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攻撃魔術が使えないけど人生謳歌目指して頑張ります  作者: 猫屋敷 狐狸
第一章 そして少女は走り出す【幼少期編】
6/21

1-5.やりたい事を見つけます

過去の罪と向き合いつつやりたいことを探します!

ベルの討伐ランク実態をA⇒Cに下方修正

サクラの今世における本名をアリア⇒オーラに変


ベル達を連れて街中を歩くわけには行かないため、引き続き森の中で暮らしてもらうことにした。バーサークウルフといってもまだだ子供らしく、実際の単体能力値はCランク相当なのだそう(鑑定君曰く)…最初に群れてたらAランク言うたの鑑定君やん。


ただ、今回の主従契約で大幅に魔力が増えた(私からパクった)為、数年森の奥地で修行して力の扱いに慣れれば、通常のバーサークウルフよりもはるかに強い個体になるらしい。まぁ頑張ってくれ。


従魔側に一方的な恩恵がある訳ではなく、主人側にも「従魔のスキルを一部使用可能」という特典があった。

その為今回得たスキルは、


・思念伝達[中]Lv.1

・未来予知[小]Lv.1

・分身作成[小]Lv.1

の3つだった。


(…いや強いなオイ。てか君達分身すんのかよ。うわっすげぇ影◯身じゃん火影もびっくり。)  


どうやらこの狼達思念伝達がパッシブスキルになっているらしく、こちらの思考が読まれるみたいだ。

いきなり分身するからビビったよ。


意識的に、アクティブモードにも切り替え可能らしいが、まぁこのままで問題ないだろう。

今のレベルだと30㎞離れると使えないらしいので、とりあえず使い続けて[大]までレベルを上げよう。万が一の際にお互い助け合えるようにな。


3時間ほど新スキルをいじくりまわし、使い方に慣れたところで帰路についた。


行きに送ってくれた馬車は、固定式防御結界の魔道具を発動して待機してくれていた。仮に日没前までに戻らなかった場合は、ギルドに応援要請を出せるようにとのことだった。 

ホワイト職場でめっちゃ助かる。


「さくらさん!ご無事で何よりです。首尾の方はいかほどに?」

「ウォーウルフ40匹の討伐完了済みとなります。数が多いので、載せられるだけ載せましょう。まだ日没まで時間があるので、応援を呼んでもう一往復行きましょうか。」

「承知しました。そのように。」


そこから10匹ほど乗せて首都へ帰還したのちに、追加で2台の馬車を要請し死体回収が完了したのだった。


「さくらくん、初の依頼達成おめでとう。数が想定以上に多かったので、報酬金額は上乗せしてある。小金貨300枚で30万ゴルドだ。」

「ありがとうございます。何故ギルマス自らが一介の冒険者に報酬を手渡しているのか疑問ではありますが置いておきましょう。

想定の20匹から随分と乖離が発生した理由についてお聞きしても?」

「それもそうだな。理由は二つほどある。

まず第一に、斥候クランが十分に情報収集している時間がなかったこと。これは街道の安全を早急に確保したいという要望と、君の実力が噛み合っていると判断した為だ。基礎研修では、的確に逃げる判断を下せるかといった内容も測っていたのでね。死地に突っ込むような真似はしないと確信していた為だ。

次に、おそらく何らかの形で複数グループが合流したと考えられる。本来1グループにボスが1匹いるので混じることはないのだが、何かしら圧倒的なカリスマ性や力のある存在がいた場合、その傘下に降ることが考えられている。あくまで仮説でしかないがな。

以上だか納得してくれたかな?」

「十分です。」


(…ベルのせいかぁ…あれは圧倒的な王子の資質なんだろうなぁ。)


雑談混じりに仕事の話が進んでいく。


「ところで、デカい依頼は君に依頼することも増えると思うが、他の依頼はどうしたい?今はあまり稼げるようなクエストがなくてね。」

「…そうですね、とりあえずは埃をかぶっていそうな案件を片付けてギルドに恩を売りつつ、自分のやりたい事を探そうかなと。」

「はっきり言うね!きみぃ!

