第5話
焚火を囲み、すっかり冷えた体を温める。
ぱちぱちと心地いい音が鳴る。
辺りはすっかり暗くなっている。
火にかけた魚は、いい感じに焼けてきている。
「これ!そろそろ焼けたんじゃない?」
リエルはそういうと魚に手を伸ばした。
「あっつ!!!」
魚にかぶりついたリエルがそう叫ぶ。
「当たり前だろ!なんでいけると思ったんだ!あほめ!」
そういうとシファーは別の魚に手を伸ばしかぶりついた。
「あっつ!」
あほ2号が叫んだ。
私も続いて魚に手を伸ばす。
魚はとても熱かったけれども私はこらえることに成功した。
ふん!とどや顔をする。
「やせ我慢してんじゃねえよ!」
「食べたときビクってなってたじゃん!騙されないよ!」
二人から容赦のない突っ込みが入る。
「熱くなかったもん」
私がそういっても二人は信じてくれなかった。
焚火を消し、拠点の中に戻る。
辺りは真っ暗闇で、空には星が輝いている。
そこら辺の植物を集めて作った簡易布団で寝る。
布団に入って早々に二人は眠りにつき、私もすぐ寝てしまった。
「朝だよ!!!起きて!!!」
恒例のリエルのうるさい声で起こされる。
シファーのうるさい!と怒る声ももちろんセットでついてくる。
魚を食べながら今後どうするかを話し合った。
どうやら孤児院の周りはこの世界でもかなり危険度の高い区域らしい。
このまま何日もここで過ごすのはかなり危険だが、この拠点は捨てがたい。
この世界には滅んだ旧文明があり、その残骸である建物は今の技術では再現できないほど耐久性に優れていて、この団地のような建物たちはかなりその中でも状態がいいらしい。
私たちはここを拠点にしつつ徐々に探索範囲を広げていくことに決めた。
私たちは、とりあえずこの団地全体を探索してみることにした。
植物に突き破られている部屋や、本のある部屋など様々な部屋があった。
3人で部屋を引き続き探索していると、日記のようなものを見つけた。
私は興味を惹かれその日記を3人で読むことにした。
「いくよ!」
そういうとリエルがページをめくる。
謎の緊張感がある。
1日目
食料が心もとない。このまま消費し続ければ2週間程度で尽きてしまう。
外ではモンスターどもが暴れている。
1週間後には自衛隊が到着するらしいが、辺りの惨状を見るにあてになるかわからない。
2日目
遂にスマホの電源が切れた。
外の情報を収集できるのは、この防災無線用のラジオだけだ。
この団地にいるほかの人たちで生きている人いるのか。一人も安否確認ができず不安だ。
3日目
モンスター共はどこから出てきたのか。
そんなことばかりを考えている。
カーテンの隙間から時折外を確認するが、食い合う奴らの姿以外は何も変わらない。私にできることは自衛隊が助けに来てくれることを祈るばかりだ。
4日目
ああ、今日は人生で2番目にくそみたいな日だ。
最悪な日はもちろんモンスター共が現れた日。
そして次は、自衛隊の助けが来ないと分かったきょうだ。
5日目
ああ、奴らの鳴き声が耳にこびりついている。
ラジオの放送はもうなくなった。
ああ、神よ。もしいるのなら私を救ってください。
6日目
食料の味はもうわからない。
そもそも私が生き延びることに意味はあるのだろうか。
何の希望もない。
自殺しようかとも思ったが、弱い私には死の恐怖から抗うことはできなかった。
ああ、私は無力だ。
7日目
夢の中で自称神に出会った。
自称神は私に戦う力を授けるといった。馬鹿馬鹿しい。
私のメンタルはそれほど落ち込んでいるということか。
8日目
ああ、神はどうやら実在したらしい。
藁にも縋る思いで神に言われた魔法の言葉、斬!この一言を唱えるだけで、壁とモンスターを切り裂いた。
はは、希望が見えてきた。
11日目
3日間モンスター共と戦って分かったことがある。
この魔法には打ち止めがあるということ。
感情に威力が左右されるということ。
そして私はしょせん人間ということだ。
12日目
ああ、私の命はもう長くないだろう。
切り落とされた腕の出血が止まらないし、食料も底をついた。
願わくば、今戦うすべての人に神のご加護がありますように。
とても体が冷えてきた。
死ぬのは、やはり耐え難く怖いものだ。
グッドラック人類
日記はここで終わっていた。