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攻撃魔術が使えないけど人生謳歌目指して頑張ります  作者: 猫屋敷 狐狸
第一章 そして少女は走り出す【幼少期編】
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一章外伝【サクラの刀語り-⑤】

はぁっはぁ…終わった。終わったぞ。


宴会開始から数日経ち、どんちゃん騒ぎにも慣れてきた。もちろんサクラ達は、ただ宴会に参加していたわけではない。観光…もとい文明・文化レベルの調査と、輸入可能な商品の選定をはじめとした仕事3割・趣味7割で積極的に動いていた。

ここには「着物」「袴」といった独特な和装や、「食」への驚異的な貪欲さといった他国にはない風習が多く存在した。…まんま日本である。


異なる点といえば、「魔術」とは違うアプローチで魔素に作用する「呪術」を扱うという点に加えて、あらかじめ定められた条件を満たす事で「無詠唱による上級魔術相当までの術式」が発動可能となる「呪具」といった武具が存在していることだ。


「呪術」とは本来人がコントロール出来ない「呪いの力」つまり、魔素の持つ性質を虚数方向へと捻じ曲げたエネルギー物質を、人が扱えるように「言霊」「儀礼」「血陣」を用いて呪いの力を集め和らげた上で様々な媒体へと染み込ませ扱う術である。


最も多い媒体は「入墨」もしくは「魂魄そのもの」であり、それらを身につけている場合は、空気中もしくは自身が生み出す呪いを媒体に注ぎ込み、強力かつラグのないスムーズな呪術が発動可能となる「呪刻」である。

制限としては、あらかじめ刻んだ術を変えるのは多大なる痛みを伴う点だ。本人の適性を占術で調べ、元服の儀にてその身に刻むのが風習なのだ。


一方で、呪具として用いられるのは「札」「扇」「武器」だという。発動条件は様々であり、「拳以外の武器を持たぬこと」であったり「速度が一定以上の時のみ発動可能」だ。それらは、術者本人の魂魄の形に左右されるため、元服を迎えるまでにぼんやりと「解る」のだそうだ。(3人に1人は解らない者も出るらしいが、内面と向き合う厳しい修行を行う事で判明するらしい。)

(まぁ簡単にいえば、一種類しか使えないけど強力なのが「入墨or魂魄にインストール」する呪刻で、複数種類を取っ替え引っ替え出来るけど「発動条件が意味不明&消耗品」なのが呪具ってことね。

呪術は既存の防御魔術だと完全に防げないし、性質をもっと知らないと……いや、癖強いなこの国。)

という真面目な情報も入手しながら、サクラは着物・アカネは袴を身につけて、神東亜文化を堪能し続けていた。

その姿を見ていたタマモノマエが

「わっちの國をそんなに気にいるなんて…面白いわぁ。気に入ったさかい、今度わっちから遊びに行くわ。あのタッパのでかくてタフな兄弟にも会いたいしなぁ。

この國から拐われた子達にもその時に逢おうと思うわ。」

と言い出したため周囲が騒然とする。

國の長であり、亜神である者が自ら動くというのはそれだけ一大事ということである。

サクラ達は食べかけていた甘餅を地に落とし数秒唖然とした後に、タマモノマエからの言葉を理解して胃を抱えた。

「お待ちください天子様!

危険です!誘拐を実行した人族の国ですよ!?信用できません!」

「そうです!お考え直しください!」

タマモノマエは家臣達の忠言を受けてなお平然と茶を啜る。

「誘拐したのはサラザールの奴らなんよ。

それに獣王国はんにだけ国交を開いておくのも、よろしくはないやろ?事実文明が停滞気味やしねぇ…

心配せんでもわっち能力は知ってるやろ?

