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17話 女神の使者

こんにちは。

何か思ったこと、感想など書いて下さると嬉しいです。


これからも『ミカン』と『女神の使者』をよろしくお願いします。


Mr.ミカン

「はぁはぁはぁ・・・」


「はぁはぁ、着い、たか・・・はぁ」


白髪の少年が目的地にたどり着いた。彼の後ろには追手を共に退けてきた彼の最も信頼出来る部下達もいた。


「マドリガル。王の城だ。」


そう言い、少年は白亜の城壁に幾重にも囲まれた純白の城を見た。


「様!ただいま戻りました!」


「ふむ。してどうだった?」


少年はマドリガルに潜伏していた密偵に状況を聞いた。


「それが、少しではありますが活気を取り戻しているようです」


「それは誠か?」


「はい。それに良質の武器まで出ています。」


「良質の武器だと?」


尋ねられた密偵は、強化の魔法を施された剣と打ち合える程の剣が、少しではあるが出回っていると伝えた。

(新しい製錬方が発見された・・・か?)


少年は少し考えた後、号令を出し、王都へと向かった。







「シュティの事、村の人達に話してあげる。」凜が女性、シュテルンに名前を付けた後、今後の事を話し合っていた。


「で、でも私にはこの眼が・・・」


「大丈夫だって。さっき実験したんだから。」


実験とは、凜はおいといて、どうなれば石になるかをその辺にいる虫さんで調べたのだ。虫さん、ごめんなさい。色々調べてみた結果、相手の目がシュテルンの右目を見たら石になる事がわかった。


