1-4. 冒険者の初仕事です!
ギルド初依頼とペットとの出会い
ナイトメアギガベアの討伐ランクをA⇒Bに下方修正
ウォーウルフの単体討伐ランクをB⇒Cに下方修正,群れのランクをS⇒Bに下方修正
バーサークウルフの単体討伐ランクをA⇒B+に下方修正,群れのランクをSS⇒Aランクに下方修正
バーサークウルフの討伐ランク上昇条件を率いる群れ10匹⇒20匹に修正
あとがきに主従契約のルールに関して記載
ゴールドランク冒険者になってはや2ヶ月経過し、ようやく初仕事の依頼を受けられるようになった。
この2ヶ月間はひたすら冒険者基礎研修と生活基盤の構築をしていた。
ゴールドランクに認定とはいえ基礎知識が何も無いため、本来見習いで2〜3年掛けて学ぶ事を2か月でぎっちりと詰め込まれた。
…ぜったい初級には思えない高難易度のトラップ解除をやらされた時はさすがに殺意が沸いた。二度と受けたくない…勉強にはなったが。
生活面に関して、ギルドからは身の上話を真っ先に聞かれたが
「田舎から首都ガーベラに家族連れで移ってくる道のりで、盗賊に馬車ごと襲われましたが両親が盾となり私を守ってくれました。そこから必死に逃げ続けたら、色々なスキルに目覚めていたので森で1週間ほど一人で暮らしていました。」
的な話で納得してもらった。ちょうど盗賊関連がホットな話題だったので、その話を絡めればさほど変でもないかなって。
まぁアリもしない罪がほんの一つ増えたところで変わらんだろ。
ギルドからは
「本来身寄りの無い子供は孤児院に預ける事が通例なんだが…まぁ君は一人でも普通に暮らせるだろう。ギルド所有の住居に空きがあったはずだからそこに住むといい。問題があれば言ってくれ。」
とのことだった。格安で住居が借りれたのは大変ありがたい。
そのため、仮住まいにしていた森の洞窟も片づけて撤去した。
大量の加工済み熊もどき肉をギルドに卸す事にしたら、大変ありがたがられた。鑑定スキルで把握はしていたが、熊もどきは「ナイトメアギガベア」というBランククラスの魔物で、凶暴性・希少性がどちらも高く討伐が難しい事に加え、調理方法によって絶品になるとのことで高級料理店にて大変人気らしい。
さて、話は逸れたが初依頼は「首都近郊に現れ街道で人族を襲ったウォーウルフの群れを討伐」とのことだった。
この世には人族とは全く異なる見た目でありながらも、知性が高く意思疎通が可能な魔族が存在する。彼らは魔力適性が総じて高い代わりに、酸素と同じく大気中の魔素を血中に取り込み生命を維持している為、魔素濃度の高い大陸の北側に位置する「魔王国」近辺で生活圏を構築している。
しかし、単身や少数集団でなら人族の生活圏でも活動が可能であるため、ごく稀にその姿を確認することができる。
ただ、見た目や頻度の問題から魔族と魔物の違いに関して認知されずらく、非戦闘の一般市民から「魔物が出た!」との誤情報が入ることも少なくない。その為、市民もしくは街からの緊急依頼に対して通常はギルドお抱えの斥候クランが即時確認しにいくか、人的被害が出てからでなければ討伐出来ないのが実態である。
今回は明らかな後者であるため、制圧若しくは殲滅の判断になったというわけだ。
(基礎研修で嫌というほど魔物の特徴を覚えさせられたのはそういう訳か…万一に魔族を討伐すると魔王国との戦争に発展するわけね。なんともまぁ厄介なこって…。)
討伐対象のウォーウルフは、非常に好戦的かつ狡猾であり、他のウルフ系に比べて群れの統率力が段違いだそうだ。単体ではCランク、群れが10匹を超えるとBランクに匹敵する為、ゴールドランク以上の冒険者が適任とのことだった。
「サクラさん、初の討伐依頼頑張ってくださいね。無理だけはしないように。危なくなったらすぐに離脱・撤退を判断してくださいね。」
「ランさんありがとうございます。頑張ります。」
ギルド所有の馬車に揺られながら移動する。およそ1時間で襲撃のあった現場に到着するとのことだった。
(その間スキルの確認をしますか…スキルオープン)
脳内に持っているスキルがズラッと並ぶ。
【スキル】
・鑑定[大]Lv.8
・物理防御 [中]Lv.4
・魔術耐性[中]Lv.2
・隠密[大]Lv.8
・潜伏[大]Lv.8
・魔力圧縮[大]Lv.10→進化可能[魔力次元圧縮]
・魔力増大[大]Lv.10→進化可能[魔力炉]
