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7話 役職決定!闇と追う者


凜がアリスと一緒に朝食を食べながら話をしている頃、ウェールズ達は会議の間にいた。



「昨日、話に出た旅の者が今しがた目を覚ました。名はリン・ヒモト。彼女はアパデス山脈を越えてやってきたらしい。」



アパデス山脈。

ウィルヘルム王国の東に位置し、休火山であるリーゴン山がある。鉄の採掘場でもある。


ウェールズはリンが未開の地の最果てにあるらしいニホンという国から来たことを伝えた。



「なんと!未開の地から!」

「未開の地から・・・。ありえない。」



重臣達がそう言うのも仕方ないだろう。何故なら嘘なのだから。


(ウェールズ!?)


エカテリーナは正気か?という目で夫を見た。


未開の地。

アパデス山脈の東側に広がる広大な土地の総称で、魔物が常に徘徊している。アパデス山脈を離れていくにつれて魔物の質も上がると言われ、国の軍はともかく、名のある傭兵でも近付かない場所であり、一万の兵を出しても十日ともたないと言われる。


そんな場所の最果てに国があり、そこからやってきた。そんな事を言う奴は正気ではないだろう。

重臣達ははかりごとか否か判断する為に一度冷静になり、大臣達の様子を伺った。すると大臣達は皆、正気か?というような目で国王を見ていた。

それを見た重臣達は、謀ではないと判断し、次に国王が正気かどうか伺った。

もちろん、いつもと変わらない国王がそこにいた。

それを見て、本当にリンと名乗る者がそう言い、国王はそれをそのまま伝えただけだと判断した。

また謀らずしも、重臣達を騙せたのである。


「ウェールズ様。証拠もなく貴方様ががそのような話を信じるはずがありません。何か証拠となる物があったのですか?」


重臣の内の一人、魔法・精霊科学官長ミラン・ケーニッヒがウェールズに問うた。

彼は優秀な魔霊術師である。魔法や精霊術の研究を行い、新しい術を発明したりしている。

ウェールズの密命により重臣側の派閥に属し、誰が信用出来るかをウェールズに教えている。

しかし彼の力を持ってしても横領や裏切りの証拠はまだ掴めていないらしい。



それを聞いたウェールズは困った顔をしながら答えた。


「いや、残念ながら証拠はなかった。が、その国の技術は聞いた。」


ウェールズは凜に聞かせてもらった日本の技術を皆に伝えた。


「と、まぁ。こんな感じだ。」


「ふむ。実に興味深いですが、嘘かもしれませんな。」


「あぁ。だから少しの間、ミランの下に就かせようかと、思うのだが・・・。

事実であるのなら莫大な利益をえる事が出来、民達の生活がよくなるだろう。」


お前達の懐も潤うぞ、的なニュアンスを漂わせて締め括った。

それを聞いた重臣達は「民の生活がよくなるのなら」と了承した。


(何が民の為だ!自分の家の為だろうが!)


この場にいた皇太子であるフレデリックは重臣達の顔に浮かぶ笑みを見て、思った。



「ふむ。皆、一応は賛成してくれたようだな。では、リミス。リン殿を呼んできてくれ。」


「はい、王様。」



(ふぅー。第一関門は突破したな。)


リミスが会議の間を出ていくのを見ながら、ウェールズは内心で溜息を吐きつつ思った。








(はい、やって来ました。会議の間。)


リミスに連れられて会議の間へとやって来た凜は、その扉の重厚さに驚きながらも、内心、溜息をついていた。


(なんで私こんな所にいるの?)


コンコン


「リミスです。リン様をお連れしました。」


「入ってくれ。」


ギィィ〜〜、っとリミスが扉を開けて中に入っていったので凜もついて入った。

中はなかなか広く、扉がある壁の反対側の壁に天井までとどく大きな窓が三つあり、部屋の真ん中に大きな楕円形の机が置かれいた。その机を囲む様に20人ぐらい椅子に座っていた。その中には、ウェールズ国王をはじめとした今朝会ったメンバーもいた。今朝凜に会っていない人達は見定めるような目で見たり、品定めするような目で凜を見ていた。

凜はリミスに連れられてウェールズの向かいに座らされた。



「リン殿、今朝そなたが話していた事を皆で話し合った。しかし証拠がないため本当かどうか判断出来んのだ。だからリン殿には役職について、証拠となるものを作ってもらおうということになった。もちろんその間の住まい等はこちらが用意しよう。」


ここに来るまでに、リミスから会議での決定等を色々と教えてもらっていたため、割とスムーズに話は進んでいった。



「そこでリン殿には魔法・精霊科学官長のミランの下に就いてもらう事した。」

紫色のローブのような衣服を纏い顎髭の豊富な老人が凜に軽く頭を下げた。どうやらあの人がミランさんらしい。


「よってリン殿を副官長の役職に就かせる。」



「では、皆昼からの政務に精を出して頑張ってくれ。以上だ。」というウェールズさんの声に座っていた人達は席立ち会議の間から出ていった。

カトリーナが去り際に「今晩、御飯をご一緒しましょうね。」と言って出ていった。


「では、リン様。お部屋に戻りましょう。」

そう言うアリスに付いて凜も会議の間を出た。



「リン様はこのあと如何なさいますか?」部屋に戻る途中、アリスが聞いてきたが、今は何もすることがない。と、伝えると

「それではお風呂に入りませんか?」と聞いてきたので了承した。



「ではお風呂へ行きましょ〜!」


何故かアリスはテンションが高かった。





「リンとかいう娘、どう思う?」


「嫌な時期に出てきたが、我々の邪魔にはならんだろう。取るに足らない存在だ。」


「そうですな。どうやっても奴らは運命を変えれることは出来ないでしょう。」

「あの娘も、容姿がかなり良かったですな〜。この王国が帝国の手に落ちたら、王女達や皇太子妃と一緒に我らの奴隷とするのはどうでしょうか?」


「ふむ。そうしましょうか。」


薄暗い小さな部屋の中に八人の男達が話し合っていた。


「おっと。誰か来たようだ。では皆の者、計画が実行されるまで、くれぐれもばれないようにな。」


そう言うと男達は去っていった。

男達が去って少し経ったあと、ミランとロナードが近衛騎士数名を引き連れてやってきた。


「くそ!また逃げられたか。」


「ミラン様。奴らどうやって私達を察知しているのでしょうか?」


「それはワシにもわからん。一応この部屋を調べておこう。まぁ何も残っていないと思うがのぅ。」



ミランの命でこの部屋を調べたが何もわからなかったようだ。

闇がゆっくりとしかし確実に動き出していた。

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