まぁ、こちらとしてもありがたいのは本当だ。職員にリストをまとめさせよう。あとで選んでくれたまえ。

やりたい事が見つかることを祈っているよ。君はまだまだ子供なのだから。頑張りたまえ可能性の原石。」

「ありがとうございます」


「さてどうするかなぁ…」


ブラブラと街を歩いていく。

日没が近い為、飲んだくれた冒険者達をちらほら見かける。

「さくらちゃぁぁん!一緒に飲まねぇかぁ!!ワハハ!」

「うるさい酔っ払い!私はまだ二桁にもなってないんだ!」

「それもそうだなウハハ!」

こういう雰囲気は嫌いじゃない。真剣に汗水垂らして働いたもの達が、平凡で幸せな日常を謳歌しているこの空気は。


(前々世では暴虐の兵士だった。前世では研究者兼遊び人だった。結局は全部自分の為にやってた事だ。そしてその自分第一は今世でも変わらない。

でも、今までの人生、誰かを幸せに出来たのだろうか。

誰かの人生にほんの少しでも、プラスの変化を齎せたのだろうか。

ワクワクや煌めき、ロマンを与えられたのだろうか。)


「わからんなぁ…ほんと、何しよう。」

呟きながらまだまだブラりと歩いていく。


「…ここは…そうか。ここか。」


気付いたら実家の周辺に来ていた。

繁華街からそこそこ離れ、閑散として静かな小汚い住宅街。ギリギリスラム街になっていないだけのボロ屋が縦並ぶ、5年間住んでいた場所。

動かし続けていた足が止まる。

…いつかは向き合わなくてはと思っていた。

あの日何も出来ず放置してしまった母様の遺体と。


深呼吸を一つ。


前を向き髪と瞳に色変化の魔術を掛ける。

「ステイン」

念のためフードを深く被り歩き出した。


しばらく歩いていると、見覚えのある顔の衛兵を見つけた。

「すみません、この辺で銀髪の女の子が住んでいる場所を知りませんか?

私その女の子と友達だったんです。久しぶりに街に戻ってきたら、全然会えなくて…」

衛兵が悲しい表情を浮かべた。

「あぁ、あの家の…珍しい銀髪だったからね。よく覚えているよ。3ヶ月前になるかな、女の子の両親が誰かに殺されてね。女の子の遺体はなかったから、誘拐されたのか逃げ出したのか…残念だけどそれは分からないね。」

「あ、ありがとうございます…お母様のお墓はどちらに…?」

「アリシアさんとも仲が良かったのかい?本当に…気の毒に…こっちだよ。ついてきなさい。」

そう言われてついて行くと平民用の共同墓地に案内された。


「平民はみんなここに埋葬される。

ご両親の仲が悪かった…というよりも夫がどうしようもないロクデナシだったことは、あのあたりの人達なら皆んな知っている。

いつも朝方に聞こえてくる怒鳴り声が聞こえなくて、衛兵に連絡が入ったんだ。

オーラちゃんのお母さん、アリシアさんは定食屋の看板娘でね。少し暗いところもあったけど笑うと凄く可愛かったんだ。」


自分以外から見る母様の姿を初めて知る。


「そんなアリシアさんの元にあのクズが住み込んだ時には、それはもう皆んな心配したんだよ。でも手を出す訳にはいかなかった。生活があるからね。下手に手を出して捕まる訳にいかなかったんだよ。

そのうちお店にも来なくなって本当に何も出来なくなった。

だから後悔している。

亡くなるひと月ほど前にスラム街近くの娼館前で見かけたんだよ。

あんなボロボロになる前に、何かできたんじゃないかって。結局、救い出すことなんて出来なかったし、最期に誰が殺したのか分からないんじゃ後悔のしようもないんだけどね。

死に顔はとっても綺麗だったよ。

花が咲いたみたいな表情で…お店の常連だった20人くらいでお金を出し合って教会でお葬式を挙げたんだよ。でも個別のお墓は用意できなかった。


本当に誰かを助けるには力が必要だね…心を救うのも。

…まいったな、少し喋りすぎたかな。」


それはまさに懺悔だった。


それでも

「いえ、きっとアリシアさんは幸せだったと思います。死んでからでは気づけないですけど、それでも。

あの人の人生は苦しい事がほとんどでした。

でも大切に思ってくれる人が、ちゃんと此処にいたんだと知れて、本当に良かった。

母がちゃんと笑える場所があったんだと知れて本当に…良かった。」


私も独りよがりの懺悔を吐き出す。


スキルも使わず何も出来ないと言い訳して、誰かが見つけてなんとかしてくれるだろうと楽観視して、虐待してくるような人なんて母と認めないと決めつけて、人生全部分かったような気で好き勝手に生きて


