9話 夕食
王族食堂の中は意外と質素なものだったが、見たことのない料理が乗っている机や椅子は上質な木材を使っているらしくかなりしっかりしていた。
椅子にはウェールズをはじめとする王族が既に座っており、二席だけ開いていた。どうやらそこに座るらしい。部屋の四隅に一人づつ近衛騎士の甲冑を纏った人達が立っていた。ロナードは国王と王妃の傍に控えていたが、いつもの甲冑姿ではなく、ラフな物だった。そして空席の横には、見た事のない金髪をポニーテールにした少女が座ってこちらを伺っていた。
カトリーナに顔立ちは似ているのだが目尻が少し上がっている為、強きな印象を受ける。どうやら彼女がカトリーナの妹みたいだ。
フレデリックは凜に向かって微笑み、隣のルーナは手を振っていた。
カトリーナに促されるまま椅子に座ったリンにウェールズが話し掛けてきた。
「すまんな、リン。無理に呼んでしまって。」
「いえいえ、私も一応ウェールズさんの臣下でもありますし、気にしないで下さい。」
それに食事は皆で食べた方が美味しいですし、と皆を感心させた後、食事が始まった。
「いただきます。」
料理の主軸はやはり洋食らしく、パン、スープ、サラダ、そしてよくわからない動物の肉だった。
「お父様、リンがお父様とミランさんとでニホンの事について話し合いたいそうです。」
「ふむ。リンよ。それはエカテリーナも行ってよいのか?」
「あっ、全然構いませんよ。寧ろ来て下さいって感じです。他にも信用出来る人なら誰が来ても大丈夫ですよ。アリスの参加もおねがいします。」
「ふむ。あいわかった。では夕食を済ませた後、話をしよう。場所や人員は我が決めよう。詳細は後で侍女に伝えておくとしよう。」
ありがとうございます。と凜がウェールズに御礼をいいその話を終わらせた時、横に座る少女が話し掛けてきた。
「リンさんでよろしくって?」
「うん、そうだよ。貴女は?」
「申し遅れましたわ。私、ウィルヘルム王国第二王女ミリエル・フランシス・ウィルヘルムと申します。お姉様とも親しいようですし、友達になってあげてもよろしくってよ。」
(うわー、ツンデレだ〜。生ツンデレきたー)
カトリーナの方を見ると苦笑していた。
「じゃあ、よろしくね。ミリー。」
「み、ミリー。まぁそれでいいですわ。」
「そうそう、カトリーナ。あなたの事カティって呼んでいい。」
カトリーナは目を丸くしたが、すぐに嬉しそうに微笑み頷いた。
その後ルーナも入ってきて四人で楽しくキャイキャイやっていた。
それをウェールズ達はほほえましいそうに見ていたそうだ。
「ごちそうさまでした。」
それは何かと聞くカトリーナに、自分の国の習慣であり、食べる為に亡くなってしまった命や作ってくれた人達への感謝を込めて。と、説明するとカトリーナはもちろんウェールズに至っては唸りながら感心していた。
それを聞いた料理長をはじめとするコックさん達は、涙を流して感動したらしい。凜は全く知らなかったが。
「では、リン。また後でね。」
夕食も終わり王族と別れた凜は迎えに来てくれたアリスと一緒に部屋へ戻った。
「この後お風呂に入りますか?」
「うーん、先に調べたい事があるから後にするよ。アリス、銅と鉄持ってない?」「銅と鉄ですか?銅は部屋にはあると思いますが、鉄は・・・。鉄は無理ですが銅を持ってきましょうか?」
「お願いしていい?」
任せてください。と言うアリスに銅を取ってきてもらう事にして、凜は考えた。
(やっぱり粗銅なのかな?鉄はまた今度確認したらいいか)
そんな事を考えているとアリスが戻ってきた。
「これが銅です。」
アリスが持って来たのは銅で出来たコインのような物だった。
「やっぱり見ただけじゃあわからないか。アリス、通貨の事教えて欲しいんだけど」
だいたい銅貨一枚で御飯を食べられ、三枚で飯付きの宿に泊まれるぐらいらしい。銅貨十枚で銀貨、銀貨十枚で金貨になり、金貨が一枚あれば家族で一年は暮らせるらしい。
「うん、ありがと、アリス。じゃあお風呂入ろっか」
その後二人でお風呂に入り洗いっこしていると、アリスの目付きがおかしくなり、お風呂から出てきた凜がまた涙目だったらしい。
「あ〜気持ち良かった。」
「また汚されたよー」
お風呂から上がった後、凜の部屋で一人はうっとりもう一人は腕で身体をだきしめてめそめそしていると、
コンコン
ガチャ
「リミスです。ウェールズ様がおよびです。一緒についてきて下さい。アリス、あなたも一緒にですよ。」
どうやら食堂で話した事を今からするようだ。
訳がわからず困惑しているアリスを連れて、リミスの後に凜はついていった。
(さてと、行きますか。)