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18話 クローの温泉!?


「うわ~!気持ち~~!!」


そんなことを言いながら足を湯に漬ける凛を見てゴートはため息をついた。

(はぁ。お転婆娘の世話は焼けるな・・・)



あの後、昼食の時間までにクロー村に帰ってこれた一行は石化が解けた村人をとりあえず村の救護所に届けた後、未だに目を覚まさない凛を抱えながら村長宅へむかった。その道中、井戸に通りかかった時に目を覚ましたが、なぜか井戸を見た後、悲鳴を上げながら再び気を失った凛を「何かあったのでは?」と心配を皆でしながら急いで村長宅へ戻った。そしてゴートに言われ、部屋で凛の服をニヤニヤしながら脱がして怪我はないかを調べていたハンスが、服を捲り上げている時に目を覚ました凛に吹き飛ばされたなど、色々問題はあったが誰も怪我はなかった。

いや、最後の最後でハンスが怪我をしただけですんだ。


村長宅で村の危機を救ってくれた、ということで皆で昼食をご馳走になっている時にゴートは凛に訊いてみた。

「なぁ、凛。なんでお前はあんなところにいたんだ?」


「なんでって・・・。う~ん、なんでだろう?」


少しの間考えた後、凛は手をポンっとたたき、顔を物凄い暗くして答えた。

「夜中にね、声が聞こえてきたの・・・」


「ハンスのか?」


それに対してゴートはニヤニヤしながらそう聞き、その意図に気付いた凛は凛に吹き飛ばされ倒れたままのハンスを見た後、顔を真っ赤にして俯いた。


「ち、ちがうよ・・・」


「まぁ、冗談はそれくらいにしてだな、なんかあったのか?」


凛は「冗談か!!!」と突っ込んだ後、答えようとして口を開けたが、すぐに閉じてもっと顔を真っ赤にして俯いた。


そして、物凄い小さな声で聞いた?


「わ、笑わない?」


ゴートは怪訝な顔をしたが、『笑わない』と言い続きを促した。

促された凜は昨夜の『お化け騒動』と自分のとった行動を話した。

それを聞いたゴートは腹を抱えて笑い、村長達も笑いを頑張って堪えていた。といっても、肩は耐え切れずに震えていたが。


「笑わないっていったのに!」


それに対して凜は、顔を羞恥から赤くし、頬を膨らませた。それを見たゴートは内心ホッとしていた。


(いつもの凜だな)




村長宅で昼食を御馳走になった後、凜は申し訳なさそうに『お風呂とか、そういったものはないですか?』と、村長に聞いた。


「おぉ、すまんかったのぉ、気が利かなくて。」


村長はそう言った後、少し考えた後、答えた。


「あるにはあるがの、桶にお湯を張って布で体を拭うような物しかないの。王都の風呂のように体を湯につけれるような物はないんじゃ」


すまんの、と答えた村長に、『いぇいぇ』と、凜は答えたながら少し考え、村長に聞いてみた。


「この村って火山の麓?にありましたよね」


「あぁ、そうじゃ」


「じゃあ、温泉とかはないんですか?」


「温泉?」


聞かれた村長は、首を傾けた。どうやら知らないようだ。


(でも、知らないとは限らないか。違う名前で通っているかもしれないし)


凛はそう考え、温泉とはどういうものかを説明した。そこまで温泉に精通しているわけでわない凛の説明でも、大体どういうものなのか、想像出来たようだ。


「ふむ、温泉か。俺は今まで商人達から色んな話を聞いてきたが、お前の言うような物、温泉だったか?そんなのは聞いたことがないな。」


「そうですな。」


ゴートがそう答え、それを肯定するように村長が答えた。それを聞いたしばらく考えた後、凛は席を立ち、外に出て行った。その後を、何か凄いことをすると、考えた村長達と視察団は付いて出て行った。残されたゴートは、溜息を吐いた後、出て行った。


外に出た凛を待っていたのは純白の羽を持つ馬だった。


「えっ!何これ!?ペガサス?」


馬は、驚き目をまん丸にして驚いている凛に近づき、顔を凛の胸に摺り寄せた。驚いている凛に、どこからか声が聞こえてきた。


((凛!!))


声は耳からではなく、直接脳に語りかけているような感じだった。


(えっ!?どうなってるの?この声直接頭に・・・。それにこの声どこかで聞いたことがある)


どこかというより、つい先程午前中まで聞いていた声だった。凛はあの出来事を覚えてはいたがあえて思い出さないようにしていた。

凛は震える声で声の主に尋ねた。


(も、もしかして、し、シュティ?)