いざとなれば本気を解放するわぁ…」

サラザール王国の名を出した際、神東亜皇國のモノたちから殺気があふれる。

彼らも拉致事件が発生した時にただ手をこまねいていたのではない。

亜神であり魔術・呪術に関しては大陸随一の、タマモノマエが本気で作った警戒網もやすやすと突破され、誰も犯行現場を捉えられず気づいたら拉致されていたのである。

そんなことが出来るのは誰か?皆が予想…いや確信をもっていた。


サラザール王国の第3王子にして稀代の暴君。加虐的で京楽主義。

人族の身で在りながら、【へプタリオス第六席】を冠する大陸最強の一角【暴虐の徒 アルマ・サラザール】。

ギフテッドスキル【危機察知】の他に身につけられたのはなんてことは無い【隠密】である。だからこそ当初は「無能王子」と言われていたらしい。

それが何処かで覚醒した。

その能力の解釈を広げ、進化・変態させ、隠密スキルをプリモーディアルスキル【無音の道化師】まで昇華させたのだという。

ギフテッドスキルと掛け合わせて王国内で無双した後、王国はもうつまらないと外国に密入しては何かしら問題を起こすのだと。

そんな人物が拉致の主犯であることは明白だった。


(そんな奴相手ならいくら亜神といっても手を出しづらいな…現場を抑えられない以上、王国に乗り込んでぶったたくわけには行かない。外交問題に発展するからな。)

「最近は拉致に関して聞きませんが解決したんですか?

それにそんな能力どう防げば…」

戦闘民族になりつつあるアカネが立ち上がり興味津々に質問していた。

拉致された事実は変わらないから、この国がそれによって何を為したのか知りたいのだという。

「アカネはん含めた10名が拉致されてから、半年で奴の能力の全容を解明したわぁ。そして穴もなぁ。実現するのに2年掛かったのは悔やまれるけどね。

詳しくは秘密やけど、元来の防御術と発動条件・検知条件をガラッと変えておるし、皆と協力して今まで10層だった結界を多種多様の200層に変更し単発的から相互的に作用する仕組みに変更したんよ。

やからあいつは絶対にこの国には入ってこれない。サクラはんの隠密スキルが全く効果ないのはそういうことや。

もう二度とわっちの民を好きにされてたまるかいな。」

というタマモノマエの言葉を聞いて満足したのかアカネは再び席に付いた。


真面目な話し合いが進み、近いうちに帝国と皇國の国交が開かれる運びとなった。

輸出入におけるお抱え商人はもちろんヨザクラ商会となったのである。

(どうして…どうしてこうなった!)

サクラ達の胃痛は止まらない。


天穹零式に内蔵した超長距離通信用移動式基地局(通称アンテナくん。占い用水晶サイズ。)を稼働させて帝国の屋敷と連絡を取る。

サクラだけでは到底判断が出来ないためだ。

「アンドレアお疲れ。皇后さまとコンタクトとれるかな?そこから陛下に連絡をつないで欲しいんだ。」

【承知しました主様。ただ、ちょうどギルドに来ておりまして…目の前に飲んだくれた皇帝陛下がいらっしゃいます。】

(なにやってんのあの人?)

【うむ。お主はあのお嬢ちゃんの部下か。…なるほど良い人材を手に入れたな。

ん?あ奴が我と話したいと?そのイヤリングに話しかければつながるのか?

…ほぉう。こいつは報告になかったな。後で詳しくな?

さて、我に話したいこととはなんだ?】

「お久しゅうございます。皇帝陛下におかれましては「長い!要件を言え要件を!今はプライベートじゃ。」

帝国が誇る稀代の天才皇帝陛下は本日もフリーダムである。


「随分喋り方に貫禄ついたなぁ。バルバト坊?タマモやよ、お久しゅう。」

【…は?タマモ殿?…はぁぁ!?お、お久しぶりでございます!】

「戴冠式以来やねぇ。弟はんも元気かえ?」

こうしてヨザクラ紹介の開発品によってスムーズな国交樹立がなされたのだった。

もちろん通信魔道具は、新たに作成し皇室に卸すとのお達しが出た。当たり前である。


ある日、タマモとサクラが取るに足らぬ雑談を行っていた際、神話の一つを知ることとなった。

「タマモ殿は神となった先代の娘ということですが…」

「せやねぇ。建国者であり5000年生きた我が母、霊獣神[麒麟]その方の娘に当たるわ。」

「タマモ殿と同じように、長身・金髪・美人だったのでしょうか?」

「それがなぁ、違うんよ。お母様は見た目幼子のようでなぁ…尻尾も小さかったんよ。それは可愛らしい見た目と声だったわぁ…。

まぁ年に一度の祭り【神祝祭(かむほくさい)】にいつかおいで。そこでお母様と話す事が出来るからなぁ。」

「神と会話!!?」

サクラにとって神は超常現象の化身であり、会話など想像も出来ないことだった。

黎明神という神の一種として亜神が神の座へと至るこの国では、巫女や聖人が儀式を行う事で会話が可能なのだという。

(降霊術みたいなもんじゃねぇか!それはそうと)