・術式理解[大]Lv.10→進化可能[多重詠唱]
・術式圧縮[中]Lv.10→ランクアップ術式圧縮[高]Lv.1
・詠唱短縮[大]Lv.10→進化可能[詠唱破棄]
・超加速[大]Lv.9
・思考加速[大]Lv.3
・情報処理[大]Lv.10→進化可能[並列思考]
・自動回復[大]Lv.10→進化可能[超回復]
・体術[大]Lv.10→進化可能[肉体言語]
・空中動作[大]Lv.10→進化可能[立体機動]
・闘気圧縮[大]Lv.10→進化可能[闘気次元圧縮]
・暗殺[大]Lv.8
・剛力[小]Lv.4
・精神防御[大]Lv.10→進化可能[不撓不屈]
・探知[大]Lv.7
・索敵[大]Lv.9
・スキルメーカー
【ギフテッドスキル】
・天鈿女命
・戦破迦哩
・龍神からの祝福
【称号】
・巨大殺し
・世界を跨ぐもの
・英雄の卵
・鬼の子
・スキルコレクター
・神天流 免許皆伝【武人の山峰】
…ちょいちょい気になるスキルがあるが、ひとまず進化可能なスキルは進化させる。
この世界では基礎スキルは[ランクアップ]という形態を取るが、基礎スキルが上限に達した後に技量やセンス・熟練度を始めとしたいくつかの条件を満たす事で、進化スキルへとその姿を変貌させる。進化スキルは多種多様であり、皆が同じような進化先となるわけでもなくその者の戦闘スタイルや生活スタイルに適した内容に変化していく。…と、基礎講習で習った。
新しいギアを購入してすぐさま「my new gear」と呟きながら、梱包を剥がしてガチャガチャいじくる様に新しいスキルとご対面していたら、いつの間にか目的地付近に着いていた。
「サクラさん、着きました。ここが襲撃を受けた現場となります」
「ありがとうございます。それでは現時刻より索敵及び制圧を開始します。」
「ご武運を」
(索敵及び探知スキル発動…)
索敵は本来敵対生物のみを捉えるスキルだが、【大】になると脳内に敵味方・それ以外を分別して把握することが可能となる。また、探知に関しては無機物や植生物などの情報を把握することができる為、隠密スキルなどと組み合わせると高レベルなスネー◯ごっこが出来るわけだ。待たせたなぁ…
(やっぱり万物想像とはいかなくても、ある程度物質の創造もしくは変換ができるスキルが欲しいな。物質変換ができれば、複数の魔術を組み合わせることで加工することが可能になる。そうすれば鍛治・工作・製造をはじめとした、工業系のスキルを手に入れられるはずだ。魔術と工学を組み合わせることで、新しい魔術の作成ができる筈だ。
あとは、次元魔術だな。高次元への魔術的理解が行えれば亜空間収納や転移、絶対的防御などが可能になる。まだまだ学習しなければならないことが多いな。
あぁ、見つけた。距離は北東15㎞先か。ウォーウルフの通常個体40匹、変異種12匹…変なのが1匹いるな。こいつは上位種か?索敵スキルでは危険度までは分かるが詳細はまだ分からんからな。距離的にも鑑定は届かない…近づくしかないか。)
ひとまず、鑑定スキルの有効距離である半径4㎞まで隠密スキルを全開にして近づくことにする。
(潜伏及び鑑定スキル発動…お目当てのあいつはぁ?バーサークウルフ…単体でB+ ランクの奴じゃねぇか!バーサークの名を冠しているものの、非常に狡猾で知性が高く尚且つ、群全体の戦闘力・統率力を上げ自ら命を捧げるレベルで陶酔させるというまさしく狼の覇王。率いる群れが20匹超えた時点でAランク確定だ…一番厄介なのは、群全体がバーサークウルフの未来予知スキルを共有されることだ。生半可な動きじゃ勝てない。だが…)
「倒すさ。今回はこいつを借りてきてるんだ。」
ギルドからはショートソード2本に加え、短めのロングソードを借りてきた。刀じゃないので実力100%は発揮できないが、まぁいいだろう。
「さぁいくぞいぬっころ。
未来予知なぞ間に合わない超高速の戦闘を魅せてやる」
超高速スキルもレベルアップを果たしマッハ2までは出るようになったが、あまり早いと空気音が非常にうるさいので今回は音速を超えないように注意する。
(330m/sなら12秒で到達するな。超加速・隠密・防御・並列思考・超回復・立体機動・思考加速スキルを発動。レディ…ゴー!)
爆速で森を駆け抜けていく。
森中のドライブも悪いもんじゃないな。
(…あと500m…嘘だろ!?バーサークウルフもう気づきやがった!あと2秒間に合うか!?
