一章外伝【とあるメイド達のある日の密会】
主人公抜きのメイド's定例会議です。
「それでは【宵闇白桜】定例会議を始めます」
長女役のアンドレアが司会を取り、会議は始まった。
「まずはセラフィ」
次女役のハイエルフであるセラフィが喋り始める。
「はい。主様の考案したスキンケアラインの量産用魔道具作成が完了しました。これで薄利多売の実現が可能です。また、皇后様の領地で建設中の新工場では4機並列稼働させ、一日2000個の作成が可能になります。また、微生物検査や官能試験をはじめとした各種安全性試験のガイドライン完成は工場完成後となります。そのガイドライン構築に伴う各種法令作成はローラと協力して草案を皇后様に提出済みとなります。」
化粧品の作成は非常に大変なのだ。
特に安全性に関しては「え?魔術があるっしょ?なんとかなるって」という考えを、法令を司る貴族達が持っており中々発展しない。その為、魔術の扱いが得意ではない平民の間ではよく食中毒やらアレルギーやらが起こるのだ。
(細かっ…とは思うけどヨザクラ商会ブランドを落とさない為にも必要ね。)
「さすがね。次ローラ」
「はい!法令関係及び税収関係は皇室と擦り合わせを行いながら進めております。基本的に枠組みは部下達に任せておりますが、最終的には私と皇后様の認可の元議会に提出される予定となります。
続いて収益関係ですが、先月よりも35%売り上げ増加となります。これに関しては、各種慈善事業によるプロモーション効果に加え、新たに開発された日焼け止めが大人気商品となった為です。」
三女でありながら商会の中枢を担うローラが意気揚々と報告を行う。
(だからやり過ぎなのよ、うちの妹は!…主様から「もうちょい緩やかに伸ばせない?え、無理?ローラ…ローラかぁ…任せよっか。うん、それとなく抑えておいて。」とか言われてるんだから!)
「わかったわ。でももう少し緩やかに伸ばしてくれると助かるわ。文明の早急な発展は世界の歪みとなるから。」
「承知しました。しばらくは新製品もないので収まるかと。」
(…工場建設したら加速するじゃない!!)
「よろしくね。次はマリーね。」
「はい。アンドレア姉様とアカネの力により、新たにサラザール王国より奴隷を50名追加いたしました。これにより、現在ヨザクラ商会の従業員数は300名となります。一人前と認めた50名ほどをナテフ共和国支部に滞在させておりますが、そちらも含めて従業員用の社宅増設が早急な課題となります。
現在子供達からは不満は出ておりません。引き続き教育に力を注ぎます。」
四女たるマリーは、アンドレアとアカネが奴隷商・スラム街・極貧の孤児院から連れてきた子供達を育成する役割だ。
(…増えすぎよ!また皇后様に「だいぶ賑やかみたいだけれど、何名か侍女として雇えないかしら?元奴隷?ふふふ、関係ないわよ優秀なら。それにお願いしたいのは私のサポートではなくて、書類面と戦闘面だし。ねぇ、貴女達もそう思わない?」「はい!(寄越せ早く人を!)」って言われるんだから…圧に負けて20人秘書として送ったけど。)
「そうね。社宅の建設は皇后様の領地にて現在進行中よ。ただ、このペースだともっと増えそうね。ローラ、毎年の必要経費として予算確保しておいて頂戴。次はリナね。」
五女のリナが報告する。
「私からは特にありません。セラフィ姉様のサポートを引き続き行ってまいります。」
「人間の年齢で言ったら私の方が妹なんだけどなぁ…」
セラフィは70歳とはいえ、人間の年齢で言ったら7歳のまだまだ子供なのだ。見た目が13歳ほどなので、色々と判断に悩むが。
「ここでは実年齢順って決めたじゃないですかセラフィ姉様!」
「特になさそうね。次アカネ」
「六女のアカネは特にないですぅ〜。
強いていえば最近戦闘らしい戦闘をしていないので体が鈍ってきてます〜。」
「…あとでベル殿達と遊んでもらいなさい。」
「ひ、酷い!最近あの子たち益々強くなってるんですよ!?」
「最後シャルとナタリー」
サクラの専属侍女であるシャルとナタリーの番になった瞬間場が静まる。本人達にとって一番聞き逃してはならないことだからだ。
「はい。シャルロッテが代表して報告します。
主様が…」
「「「主様が?」」」
「とうとうプラチナランク冒険者として認められました!」
「「「やったぁぁぁぁ!」」」
「お祝いしなくちゃダメですね!」
「ローラ宴の手配を!」
「がってん承知の助です!」
「人外魔境まであと一歩ですね!」
どんちゃん騒ぎになった。
「さて、一通り報告も終わったわけだが他に何かあるか?」
報告後はいつも通りお茶を飲みながらの談笑となるが、みんなが最近感じていることをローラが代表してつぶやいた
「改めて思うのですけれど…主様は寂しげな目をされる事が多いと感じます。どこか私達と一線を引いているような…」
「そう…ね。それは私達が元奴隷だからという話でもないのでしょう。」
各々に皆が頷く。
「商会のことに関しては、任されている、信頼されているというのを感じるわ。でもね…あの人の本心を聞いた事がない。まるで誰かの大切になる事を恐怖しているかのよう。」
「それは私も感じるわ。人から愛されることを…拒絶しているような…」
年長組であるアンドレアとローラがボヤく。
「私達では、あの人の心の奥底にある氷を溶かすことはできない。だから…」
「えぇ、いつかあの方の大切となり得るものが現れたら」
「全員で支えてあげましょう。私達の恩人であり、可愛い妹である彼女を。」
「感情に怖くなって逃げ出してしまったら、追いかけて手を取り背中を撫でてあげましょう」
「震えてうずくまっていた私達を救ってくれたように」
「この世界には貴女を愛してくれる人がちゃんといるんだって」
「光を切り拓いてきた貴女にはちゃんと帰る場所があるんだって教えてあげましょう」
「だって私達はもう家族なのだから」
まだ想いは届かない。
サクラの心の奥底は酷く暗く冷たい宵闇のようだから。
でもね、本当は只々人からの感情が怖くて、外を見たくなくて膝を抱えて震える子供みたいなんだ。
8人の姉妹達は理屈ではなく「心」で理解していた。
奴隷から解放し癒しの光を降り注いだあの日、心の奥底にパスが繋がった。魂の血盟には満たない極々小さな契約のパス。サクラが無意識の中の一欠片で願った「本当の家族」と「愛」、8人が望んだ「運命」と「敬愛」が繋がった。
少女達の運命を大きく変えたからこそ齎された、神々からの小さなイタズラ。それが今後どのような変化を生み出すのか。それは神にしか分からない。
でもこれだけはハッキリしている。
サクラ自身もあの時運命を大きく変えたのだと。
サクラ自身も彼女達を大事に思っているからこそ怖いのだと。失った時初めてその感情に大きく揺さぶられるのだと。
その事実だけはハッキリとしていた。
気づかないだけで。
あ、まぁ不穏な空気で終わってますけど察しの通りです。えぇ。
ハッピーエンドにはするので安心してください。