「是非とも。祭りや神楽舞は大変好ましいですから。」

「…ほんまおもろい子やねぇ。」


そして帰国前日、ムラクモが弟子とともに9つの木箱を天守閣に持ち込んだ。

「おう!待たせたな。出来上がったぜ。あの銃?なる武器は骨を折ったが問題なしだ。

上のベールだけ取ってくれ。それぞれの握る部分についた赤い布は取るなよ。そいつは所有者を判断する部分だ。」

そういって三節混・鉄扇・二丁拳銃二丁短刀・ガントレット・双剣・ハルバード・鎌・槍がそこにあった。

…そう、ロングソードというありふれた武器を誰もチョイスしなかったのである。


「で、お前さんはこいつだ。受け取ってくれや」

注文と寸分たがわない、しかし刀身の圧倒的な美しさに圧倒される程の、芸術品とも言うべき打刀と脇差の二振りを渡された。

「試しても?」

「もちろんだ。…訓練場の藁束を使うか。おい!訓練場を準備してくれや!」

「おう!!」

そういって数人が準備に走った。

サクラはお構いなしに集中を高めていく。正座の状態で打刀のみを持ち、神天流の記憶を細胞の一つ一つに思い出させる。

「準備出来まし…た…」

「おう。…嬢ちゃん行くぞ。」

8歳がだす空気に皆が圧倒されていた。

そして、皆が一様に幻覚を見た。

それは圧倒的な戦場を駆け抜けた武人の姿だった。

「はい。」

一切の無駄なく立ち上がり移動する。


訓練場に到着し藁束まで数mというところで正座する。

「お嬢ちゃん遠すぎるって!」

「緊張してんだろ」

「なんか空気重くない?」

集まっていたギャラリーが好き勝手に言い出した。

しかしサクラには届かない。

もう意識は目の前にある3体の敵兵に。

そうして鞘に入ったまま刀を腰まで持ち上げつつ膝立ちになる。

「ふしゅぅぅぅ…」


「神天流 抜刀 紫電伊吹」


タマモノマエを除いてその姿を誰もとらえられなかった。

気づいたら藁束のはるか後方に抜刀した状態のサクラがいたのだ。

数瞬おいて全ての藁束が3枚卸しになって崩れ落ちた。

誰も声を発せない中、サクラが歓喜の雄たけびを上げる。


「うぉぉおぉ!これすっごい!!すっごいですよ!超切れ味よくて軽い!

気に入ったお前の名前は、白夜・極夜だ!」

「ふふっいずれあんたもヘプタリオスに入るのかもなぁ…楽しみにしてるわぁ。」

全てを見ていたタマモノマエが嬉しそうにつぶやいたことで、やっと周囲がざわつき始めた。


だがサクラの剣術はまだまだ完璧ではない。この場にいなかっただけで、この皇國にはあの神速すらも平然と受け流すバケモノが多くいるのだ。

その者たちに教えを乞うのはまだまだ先の話である。


「ということでお世話になりました。また来ます。」

「ほなまたねぇ。」

来た時と異なり多くの人に見送られ、神東亜皇國を後にした。


「「ただいま!!」」

「「「「「「おかえりなさい!!!」」」」」」

こうしてまた騒々しくも慣れ親しんだ日常へと戻っていったのである。


「ところで主様…その服装は」

「今後はアレンジした着物を普段着にするから!」

「ドレスは!!?着ないのですか!!?」

「えーめんどいじゃぁん」

…それも後日談。


呪術の概念を深堀していたら時間がかかりました。

あと寝てた…

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