それが今になって後悔となって押し寄せてくる。


失ったと思っていたオーラの心の残滓が、線香花火のように強く反応して


消えた。



「お嬢ちゃん…もしかして…君は」

「いえ。私はサクラです。オーラはもういません。アリシアさんと共に神の園へと旅立ちました。ご案内ありがとうございました。こちらはお礼です。」

衛兵に小金貨10枚入った小袋を押し付ける。


一筋の涙と共に墓地を後にした。


完全に暗くなった道を、月明かりを頼りに戻りながら今後を考える。

(攻撃魔術を封印されている以上、戦ではあまり役に立たない。神天流では超高火力が出せないので、戦略兵器として動くことは不可能だ。それに、戦で武勇を上げても何も幸せにならない。幸せに出来ない。だから、今世では戦へは不可侵を貫く。それから、前世の知識はあまり通じない。物理法則は魔術によって一部改変がされるためさほど重要視されない。おいおい魔術物理学と魔術工学を切り開いて行くが、今では無い。知識無双で商人をやるのも面白そうだが、メインは違うことをしたい。

今は何か別のことを…誰かの心を揺さぶるようなことを…

そういえば前世では音楽に憧れた事もあったな。

アコースティックギターを買ったり音楽の教本を買ったりしたのに、一通り練習したら他の事を優先して…誰かに聞かせるようなレベルにはならなかったな…)


そんなことを考えているうちに、ふととある看板が目に入った。


(この店…ギルドから結構近いけど入ったこと無いな。昼食べてないからかなり腹も減ったし入ってみるか)


あまり深く考えずに扉を開けた。


「いらっしゃい。ってちっこい嬢ちゃんだな。お子ちゃまは家に帰って寝る時間だぜ。夜は危険がいっぱいなんだ」

「マスターこの子、今噂の最年少ゴールドランク冒険者のさくらちゃんじゃない?」

「フラン、よく知ってるな!ワシは酒と音楽のことしか知らん!ガハハ!」


どうやらこの髭ダルマ…もといドワーフのような見た目のオッサンが、この酒場のマスターらしい。

フランという人は…エルフ族…なのか?抑えてはいるが魔力密度が人族の比じゃない。


「こんばんは。ご心配ありがとうございます。墓参り帰りにお腹空いたので寄りました。」

「そうかい…お嬢ちゃんも色々大変なんだな…いっぱい食ってけ!」

「ここのマスターの料理は絶品なんだよ!まぁあと3時間もすれば酔って味がめちゃくちゃになるけどなガハハ!」

「あなた達ねぇ…よくもまぁ連日酔っ払えるものね!」

「フラン堅苦しい!」

「そうそう!硬いのは胸だけに「アァ?潰すぞ?」」

「「ヒィ!」」


(常連客とマスター仲良いな…結構人も入ってるみたいだし人気なのは間違いないな。…てかマスター既視感あると思ったらハリ◯ッドか。いやそうにしか見えなくなった、やばい。)


「じゃあオススメください。」

「あいよ!ちと待ってな!

そうだフラン一曲弾いてやったらどうだい?新人歓迎だ!」

「分かったわ。ピアノ借りるわね。

あとでチップ弾んでよ〜」

「おうともさ。オメェら聞いてたな、かみさんに叱られない範囲でおひねり投げろよ!」

「「「「オォウ!あとビールお代わり!」」」」


(息ぴったりだな!…てかピアノ?布被ってるアレか!)


フランが布を取り払う。そこには前世の1800年代に作られた型式にそっくりのピアノが鎮座していた。


しばしの静寂の後にゆったりと音が鳴り始めた。聞いたことのない曲だが、どこか懐かしいそんな故郷を唄う旋律が流れ始める。

周囲の常連達は目を瞑り、ビールをゆっくりと飲んでいた。


目を閉じると瞼の裏には、


桜の花吹雪、青の花畑が揺れる姿、夏の裏路地、水面に反射する光の煌めき、入道雲と夏の青空、向日葵畑、金の稲穂が揺れる大地、赤と黄色に囲まれた山道、白銀の世界、吸い込まれるような夜の気配、突き刺すような寒さの中で天文薄明・航海薄明・ブルーアワーと移り行く一瞬のグラデーション


