1-8 別に正義の味方じゃないので好きにやらせてもらいます!ヒャッハァー!
目的地まで2kmほど離れたところで会場周辺含めて索敵・探知・鑑定スキルをかける。
(ふむふむ…バッカス伯爵は…来場者への挨拶回り中か。性が出るねまったく。
参加者は…護衛と侍女を除いて30名か。多いな。侯爵家のボンクラ、悪名高い子爵当主、帝室重鎮の次男坊、帝国内の弱小国王子、きな臭い噂で満ち満ちた商会会頭…ほかにもゴロゴロと…ここまで重要人物が動いてバレないわけが…あぁ、ザコーレ侯爵が上手くやっているのか。)
人物の把握が済んだら出品物の確認をする。
(…中毒性と副作用が高い違法薬物が150kg、古代アーティファクトが20点…ほぼ壊れてんじゃん。直せるから貰ってくか。宝石類が300点近く。絶対いわくつきのやつも混じってるけど、まぁいいか。
続いて…あー…あかんわこれ。帝室宝物庫からのネコババ品他、各大国からの希少な盗品が沢山。バレたら戦争になるぞ。
最後に奴隷が…6人か…状態が悪いな。四肢欠損者が多い…。よっぽど好き勝手に遊んでから捨てたんだろう。買い手つかないだろ…まぁその状態でも虐めることは可能だからな。)
次にどういう段取りで片付けるか思考する。
(ひとまず奴隷の売買開始までは待機だ。決定的に違法なのはそこだからな。盗品は「知らぬ!存ぜぬ!下が悪い!」で押し通される。
始まりそうになったら、護衛を会場周囲から順に潰していく。開始と同時に、バッカス伯爵ならびに30名の殺害を決行。オークション品と金銭の類を全てスキルで収納する。って感じかな、奴隷達はその時に決めよう。
…ザコーレ侯爵は居ないのか。要人なこって。)
しばらくして時間も近づいてきたので行動を開始する。幸い名のある護衛はいなかった為、一人の漏れもなく昏倒させていく。
(仕事だから仕方ないってのもあるだろうし、今回は見逃してやる。)
鑑定スキル君と索敵スキル君に頼んでマーキングをしておいた。次に敵対した際には問答無用で殺す。
さて、徐々に護衛が減っていることに気付かないまま会場のボルテージは上がっていく。
(あんな大量の薬物何に使うんだよ…考えたくねぇ…
さて、頃合いだろう)
すぐに制圧できるように会場内に潜伏する。
「皆様お待たせしました!本日のメイン!奴隷達のご紹介です!
四肢が欠損しているものや、身体の一部が変異している者もおりますが、まだまだ楽しめる一品になります!顔はどれも一級品ですよ!
また、今回は何と!ハイエルフと魔族が手に入っております!めっったに市場に出回らない超希少な奴隷を買えるのは、もしかしたら今回だけかも知れません!盛り上がってまいりましょう!」
(ん?魔族?鑑定では違うのでてるけど…)
「それではまずはコレ!猫獣人です!状態はB!
四肢欠損がマイナスポイントですが、顔と胸がSランク!百万ゴルドからスタート!」
オークションは加熱していく。
が、傍観者やってるのは飽きてきた。
(もういいだろう。 暗殺スキル発動)
会場中央に向かって一人一人殺していく。
「えっ」「は?」「なっ」
断末魔にもならないような抜けた声が響く。全員殺すまでに0.5秒も掛からなかった。
「さて、バッカス伯爵とお見受けします。ご機嫌麗しゅう。」
数秒のラグを経て、呆けていたバッカス伯爵が現実に戻り慌てふためいた。
「な、な、なんじゃ貴様!なっ、なん!なんじゃこりゃぁ!
き、き、貴様がやったのか許さんぞ!せっかくの金蔓達が!彼の方になんと言ったらいいのか…殺してやる!殺してやるぞ!
