第一話
どのくらい眠っていたのだろうか。目を覚ましてすぐに、私は強烈な不快感と不安感を覚えた。
私は誰なのか、ここはどこなのか、なにもわからない。いや、思い出せないのだ。
寝る前何をしていたかも、周りの風景も、自分の名前さえも。
唯一わかるのは元居た世界とここの環境は、とても乖離しているということだけだ。
困惑していると、私と同い年くらいの少女が話しかけてきた。
「ねえ、君ここら辺の子じゃないよね?どこから来たの?」
「わからない、何も思い出せない。」
「とりあえずここら辺は危ないから、あたしたちの家においでよ!あたしの名前はリエル!あなたの名前は?」
「ごめん、本当に何も覚えていないんだ。自分の名前ですら。」
「そっか!なら、うーーーーん。髪が白くてきれいだから白って呼ぶね!」
「わかった。」
リエルと名乗る少女に連れられて、木が生い茂り、崩れた建物や、道路の上を通っていくと、柵に囲まれたとても大きな教会があり、中からは子どもの声が聞こえた。
「着いたよ!ここがあたしたちの家!あたしは先生にあなたのことを話してくるね!」
そう言うとリエルは中に入って行って行った。
暫くして、いかつい大男が出てきた。
「話はリエルから聞いているよ。俺はランバート!この孤児院を管理している。行く当てがないならうちに来るといい!歓迎するよ。」
「はい、よろしくお願いします。」
ランバートと名乗る男に連れられ、廊下を歩いていく。
「記憶喪失だと聞いているが、全く何も覚えていないのかい?例えば名前とか、自分の魔法だとか。」
「覚えてないです。ところで魔法って何のことですか?」
「本当に何も覚えていないのか、、、ああ、魔法というのは神様から一人一つだけ与えられる不思議な力のことさ。たとえば私は少し先の未来が見えるし、あのリエルは糸を自由に操れる。」
「、、、それって、どうしたら私も使えますか?」
「神様に祈って神託を受けて導かれれば、思い出すはずさ。さあ着いたよ!ここが今日から君の暮らす場所さ!君の部屋はそうだな、リエル!案内しなさい!礼拝堂もここの廊下を左に曲がって進んだところにあるから行ってみるといい。」
「あ、やっとあたしの出番?ランバートさん話ながいよね!」
「何か言ったか?」
「何でもないでーす!さ!いこ!部屋に案内するね!」
リエルに連れられて部屋に入ると、そこには二段ベッドが二つ置かれていて、横に棚と、真ん中に机の置かれた部屋に案内された。
「白のベッドはあたしと同じ左のあのベッドの上のところね!」
私は軽くうなずいた。
「それじゃああたしはご飯の支度があるから、またね!」
そういうと少女は部屋を後にした。
何が起こっているのか全く理解できない。
とりあえず私は自分の持つ魔法を知るために、ランバートさんが言っていた礼拝堂に行くことにした。
内心少しワクワクしながら、私は神の像に祈った。
暫く祈っていると急に頭の中に声が響いた。
「汝、力を与えよう。汝に与る力は武器を生成する力である」
そう不思議な声が響いた。