6話 朝食と説明
コンコン
「は〜い」
「アリスです。朝食をお持ちしました。」
扉を開いてアリスがカートを持って入ってきた。
「直ぐに用意しますから待っていてくださいね。」
アリスはそういいながら部屋にあったテーブルの上に料理を置いていった。
「では、リン様。朝食の準備が出来ましたので、席にお付きください。」
「うわ〜!スッゴい美味しそうだけど・・・多っ!?」
凜は用意された朝食を見て「どこの貴族の令嬢だ。」とつっこみ、次からは食べ切れないのでもっと少なくするよう交渉した。
アリスは「王族の客人なのだからこの位は用意させていただかないと・・・」と拒否したのだが、
「民の生活が困窮しているのに、国の役人が贅沢をしているのになどありえない。」というリンの言葉に感動し、それならばと了承した。
凜は、その時アリスの頬が少し赤く染まり、凜の見る目が潤み、ヤバイ気がしたが気付かない振りをした。
「リン様・・・。」
「え、えーと・・・。あ、アリス、早く食べよ。」
どこかにトリップしているアリスを「あっ、はい。そうですね。」と正気に戻し、ようやく朝食に取り掛かった。
「それはそうと、リン様はどのくらいこの世界についてご存知ですか?」
と聞いてきたので、「ウィルヘルム王国があって王様がウェールズさんってことだけかな・・・」と自分の知っている事を伝えた。
「そうですか・・・。では、全て話した方がいいですね。
ウィルヘルム王国のある大陸をハルクセイド大陸という。もともとはヤークス帝国がハルクセイド大陸全域を統治していた。しかし今からおよそ150年前、ヤークス帝国が一夜にして滅亡した。
ヤークス帝国の首都ストロングホールドでは何か戦った形跡はあるものの死体は一つも遺っていなかった。と言われている。
大陸中の学者がその原因を調査してきたが、未だに有力な説は出ておらず、死体がなかったことより魔物や魔獣にやられたのではないかと庶民の間では噂されている。
ヤークス帝国が滅亡すると七十余りの国が独立を宣言した。しかし、睨みをきかせていたヤークス帝国が滅亡すると、戦争を止める者がいなくなり、大陸中で戦争が勃発した。
その中で他の国々を侵略し勢力を拡大していった国が五つあった。その国々は『五大国』と呼ばれた。
ハルクセイド大陸の南東に位置する豊饒の国ウィルヘルム王国、南西に位置する兵の国アッパード帝国、北西に位置する雪の国スノーキングダム、北東に位置する精霊の国フェアリーナ部族国家、四つの国の真ん中に位置し異例な商人の街サカイ。この5国が五大国である。当初、五大国の中で一番力を持っていたのはウィルヘルム王国だった。
しかし前国王のルックウッドが莫大な赤字を作りあげた。現国王ウェールズが危機をしのいだが、未だに民達の困窮は続いている。
そして、リン様が前代未聞の方法で現れた。と、まぁ、こんな感じですね。」
「・・・。なんか私、凄い時に現れちゃたみたいだね。」
「そうですね。そのお陰か皆さんとても期待していましたよ。」
「もちろん私もですけど。」というアリスに「期待しないでよ。」と凜は言いながら考えた。
(私、出来る事なくない?)
「ねぇねぇ、アリス。いきなりだけど、この国の収入源って何?」
「収入源ですか。そうですね・・・。前までは王国の北に位置するアーマインの森から良質な木材が採れていたのですが、最近では魔物が現れ、伐採どころではないそうです。
後は銅と鉄ですね。いずれも製錬に大量の木材がいるので、サカイから輸入していますが、金銭的に木材を大量に輸入出来ないため、銅と鉄は余り製錬出来ていないのが現状です。」
「う〜ん。それを聞くかぎりでは木材に代わる可燃材が必要か・・・。」
「そうですね。とは言いますが中々見つからないのが現実です。希望であった魔石も製錬に必要な火力を出すのには、まだまだ時間が掛かりそうですし、出せるのかもわかりません。」
「う〜ん、そうだよねって・・・魔石?何それ?」
『あれ?言ってませんでしたか?』と宣うアリスに『聞いてないわ〜!ガオ〜!』と突っ込んだあと、魔石について説明を求めた。
アリス曰く、魔石とは魔力が宿った石だという。
凜が『そのまんまかい!』とつっこむと『まだ、続きがあるんです〜』と涙目になりながら言ったので、つっこむ事を止めてちゃんと聞いてあげることにした。
その時(アリスの涙目萌え〜〜!)とか思ったのは凜だけの秘密だ。
「魔石には色々な属性の魔力が宿ります。そして魔力の量、属性によって色の濃さや色が異なります。魔力量が多いと濃く、少ないと薄くなります。」
そして、火属性は赤、水属性は青、風属性は緑、土属性は茶色、電気属性は黄色となっており、魔力が空になっても、その属性の元素と触れ合わせておくと自動的に魔力が回復し、半永久的に利用出来るのだとか。
魔力が回復するには時間が掛かるそうだが。
例をあげるなら水属性の石は水の中に入れておくといいらしい。
入手方法は電気属性以外は極めて簡単で、その辺に落ちているらしい。電気属性の魔石は雷が魔石に落ちないと出来ないらしく、希少価値が高いらしい。人工的に作れなくもないが、乾燥している北の方で静電気を魔石に貯える方法らしく、手間が掛かる割には火属性や水属性のように使い勝手が良いわけではないので、需要が低いらしい。物好きが買っていくぐらいらしい。
「ふーん、便利な物があるんだねぇ。」
ハルクセイド大陸は魔石と共に歩んできていて、私達の生活とは切っても切れない物ですからね。というアリスに魔法の火で鉄や銅を製錬に必要な火力が出せないかと聞くと、火力が足りないらしく、何人集めても無理らしい。
(それもそうか。銅や鉄には1000度必要だからね。ん、鉄って銑鉄の事じゃないよね。銅も粗銅じゃぁ・・・。まっ、後でいいか。)
その後、ガールズトークでキャっキャっやっていると
コンコン
ガチャ
「リミスです。ウェールズ様がお呼びですので、会議の間にお越しください。あっ、アリス、貴女も来て下さいね。」
(うわ〜。いきなり会議ですか・・・。)