護衛!大金くれてやってるんだ!早く出てこい!」
VIP席から立ち上がり唾を吐き散らしながら叫ぶ。
(汚なっ。でもなぁ…攻撃魔術使えないから遠距離からの制圧はできないしなぁ…ア◯ンストラッシュはこの会場ごと切断しちゃうし…)
生理的にきつかったのでウィンドカーテンで空気の仕切りを作っておいた。
「よく喋るハゲブタだ。
護衛はこねぇよ。全員伸びてる。」
「ふ、ふざけるな元ゴールドクラス冒険者もいたんだぞ!それが貴様のようなガキに!」
「あー…一人だけ割と強そうなのいたな。倒したけど。」
「もういい、貴様はここで死ねぇ!」
そうハゲデブが叫ぶと銃のようなものを取り出した。
「コレが何かわからんだろう!冥土の土産に教えてやる。
サラザール王国の最新魔道具だ!魔石に魔力を込める事で超速の魔弾が飛ぶ、殺人に特化した最新兵器!
大枚叩いて買った甲斐があったというものだ!ではさらばだ死「ごちゃごちゃうるせぇテメェが死ね」
一瞬で背後に回り込み首を落とした。
「さて、奴隷の諸君君たちはこれからどうしたい?あぁ、喋る時は名前を言ってくれ。」
死んだ目をした6人にそう問いかけると、
アンドレアと名乗る魔族が喋り始めた。(鑑定スキル君が言うには龍魔族という龍族と魔王族の混血種なのだそう)
「私は帰る場所もなく…もうどうしていいのか…」
「どうしたいのかを聞いているんだよ?
といっても、今の状況で先も見えんだろう。
それは他の子達も同じかな?」
そう問いかけると、一人の子が掠れた声でボソリとつぶやく。
「…もう…殺して…」
「君は…リナと言うんだね?
あぁ鑑定スキルのおかげだよ。
君のそれを私は治せる。まぁ治ってから腹一杯飯食って寝て、それから死ぬかどうかを決めればいい。」
そう言って6人を見渡した。
「ここから逃げ出した2人の奴隷は私が保護している。君たちが力を合わせて彼女達を逃がしたとも聞いている。」
「よかった…逃げられたんだ…」
「君たちは優しいな。
本来私は無償で人を助けることはしない。だが、君たちは自分の身よりも幼い彼女達を優先した。
加えて、その体についた傷の数々が、これまでの人生の過酷さを物語っている。その地獄の底においても、優しき花のような心に私は敬意を払おう。
貴女達のこれからの人生に幸あれ」
言葉を紡ぎながらも、鑑定スキルを発動し体の損傷箇所や病魔を確認していく。
「グランドエリアヒール」
私が使える中で効果が最も高く、範囲的に使える治癒魔術を発動した。
「え…手足が生えた…え?」
「尻尾が!私の尻尾が!」
「か、体が綺麗になってる…魔石が取れてる…」
「目が…見えますわ…」
「私…手足が…耳も生えてる…」
「私はこれから大陸中で活動するつもりだ。君たちにはメイドとしてその手伝いをしてほしい。給料は弾むさ。どうだい?」
「「「「「わかりました。全力でお仕えします。」」」」」
「よろしくね」
「凄いな君は…」
龍魔族のアンドレアが嬉しそうに、そして寂しそうにつぶやく。
「その顔は君の不調の原因が取り払えてないことかな?」
「私のは体の損傷とは違うんだ…魔術が使えないのは生まれつきだから…」
「いや治せる。鑑定したが、君のそれは魔力炉…つまり魔力を生み出す機関の出力と、君の魔力回廊が適してないからだろう。魔力回廊が細すぎるんだ。それと、魔力の圧縮がうまくできていない点、それから君の魔力属性が特殊…まぁ端的に言うと既存の術式と相性がクソ悪いんだ。」
「そ、それでは…無理では…」
「痛みに耐える覚悟はあるか?」