「だからこの布で右目を隠したら大丈夫だって」


そう言い、凜は自分の服の袖から破り取った布をシュテルンの右目が隠れるよう、眼帯のように巻き付けた。


「うん!カッコイイ!シュティ、綺麗だから似合ってるよ」


もともと顔立ちが整っているので眼帯を付けても違和感はなく、寧ろ凛々しくなっていた。


「ほ、ホント?」


が、シュテルンには自信がないようだ。


「ホントだって!男の人、皆惚れちゃうかもね」


女同士でキャイキャイやっていると、この広場の入口が何やら騒がしくなってきた。

それを感じ取ったシュテルンは凜の背中に隠れ、凜は入口を睨み付けた。






少し前・・・

朝起きたゴートは顔を洗い、朝食をとっていた。その場には村長、村長の家族、昨日ここに泊めてもらった視察団などがいた。


「おい、ハンス。」


「何?父さん」


「凜をそろそろ起こしてこい。」


「え、な、なんで僕なの?」「お前、あいつに気があるだろ?」


ゴートは息子ハンスにニヤニヤして言った。


「っ!」


それを聞いたハンスは顔を赤くして口をパクパクした。


「ほぉ〜、そうでしたか。いや〜残念、わしの息子の嫁にでもと思ったのですが、先約がいましたか」


それを見た村長が悪ノリして、そう言った。


「な、なんで、そうなるんですか!?」


ハンスはそう言ったが

「ん?違うのか?」


「ち、違うよ・・・」


「そうですか!ではわしの息子の嫁に「ダメです!」しよう」


「何故、ダメなんだ?」


グチグチ言うハンスにゴートはそう言い、言われたハンスは明らかに動揺して視線を泳がせた後、『いい案が思いついた』と言わんばかりにゴートに言った。


「そ、そういう事は本人、リン様が決める事です!僕たちが口出ししていい事ではありません」


と言い、『もう何も聞くな』と言わんばかりに黙々と朝食をとり始めた。


「ちっ、正論を言いやがって。今日の所はこれくらいにしといてやるよ」


「それにしても本当に遅いですなぁ」


「あぁ。ハンス、冗談はなしでホントに起こしてこい。」


「・・・わかったよ」


少し間を空けてからハンスが頷いて、部屋を出ていった。

いやいやと言いながらも凜の部屋へと行く時、スキップしていた。


数分後、ハンスが顔を真っ青にして慌ただしく戻ってきた。


「父さん!た、大変だ!リン様が!」


ハンスの様子にただ事ではないと感じたゴートは席を立ち、何があったか聞いた。


「り、リン様が、リン様が部屋にいない!」


「「「は?」」」


その場にいた皆がそう言った。


「ハンス!落ち着いて話せ。」


ゴートの声に落ち着きを取り戻したハンスは先ほどの事を話した。


「と、父さんにリンを起こしてこいと、言われてリン様の寝室に行ったんだけど、声を掛けても返ってこなかったから、中に入ってみたら、寝室にリン様がいなくて。」


「あのお転婆娘め!ハンス!もう一度リン の部屋に行くぞ。何か遺っているかもしれないからな」


「はい!」


「村長は、申し訳ないが黒髪の少女を見た者がいないか、村の人達に聞いてきてくれ」


「任されよ」



凜の寝室に着いたゴート達は、不自然なところがないか調べた。


「父さん、リン様の服がないよ」


「・・・そのかわり、寝間着はあるな。」


「って事は着替えて外に行ったのかな?」


「それしかないだろ。いつ着替えたか、だな」


その後も調べたが、それ以上の事はわからなかった。


「これ以上はわからんか・・・」


「ゴート様!有力な情報を得ましたぞ」


手詰まりになったところで、村長が部屋の中に駆け込んできた。


「夜中に井戸の水汲みをしていた者が見たそうじゃ。『黒髪の少女が何故か井戸を避けて山へ向かった』と言ってましたぞ。」


「・・・何故、井戸を避けたかは、わからんが黒髪からしてそいつがリンだろう。でもなんで山の中に・・・」


ゴートはわからなかったが、ハンスは何か思いあたる節があるようで顔が真っ青になった。それを見たゴートが怪訝そうにきいた。


「どうした、ハンス?何かわかったのか?」


「や、山の中に魔物がいるから、退治しようとして、は、入ったのかも」


ゴートは少し考えた後、村長が言うのを遮って言った。


「そんな訳「いや、ありえる」・・・」


「しかし、女子おなご、一人で、魔物が出没している山へ行くかのぉ」


村長はそう言ったが、ゴートはすぐに否定した。


「いや、十分ありえる。村長は知らんが、リンは【未開の地】の果てから来たらしい。だから魔物の対象方法を、何かしら持っていたのかもしれない」


『フラン様は、リンの事に関して、何かまだ隠しているようだったけどな』と言い、村長に山の中に行く事を伝えた。


「それならば、魔物の事もありますし、山に詳しいわし(村長)と、村の者も数人着いていきます。」


「あぁ。頼む」


と言った後、ゴートが部屋を出ていき、その後をハンスと村長も着いていった。



そして山の中を駆け回ること一時間、岩によって回りを囲まれた広場のような場所にやってきていた。


「ん?父さん。声が聞こえるよ」


「あぁ、女だな。それも二人で、一人はよく知る者の声だな」


そう言い、ゴートは広場に入っていった。






凜が睨み付けていた入口から入ってきたのは熊のような男、ゴートだった。


「あれ?ゴートさん?」


「あれ?じゃねぇ!何やってんだお前は」


「それにハンス君と村長さんも。あっ、村の人達もいるじゃん」


「朝起きたら、お前がいなくなってたから探しに来たんだよ。ったく、心配かけさせんな」


と言い、ゴートは凜の頭をペシッと叩いた。『いた〜い』と言う凜を無視して凜の後ろにいた女を見た。


「で、リン。誰だこいつ?」


凜は『あぁ』と言い説明しようとしたが絶叫によって遮られた。


「その人はね、シュテ「お、おい!!大丈夫か!!!しっかりしろ!」」


着いてきていた村人達が、石にされた村人達を見つけたのだった。




凜は数十分掛けて、シュテルンの事情を話した。初め、『シュテルンが村の人達を石にした』と、凜が話した時、村の人達は怒り、敵意をもってシュテルンを見ていたが、生い立ちなどを話したらシュテルンに同情し、その怒りをマントの男に向けていた。