そんな光景が一気に広がった。

一日に2度も泣くとは思わなかった。


気付いたら曲が終わっていた。


周りとほぼ同じタイミングで全力の拍手を送った。

「泣かせやがって!なんで今日はそんなにしんみりなんだよ!」

「故郷思い出しちまったじゃねぇか!」

「かぁちゃん元気かなぁ…」

「帰ってやれって。もう冒険者稼業許してくれてるよ、きっと。知らんけど。」

「酒だ!酒!」

「うるっさいわねぇ!今日はそんな気分だったの!私だって直前までは明るい曲弾こうと思ってたわよ!妖精神のお導きよ!」

一瞬で酒場がうるさくなる。だがこの煩さは心地がいい。ここにいる全員が今の演奏で心動いた証左に他ならないのだから。


「あの…フランさん、凄かったです」

「なぁにさくらちゃん嬉しいこと言ってくれるじゃない!」

頭を凄くわしゃわしゃされた。

「私も音楽したいんです。ギターなら弾き方知ってるんですけど…」

「そうなの!?これも妖精神のお導きかしら。楽器やりたいって人は意外とレアなのよ。

マスター!ギターって作ってる奴いたっけ?」

「あん?ギター?…そうだなぁ大体は王宮に降ろすためのトランペットとかを作ってる工房がほとんどだからなぁ…道楽品を作ってるところは…

あぁ、あそこがあるな。ネルソンが確か年1本くらい作ってた気がするぞ。

嬢ちゃん今手持ちいくらある?」

「小金貨290枚です。」

「「か、稼いでるな…」」

(嘘でしょ私手持ち大銀貨11枚よ…)

(ワシは大銀貨5枚だ…)

「おうそこのヒソヒソしてる奴、今日払えなかったら来月まで出禁な。」

「そんな!酷い!横暴だ!」

「あ、私は演奏したからチャラよ!チャラ!てか忘れるところだった!

チッププリーズ今すぐみんなチップ!!」 

(や、やかましい…)

「やぁかましぃ!話が進まん!

とりあえず嬢ちゃん前金で小金貨10預からせてくれ。支払い能力が無ければ、話もできないんでな。」

「わ、わかりました。どうぞ。」

「おう。明日また来てくれ。ネルソンを呼んでおく。」

「よろしくお願いします!」


ひとまず今世では音楽をやりつつ冒険者をする方向で話がまとまりそうだった。


インフレ率えぐいことになりそうなので、そのうち今まで出てきたモンスターのランクを見直します。サクラの冒険者ランクもゴールドに落とすかも…

最近筋トレとランニング・ツーリングを頑張っていたので、体重ゴリッゴリに落ちたでしょと思って体重計に乗ったら体重と体脂肪率増えてました。腹筋割れてるの確認できるのに、体脂肪率20%ってなに…?ショックすぎて野菜サラダと鶏胸肉しか口に入りません。そんな本日でした。


サクラダ門外ノ裏話

この世界の通貨は

1ゴルド=10円だと思ってください。

肉類は魔物のおかげで低価格(100グラム5ゴルド位)で流通しています。その代わり、野菜や穀物は農園からの輸送にお金と時間が掛かるため高額です。(日本の3〜10倍ほど)

首都近辺でも栽培していますが、首都北西側は魔の森(主人公が暴れまくってるところ)なので栽培地が限られ、加えて魔物の被害も出るため民草全てを賄う事は困難になります。そのため、莫大な畑を所有し守護をする東西の2大辺境伯は2公爵家と同等の存在となります。(南側は港になっているため重要経済圏ではありますが納めているのは、公爵家の一つが担っています。ちなみにもう片方の公爵家は宰相や軍最高司令部などの国家重要役職を担う苦労人家系となります。まぁ重要役職といっても決定権は議会と帝王の承認が必要ですから。中間管理職の凄い番みたいなもんです。さくらの父親は港の方の公爵家出身になります。という設定を後付け。)

(脳内の地図がぐっちゃぐちゃになってきたので、近いうちに大陸図作成します。上の説明間違ってたら訂正します。地理と歴史は壊滅的なほど苦手なんです(`・ω・´))

金銭の話に戻ってゴルド通貨はそれぞれ小銅貨・大銅貨・小銀貨・大銀貨・小金貨・大金貨・白金貨・純白金貨となります。以下のような感じ。

小銅貨=0.1ゴルド(一円)

大銅貨=1ゴルド(十円)=小銅貨10枚

小銀貨=10ゴルド(百円)=大銅貨10枚

大銀貨=100ゴルド(一千円)=小銀貨10枚

小金貨=1,000ゴルド(一万円)=大銀貨10枚

大金貨=10,000ゴルド(十万円)=小金貨10枚

白金貨=100,000ゴルド(百万円)=大金貨10枚

純白金貨=1,000,000ゴルド(一千万)=白金貨10枚

以上サクラダ門外ノ裏話でしたーちゃお❤︎


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