狂気の沙汰を日々行いまして、…現在、フェリシアのレベルは…」
ゴクリ、と皆様の息を呑む様子が伝わってきました。
え、そんなに驚きますか?
「9999、なのです」
「「………は?」」
…もうツッコむのも疲れました。
「ですからこのフェリシア、現在のレベルは、9999! 本来あり得ない数値なのですが、現実なのです! ああもう…、こんな、とんでもないバケモノになってしまって…」
失敬な!
…まぁいいでしょう。
「…という訳で、レオノール様。先程も申しましたが、魔王討伐の旅、私も同行させて頂きます。よろしいですね?」
「あ、ああ」
何となく皆様、納得されていないご様子ですが、とりあえず現身のクリスタルで分身を作り、早速魔王討伐の旅へと繰り出しました。
◇ ◇ ◇
「『聖光砲』!」
ラストステージまで辿り着き、魔王の間で放った私の『聖光砲』は、周辺の魔物という魔物全てを巻き込み、今世紀最強の『魔王』を消し炭へと変えました。
ですが…。
「レオノール様。せっかくですから、覚えたての『偉大なる聖光』も発動しておいて下さい」
「え!? い、いや…、もう魔王は…」
「いいから、どうぞ」
とりあえず技を繰り出した、という既成事実は必要でしょう。本来魔王討伐は『勇者』の仕事です。
「くっ…、『偉大なる聖光』!」
………これでよし。では帰りましょう。
◇ ◇ ◇
「もおぉ、フェリシアお姉様の『聖光砲』、サイッコーでしたよぉ!」
だからライラ、私の腕にぷにぷにと………、気持ちいいですね。むう。
ライラは私より二つ年下の16才。何を食せばそのようなたわわなお胸になるのでしょう。うらやましい。
「とにかくこれで、婚約破棄は無かったことになりますね、レオノール様」
私がそう言うと、レオノール様は思い詰めた表情で、
「………いや、今回のことで思い知らされた。私は君に、相応しくない」
! な、何故ですか!?
「私は君よりも、弱い。だから、もっと精進しようと思う。…私のレベルが上がるまで、待っていてくれるか?」
………そうですか。では、
「お手伝いしましょうか」
「?」
「せっかくですからレオノール様にも『禁書』を読み解いて頂き、『再生』と『瀕死自動回復』、『再生時経験値獲得大幅上昇』と『基準限界突破』を覚えて頂ければ、私と同じやり方で…」
ダッ!
あ! レオノール様! 何故お逃げになるのですか!?
「す、すまん! それはムリだ! あのような仕打ちに耐えるなど…!」
一度お試しで、私のレベル上げ方法を疑似体験して頂きましたが、
「そんなに嫌がらなくても…。慣れてしまえば、クセになりますよ? ねぇ、ライラ…」
? ライラ? 一体どこに…。
あ! レオノール様と一緒に泣きながら走って逃げるとは…。
「ごめん! お姉様! アタシも、アレはムリー!」
………まったく。そのような態度では、私のレベルになどとても追いつきませんよ。
だって、私の本来のレベルは、
『13529』
大司教様がお持ちのレベル計測器でも、9999までしか表記されませんからね。自分にだけ見えるステータス表示…、これも禁書を読み解いた影響でしょうか。
とにかくお城に戻ったら、レオノール様にも精進して頂かねば…。微力ながら協力致しますよ。
フフ、楽しみです♪
トンデモ聖女でしたね。
ちなみにタイトルの『????』には『レベル9999』とでも入れとくのが妥当かな。入れたらネタバレだけど(笑)