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15話 クローの魔物


「はぁはぁ・・・」


クロー村

マドリガルから北東より少し南よりにある山、リーゴン火山の山間部にあり、人口は五十人余りの小さな村である。雨にも恵まれ村の近くを通る川も干上がる事なく、毎年安定した収穫が得られている。


「はぁはぁ・・・」


しかし、山の中にあり王国の端に位置するので、修業している人以外は行く事がない村である。


「はぁはぁ・・・。何が麓よ。山の中じゃない。」


タンデム村を出た視察団一行は、クロー村を目指していた。が、途中馬車の車輪が壊れてしまい数人を馬車に残して、歩いて山を登っているのである。


「ほら、見えてきたぞ。」


集団の先頭にいたゴートが、皆に言った。

ゴートの言うように木で作られた冊のような物が山の岩の間から見えていた。




「う〜ん。何と言うか・・・。」


村に入った一行は、村の異常さに困惑した。昼にも関わらず外に人が一人もいなかったのである。


「静かと言うより寂れてるね。空気がなんか重いし。いつもこんな感じなの?」


「いや、もう少しマシだ。というかなんか変だ。」


凜は違和感を覚え、ゴートに聞いてみたが、ゴートもそれを感じ取ったが詳しくわからないようだ。

違和感を感じつつも村長の家の前まできて、扉をノックした。


「ウィルヘルム王国財務省農務科の者だ。村長と話をしたいのだが、誰かいるか?」


少しの間の後、扉が少し開き、外の様子をの様子を伺った。

そして閉まったかと思ったら物凄い勢いで扉が開き、中から小柄な老人が文字通り飛び出てきた。そしてその勢いのままゴートに飛び付いた。


「ご、ゴート様!私達を助けて下さい!」


ゴートは老人を落ち着かせ、未だ呆然としている凜達を正気に戻し、老人に話を伺った。


「どうしたんだ、村長?何があったか教えてくれ」


どうやらこの老人がクロー村の村長のようだ。

村長曰、人を石にする魔物が村の付近に出没し、討伐しに行った村の男達十五名が帰って来ないらしい。

村長は止めたそうだが、男達は聞かずに勝手に行ったらしい、ひのきの棒を持って・・・・。


(うわ〜、ツッコミたい!ツッコミたいけど後ろめたさがある!)

そう凜はこの事を知っていた。二日前、出発する前夜、オリバーから聞いていたのである。


「勇者か〜!」


が、欲には勝てず突っ込んだ。しかし真面目な話をしていたため全員に無視された。


(・・・・)


「何だと!?この山の中に魔物だと!小型の魔物か?」


リーゴン山があるアパデス山脈は岩などが入り組んだ迷路のようになっていて、道も細く魔物が今まで出没した事がなかったのだ。


「初めに発見した者の話では小型というより人型のようです。」


「人型?それは本当に魔物なのか?」


「そ、それは・・・」


話し合っているのを他所に凜は考えていた。


(人を石にする・・・。人型・・・。っ!まさか!!)


「ねぇ、村長さん。第一発見者の人をここに連れて来てくれませんか?」


いきなり話し掛けられた村長は怪訝な顔をしてゴートの顔を見たが、ゴートが頷いているのを見て若い者に呼びに行かせた。


「ゴート様、こちらの少女は?」


「ん?あぁ、紹介してなかったな。魔法・精霊科学副官長殿だ。」


紹介された凜は


「凜日本です。よろしくお願いします。」


と言い軽くお辞儀をした。それを聞いた村長は驚き、目を見開いた。


「この少女が!?いや〜、噂はかねがね聞いております。もっと、ごつい方だと思っておったのだが、本当に麗しい綺麗な方じゃ。その年で役職につくとは・・・。」


褒めちぎられた凜は顔を赤くして俯いていたが、次の村長の言葉で顔を上げた。


「【ウィローのローマ】も貴女の事じゃろ?神秘的な響きがある!」


それは町じゃ〜!とツッコミ、わいわいやっていると、呼びに行かされた若者が少年を後ろに従えてもどってきた。




「その魔物、本当に魔物だったの?人じゃなかった?例えば女性とか・・・」


凜に尋ねられた少年はビクリと肩を震わせた後、ぽつりぽつりと語りだした。


「はい、女性でした。」


それを聞いた面々は息を飲んだが、凜は気にせずに先を促した。


「その日、山を少し登った所でその女性が檻に入れられて眠っているのを見たんです。近付こうと思ったんだけど、赤いマントを着た人と痩せている男がいて、怖くて近付けなかった。そしたら赤いマントを着た人が女性を起こして、その女性が痩せている男を見たらその男が石になったんです。怖くなったから逃げようと思って振り返ったらさっきのマントの人がいて、それで、「魔物が出たと言え!言わなかったら村を潰す」って言われて・・・。」


凜は少し考えた後、呟いた。


「メドゥサみたいね・・・」


「めどぅさ?」


その呟きを聞いたハンスはそう言い、ゴートは、なんじゃそりゃ?と言った。


「石化、人型それも女性、そのキーワードから導き出されるのはメドゥサしか知らないわ。でもメドゥサなら頭髪が蛇なんだけどねぇ」


凜はそう言い、俯いき。聞いたゴートが凜に話し掛けた。


「それでメドゥサってのはなんなんだ?」


「ん?あぁ、メドゥサはね、神話の中に登場するの」



「神話!?」


えぇ、と言い語りだした。


「ギリシア神話っていってね昔の伝説とかを集めたものよ。そこに出てくるの。私の記憶が正しければ、メドゥサはゴルゴン三姉妹の一人よ。蛇の頭髪を持ち、見る者を石と化したそうよ。でもペルセウスに退治され、その頭はアテナに贈られたと言われているわ。」


それを聞いたハンスが聞いた。


「ペルセウスって誰ですか?アテナも」


「え〜と、アテナはギリシア神界最大の女神よ。大神ゼウスの頭から生まれたといわれ、学問・技芸・知恵・戦争を司っているわ。

ペルセウスはギリシア神話の英雄でゼウスとダナエとの子供よ。エチオピアのアンドロメダ王女を怪物の手から救って妻にしたみたい。でも、後に誤って祖父を殺してしまったから、生地アルゴスを去ってティリンスを支配したそうよ。」


やっぱり女の子の夢は英雄よね〜。私も助けてもらいたいわ。と、凜がうっとりと言っているのを見たハンスは、強くなろうと心の中で誓うのだった。


「おい、凜戻ってこい。」




その後、もう夜も更けてしまうので、帰るのが一日遅れるが、今日ここに泊まろう。ということになった。



村長宅の部屋をかりた凜は、ベットに寝転びながら考えた。


(メドゥサか・・・。違うとは思うけど、どうすればいいんだろ。やっぱり退治しないといけないのかな?それに檻に入れられていたみたいだし・・・。後はマントね。はぁ、明日は忙しくなりそう。)


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