「・・・と、いうことなんです。」


説明を終えた凜はゴートに尋ねた。


「ゴートさん。シュティはこれからどうなるんですか?」


それに対しゴートは少し考えた後、答えた。


「今は何とも言えんが、村人に危害を加えたという事実は消えない。何かしら罰を受けなければならないだろう」


「っ!な、なんで!?ねぇ、シュティは今まで罰を受けてきたんだよ!なんでまた受けなきゃダメなの!?」


それを聞いた凜は激怒したが、シュテルンによって止められた。


「いいのよ、リン。そう思ってくれる人がいるだけで私は幸せよ。」


『でも!!』と言う凜に、『ありがとう』と言い、シュテルンはゴートの前に出た。

そして、両手を前にだした。

ゴートは辛そうな顔をしながら腰に付けていた手錠のような物を手にとり、シュテルンの前に一歩踏み出した。そしてシュテルンの腕に手錠をはめようとした時、


「そんなにも罰を受けたいなら俺が下してやる!!」


グサッ


どこからか声が聞こえ、凜の目の前を赤い何かが通り過ぎていき、シュテルンの腹部に付き刺さった。

そそれは血のように赤い剣だった。


「っ!シュティ!!!」


凜は倒れそうになるシュテルンの肩を抱き、ゴート達は剣が飛んできた方を見た。

そこにはマントを纏った者がいた。顔はマントに隠れ見えないが、先程の声から判断すると男のようだ。


ゴートは腰に提げた剣を抜き放ち、凜達を守るように一歩前にでた。後ろでは村人達が同じように腰から抜き放った。ひのきの棒を・・・。


「貴様、何者だ!!」


ゴートは声を張り上げて威嚇したが、男はおどけるように言った。


「おー、こわいこわい。そう怒りなさんな。別に俺はあんた達にちょっかい出しにきたわけじゃぁねぇ〜よ」


『俺のペットの後始末をしにきただけだ』と言い、凜の腕の中で苦しんでいるシュテルンを見た。その目は笑っており、狂っていた。


「ははははは!俺の用事はすんだから帰らせてもらうぜ『発送アプ・ゼンドゥング』」


男がそう言うと、シュテルンに突き刺さっていた剣が消え、男の手に戻っていた。


「じゃあな」


黒い霧のような物が男を覆い、霧が晴れた後、男は消えていた。




「シュティ!!!」


凜はシュテルンの腹部を手で押さえ、必死に血を止めようとしたが血は凜の手の隙間から流れ出た。


(な、何か手はないの、何か手は・・・)


「り、リン・・・。もう、い、いわ。」


「よくない!!!!シュティ、私が絶対に助けるから!」


そう言い、凜は自分の、先程シュテルンの眼帯のために破り取ったのとは逆の方の、服の袖を破り取り、シュテルンの腹部に押さえつけた。


それを見ていたゴートは悲しそうな顔をして、


「リン。諦めろ・・・。治癒術も効かなかったんだ。治りはしない」


治癒術を使える者が術をかけたが、あの剣には魔法無効の術がかけられていたようで効かなかった。


「そんな事ないもん!絶対に助けるだからぁ!!」


懸命に血を止めようとしたが止まらず、シュテルンと凜の回りは血溜まりができた。


「り、リン・・・。あ、りがと、う・・・」


そう言い、シュテルンは目を閉じた。


「シュティ!シュティ!いやぁぁぁぁああぁ!!」


凜は絶叫し、涙を流しシュテルンに縋り付きながら意識を失った。



凜が泣き疲れたからなのか、ショックからかはわからないが、意識を失った。

ゴートは今だ石のままである村人達を見た。

「村長。まずは石になったままの村人達を村へ運ぼう」


「了解じゃ」


そう指示を出した後、ゴートは凜を連れて帰るため、凜の方を振り返った。


「なっ!?」


凜は泣いていた。いや、姿は凜だが、凜ではないのかもしれない。ゴートの声を聞き、村人を運ぼうとしていた人達が、ゴートが見ている方を見た。


「「「っ!!??」」」


皆が見たのは、翼を持った凜だった。翼といっても鳥のようにしっかりとした物ではなく、透明度が高く、ぼんやりと、青白く光っていた。

凜は泣いていた。目から光り輝く宝石のような涙が零れ落ち、その涙が地に溜まったシュテルンの血と混じり合った。


(イリュズィオン)白翼騎(ブラン・エル・シュヴァル)


澄んだ、とても綺麗な声だった。

凜がそう呟くとシュテルンの血が淡く光り、動きだし、何かをかたどっていった。

皆、呆然として凜、そして『血』をを見ていた。

シュテルンの血は何か生き物のような形になり、物凄い光を出し始めた。

ゴート達は腕で目を覆い、光が納まると驚きで目を見開いた。

純白の翼を持つ馬が凜に頬を撫でられ、嬉しそうにいなな

いていた。


「たまげた・・・。何だこりゃ」


ゴートはそう呟き、凜と馬を眺めていた。


馬の頬を撫でていた凜は、突然石になったままの村人達の方へ向かって歩きだした。

石の村人の前に着いた凜は、手を村人の額に添え、呟いた。


完全(パルフェ)なる回復(レタブリスマン)


石になったままの村人を中心に、閃光が辺りを照らした。光が納まると、石化が解けた村人達が地面に寝転んでいた。


「女神だ・・・」


それを見ていた誰かが呟いた。それを聞いた凜は、優しい笑みを浮かべた。


『この子は女神ではありません。【私の使い】、そして【希望】ですから』


そう言い、ゴートに向き直った。


『一連の出来事を貴方の王様に報告してください』


では。と言い、凜に生えていた翼が消え、それと同時に凜は崩れ落ちた。


「よっと!」


崩れ落ちる凜を抱き抱えたゴートは、村人に指示を出し始めた。


「お前も来るか?」


ゴートは翼を持つ馬に話し掛けた。馬は嘶いて近づいてきて、凜の顔を舐めた。


(ただ者ではないとは、思っていたが、予想外だったな)


ゴートはそう思いながら、皆と一緒に山を降りて、村へと向かった。

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