尋ねはしたが凛には答えは既にわかっていた。馬はそれに答えるように更に摺り寄せた。


((やっぱり分かってくれた。また会えて嬉しよ、凛))


それを聞いた後、凛は馬、シュテルンの顔を泣きながら両腕で抱きしめた。


「シュ、シュティ!よかったよ!あの時はもう会えないかと思ったよ。う、うう」


凛はシュテルンが剣に貫かれて息絶えたのをもちろん覚えてはいたが、認めたくない出来事であったため、無意識に思い出さないようにしていたのである。

馬が何者かわからないゴート達は、馬に抱きつく凛を見て驚いてはいたが、太陽の光を浴びて清らかに輝く凛とシュテルンが女神とその愛馬の様に見え、我を忘れて見入っていた。

余談だが、ハンスを始めとする若者はシュテルンの顔がちょうど凛の胸の谷間に挟まれていたので、顔を真っ赤にし見つめていたとか。


(り、リン様って意外と胸あるな。)



その後、ゴート達にシュテルンの事を説明した凛は、もう既にシュテルンは危害を加えない事を伝え、それならばと村人達はシュテルンを今の間だけ村に置いておく事を了承した。王都に戻る時に連れていく事をお願いしていたが。

説明した後、凛は本来の目的である源泉探しを開始した。








「う〜ん。どこだろ?」


凜は皆を引き連れて村や村の周辺を歩き回っていた。もちろん目的は源泉の発見である。

凜の後を歩いているゴート達は皆、スコップやくわなど地面を掘るための物を手に持っていた。


30分程歩いていたら突然凜が立ち止まり、ゴート達は訝しんで凜の様子を伺った。


「ん?ここかも・・・」


そう呟いたあと、凜は皆にこの辺を慎重に掘るようにお願いした。

「【女神の使者】様のお願いなら。」と、皆は進んで凜に従った。


「め、女神の使者・・・」



掘ること10分。何か、卵が腐ったようなニオイが辺りに漂いだした。

異変を感じたゴートが凜に尋ねた。


「おい、リン!なんか変なニオイがするぞ!」


「うん!ビンゴ!」


それに対し凜はそう答え、皆を下がらせた。

皆がさがったのを確認したあと、村人の一人からスコップを借りて、それを地面に力いっぱい突き刺した。


「おぉ・・・!」


そうスコップの刺さっている所から、少しづつではあるが液体が出てきたのだ。


「ほぉ。水源を掘り当てたのか。」


それを見ていたゴートはそう言ったが、凜は『フフフ。違うよ』と言った。怪訝な顔をするゴートに凜は言った。


「よく見てよ。ほら!湯気が起っているでしょ。液体も白く濁っているし」


「うぉ!ホントだ!・・・じゃあ、これがさっき言ってた温泉ってやつか?」


『うん、そうだよ。』と言った後、凜は皆に温泉の効力について説明した。

そしてこれをこの村、クローの特産物のような物にしたらどうか、と提案した。


「魔物とか出ないんでしょ?だったらここに旅館とか建てて、山の中でバーベキューや狩りをした後に、旅館と温泉でくつろいでもらう、とかさ。御飯には、自分の狩った動物を料理にだしたり・・・」


このような発想が出なかったのか、村人達だけではなくゴート達、視察団の人達も興味深げに真剣に聞いていた。


「木とかなら周りにいっぱいあるし、別に上質な木を使う必要もないしね」


『それに意外と現地の人達のような暮らしが体験出来た方が人気が出るしね』と言い、凜は皆の様子を伺った。

村人達と視察団はお互いに相談しあっているようだ。顔を見た限りではなかなか良い案だったようだ。

少し話し合った後、村長が恐る恐る話し掛けてきた。


「【使者】様。非常に魅力的な案じゃとは思う。じゃが、わしらにはどうやればいいのかよく分からんのじゃが・・・。」


村長の言わんとしている事を理解した凜は微笑みながら、


「大丈夫ですよ。ほったらかしにしようなんて、思ってませんから」


と言った。

それを聞いた村長達は顔を明るくした。


「と、ということは・・・」


「もちろん助言はしますよ。もちろんそのつもりでしたし。」


「「「あ、ありがとうございます!!!」」」



その後、いったん村へ帰り、村長宅に役人である視察団とこの計画に携わる者達の代表を集めて、凜は温泉施設、旅館などの概要を説明していった。

もちろん日本とハルクセイド大陸には文化の違いがあるので、『ここをかえた方がいい。』など村人や視察団の意見も聞きながら。








この会合の後に、ハルクセイド大陸、初のトレジャー施設がウィルヘルム王国の山の村クローで開設されるのだった。

もちろん黒髪の少女の提案によりウィルヘルム王国国王ウェールズが発行する身分証明書を持つ他国の人も利用可能である。

更に後には、黒髪の少女の発明により自宅で温泉を楽しめる入浴剤【湯の華】がハルクセイド大陸中の王族や貴族、特に美容に関心のある令嬢や夫人に大流行するのだった。

また自国の貴族より富んでいる他国の貴族が来てくれる御蔭でクローは潤い、その中継地となる村や町が繁栄し、それにしたがいウィルヘルム王国自体も潤っていったりするのだが、それはた別のお話である。









「そんなことよりなんで村長には敬語を使うんだ?」


「ん?それはもちろん年上の方だからだよ」


「・・・じゃあ、なんで俺には敬語を使わないんだ?もしかして俺が年上に感じないような馬鹿さがあるとかじゃねぇよな?ハッハッハ!!!・・・・」


「・・・・・・・・」


「な!?ひ、否定してくれよ・・・」


余談だが、これは熊のような役人さんと黒髪の少女の対談である。

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