いや、周りのウォーウルフの動きが緩い!取った!)
バーサークウルフと変異種は瞬時に戦闘耐性に移ったものの、通常種は反応が遅れたため剣の餌食となる。
移動時と異なり、今は超加速と立体機動を全力で展開する。空中で回転しウォーウルフ2体の首を落とした直後に、別のウォーウルフの懐に潜り込み心臓を貫く。1秒経たずに通常個体の制圧に成功する。
「…さて、人を襲いし狼諸君。覚悟は出来たかな?」
そこから何故かとんでも無いものを見た。
変異種12匹とバーサークウルフ1匹がお腹を見せて降伏してきた。流石にそのワンコ感溢れる姿を見て殺せるほど鬼にはなれませんでした。えぇ。
私が戸惑っていると、バーサークウルフが匍匐前進しながら頭を向けてきた。
「犬って匍匐前進するんだ…違うそうじゃなくて、え、何?もしかして従魔契約結んで欲しいの?」
(めっちゃ尻尾と首振るやん。赤べこかよ)
ひとまず戦闘の意思は無さそうだが、これだけは聞いておきたい。
「契約の前に一つ聞きたい。人を襲ったのは何故だ。飯ならそこら辺にいくらでもあるだろう。」
そういうと、変異種達も困ったような顔をした。
ジェスチャーで何とか意思を読み取った結果
「ふぅむ…なるほど、元々は別のグループだったけど、バーサークウルフ率いる群のテリトリーに通常個体チームが無断で入ってしまい、決闘でボッコボコにしたら傘下に入られたと…まぁそれなら…」
とりあえず納得はしたので契約に移った。
契約は通常双方の合意と魔力の交換で完了するのだが…
「ごめん、私の魔力量多すぎて、パワーバランスざっくり8:2だけどそれでも契約する?」
「キャン!(イエ!!問題ございません!主様!)」
「そ、そう…鳴き声で何言ってるのか分かるな…名前つけよっか。呼びづらいし。…名前はベルセルクで。相性はベルな。」
双方の魔力交換によるパワーバランスの明確化と名付けにより契約が行使される。
【主従契約完了】
「よろしくね」
「キャン!」
こうしてわたしとベルは契約が完了したのだった。もちろん変異種達にも名付けを行った。
流石に魔力残量がきつい…
最近ストレスで2.3時間で目が覚めます。辛い…
サクラダ門外ノ裏話
スキル確認時の「称号」とは取得することで、一定の能力・才能を底上げする効果があります。たとえばスキルコレクターだったら、スキル獲得に空ける条件の緩和や、英雄の卵であればギフテッドスキル「英雄種」の何かしらをいつか得ることが可能となります。
[主従契約]は双方の魂魄にパスを通す、高等契約魔法[魂の血盟]のパワーバランスが一方に偏った場合に発生します。一般的な魔術式と異なり、条件がそろえば誰であれ可能な「世界の理」の一つになります。いうなれば、この世に存在する生物すべてが扱える「生きる」という第一の魔法に加えた、第二の魔法になります。あまりにも自然すぎるため魔法と認識されていません。
さて、話を戻すと双方の力量に圧倒的な差がある場合、もしくは圧倒的でないにしろ力量に差があり双方どちらも未熟である場合パワーバランスが偏ります。今回のサクラとベルは後者だったというわけです。ちなみに、魔力×闘気×スキル×身体技術×他たくさんが力量の評価対象となります。誰がその計算をしているのか?それは超高次元に存在する創造神をトップとする「神の行政」になります。
またまた、話がそれたので戻します。この契約における圧倒的なメリットは何か?それは種族固有なスキルやユニークスキル(世界が認めた唯一絶対のスキル)以外は、双方のスキルを使用可能な点となります。
加えて、PCのLAN接続のように魂魄次元で情報交換及び魔力交換が可能になります。デメリットとしては、片方が消滅・死亡した場合、激しい痛みと魂の片割れが消えたことによる喪失感が生まれることです。また、契約時には双方が「心の奥底から契約したい」と思わなければ成り立ちません。それは主従契約についても同じです。魂の血盟と異なるのは、主人側から従者側に一定レベルまでの命令を下せる点に加え、双方のバランスを調整する形で従者側に魔力・闘気の受け渡し、魂の器の拡張を施す点になります。命令可能な内容はパワーバランスによって異なりますが、9:1でようやく「命を投げ捨てろ」という命令が可能になるレベルとなります。
下位互換の契約として奴隷契約がありますが、身体表層及び意識表層に縛りを課すのが奴隷契約になるため、そのさらに奥深くであり高次元である魂には影響できません。