「その痛みに耐えたら…魔術が使えるようになる…?」
「少なくとも魔力を操ることはできる。
いずれにしても、君の途方もない大きさの[魂の器]でなんとか余剰魔力をプール出来てるけど、このままだと君、周囲巻き込んで爆散するよ?」
魔力暴走は全前世でも特に多かった魔術事故だ。
「た、耐えます!だから!お願い…します…」
「私と手を繋いで。次におでこ。目を閉じて。
歯を食いしばりなさい」
「んっ!」
私の圧縮していない魔力から流していく。丁寧に丁寧に。数秒ごとに流量を増やしていく。同時に鑑定スキルをかけながら最適な流量を見極める。
凝り固まった筋肉にいきなり、「180度開脚しろ!」と言っても無理なように、本来は生まれてから徐々に魔力が廻廊に流れていき、訓練でその量を増していくはずだ。つまり自然と調整しながら廻廊の幅を広げていくのが普通である。
しかし、魔力炉を有し且つ魔力廻廊が人並みであったアンドレアではその魔力を上手に流すことはできなかった。
その為、今行なっているのは赤ちゃんから10代後半になるまでゆっくりと拡張を完了させる工程を、数十分で完了させる鬼トレーニングなのである。
「あっ、ズゥ、ガァッ!」
アンドレアが苦悶の表情を浮かべる。
額には大粒の汗が噴き出て次々とこぼれ落ちる。
「もうちょい!踏ん張れ!」
徐々に圧縮した魔力で廻廊をさらに拡張する。
「アァァァァ!」
アンドレアが気絶しかけたところで終了した。
「大丈夫…ではなさそうだが聞きなさい。
これから貴女は毎日魔力操作の訓練を必ずやってもらう。でなければ廻廊が狭まってしまう。
また、魔力の圧縮方法も教える。
術式は今教える。」
「ハァハァ…え、今…ですか…」
「時間がない。頭に術式を叩き込む。気絶する前にくらっときなさい。」
「ちょ、まっ「スペルマニュスリプト」
術式を使って相手に術式写本を渡すという便利な魔術だ。欠点は頭痛で気絶することだが。
おそらくこれで使えるようになったはずだ。混血種であるが故の複数属性の魔力に加えて、本当に既存魔術式と相性が悪いとしか言えない現象が起こっていた。例えるならどっちも同じアプリで使える機能は同じだけど、macOSと Windowsでは相性の違いってどうしてもあるよねって話。
さてそんなこんなで闇オークションの壊滅に成功…そして大量の金銭が手に入り、且つ洗脳状態で申し訳ないが裏切る確率が非常に少ない従者を手に入れた。
一度屋敷に帰り、本日保護したシャルロッテとナタリーに風呂と食事の準備をお願いする。
「お姉様方!そ、その姿…」
「えぇ。我らが主人に治して頂いたのよ。」
「主人…ということはお姉様方もサクラ様の従者に!?」
「よろしくね。二人とも」
(美人が8人揃うと壮観だな…え、エッチなことはいけません!マリア様がみてる!みてるから!
あ、なんかベルに鼻で笑われた気がする。明日ボッコボコにしてやる)
「というわけで私は出かけてくるよ」
「こんな時間にですか?」
「やることがあるんだよ。最後の掃除が残ってる」
「私たちも「足手まといはいらん。今はゆっくり休め。」
そう言い残し、ザコーレ侯爵の屋敷に向かった。
(流石に警備が厳重だな…でも)
スルスルと警備の穴を抜けていき、当主の部屋にたどり着いた。さて、黒幕とご対面といこうか。
執筆楽しぃ…(現実逃避)
周りがどんどん結婚していきます。流石に焦る…いえ、恋愛晒したことないんで結婚のはるか手前で躓いてるわけですが。
うるせぇ!キャンプも山登りも居酒屋もら一人で楽しんでやるウワァアァァン!






