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12話 真夜中の逃走と村々の視察



「はぁはぁはぁ・・・」


森の中を走り抜ける集団がいた。集団は20名ぐらいか、皆質素な服を着ているが腰には見るからに高級そうな剣を腰に提げている。中には自分の背丈以上の大きさの剣を背負っている者もいた。


「此処までこれば何とかなるでしょう。 様、本当にウィルヘルム王国へ向かうのですか?」


海のように青い髪を持つ青年が雪のような白髪を持つ少年に質問した。


「・・・あぁ。今はそうするしかないだろう。」


白髪の少年は少し考え答えた後、髭をはやした老人に尋ねた。


「じい、例の物は持ってきているな?」


「はい、もちろんです。」


「よし。雪の国にはあの事は伝えたか?」


「はっ!その件につきましては我が部下が彼の国の者に接触し渡したのを私が確認しました。」


少年はそれを聞き大きく頷いた後、傍にいた少女に話し掛けた。


「すまぬ、 。こんな事になってしまって・・・」


「いいえ、 様。私はいつまでもついていきます。」


少年と少女は愛を確かめあった後、少年は静かに、しかしこの場にいる皆に聞こえるよう力強く宣言した。


「今から我等はウィルヘルム王国へ向かう!」


そして間を少しあけ皆が注目した後


「我の力がない故にこのような事になってしまった。しかし今は落ち延びようと必ずこの国、民を奴らから取り戻す事を、今、ここ、そなた達の前で宣言する!」


見て聞いていた者達は皆、右手の握りこぶしで自分の左胸を叩きそれに応じた。


「行くぞ、皆の者!!豊饒の国へ!!!」


集団はあっという間に東の方に消えていき、残ったのは帝都からの篝火と城からの喧騒だけだった。









「今日は何しよ〜」


昨日一般食堂に行きオリバーに会い、彼がゴミになったのを見た後、アリスの案内の下城内を探索した凜は、アリスの仕事仲間、所謂いわゆる侍女達とその日は過ごした。

そしてまた朝を迎えたわけである。


「う〜ん、何しよ〜何しよ〜、ふにゃ〜」


昨日と同じようにベットの上でゴロゴロゴロゴロしていると、扉がノックされた。


コンコン


キツネか!と突っ込んだ後、そんなツッコミしか出来なかった自分の才能の無さに嘆きつつ返事をした。


「はい・・・。開いてますよ・・・」


物凄い暗い声になってしまった。

その声のせいか躊躇気味に開けられた扉の所にはマントを纏った少年がいた。


「あ、あの〜。農務科の者なんですが・・・。」


「あっ、すいません。」(そういえば、昨夜アリスが農務科の役人が来るって言ってたっけ)


マントを纏った少年に部屋へ上がってもらった後、用件を伺った。


「フラン様からリン様の話を伺いまして、科長がすぐにでも話がしたいそうなんですが、お時間頂けるでしょうか?」


一瞬考えた凜だったが

フランさんが話したのなら悪い人ではないだろう。と判断し、了承した。


「では参りましょうか」


「えっ、今から行くの?」


部屋を出た凜は途中会った侍女にアリスへの伝言を頼み、少年と二人で農務科長がいる所へ向かった。


「ん?そういえば名前まだ聞いてなかったね。名前何ていうの?」


「あ、すみません。僕は財務省農務科のハンス・ニコルドです。」

と言い、昨日のオリバーとは違う礼の仕方をした。どうやら騎士と文官では礼の仕方が違うようだ。「私は精霊・魔法科学科副官長の凜日本と言います。凜と呼んで下さいね。」


それに対し凜は、アリスに無理矢理手取り足取りで教えられた貴族の令嬢のような礼をした。

その後談笑していると目的地にあっという間に着いた。


部屋の扉をハンスがノックすると大きな声が返ってきた。声から判断すると声の主はなかなか若そうだ。


ハンスが中に入るのに続いて中に入った凜の目に映った物は色とりどりの植物だった。

部屋の本棚には本ではなく草。床にも植木鉢。窓の外には畑。


「ほぉ。お前がリンか。中々の女じゃないか。なぁ、ハンス。」


話を振られたハンスは顔を真っ赤にしていたが、幸い凜はハンスの後ろにいたため顔を見られる事はなかった。

「俺はゴート・ニコルド。名前からわかると思うがハンスの父だ。」


凜にはゴートと名乗る男がとても役人には見えなかった。肌は日に焼けて浅黒く、髭と髪が繋がっており、着ている服も泥があちこちについていた。そして服の上からでもわかるほど筋肉がついており、人というよりは熊の方が近いだろう。


呆然としていた凜だったがゴートの自己紹介で正気に戻り、こちらも自己紹介をした後、早速用件を伺った。


「リンは未開の地の果てから来たそうじゃあないか。明日、農務科が村々を回るんだか、「一緒にリンを連れていったらどうだ。」、とフラン様から言われたんだ。」


そう言ってお前も来るか?とゴートは凜に尋ねた。

凜としては暇であるため喜んで着いていきたいのだが、自分の事情もあるため、すぐに「了解」とは言えない。


「う〜ん。私的には行くのは全然構わないんですけど・・・。夜まで待ってもらってもいいですか?」


全然構わない。とゴートが言ったのでその話はまた夜ということになり、その後アリスが夕食の時間だと伝えにくるまで、訪問する村々の事を教えてもらった。





今晩も王族の夕食にお呼ばれし、ハンスの言っていたことをウェールズに伝えると、「ハンスが一緒なら別に構わんぞ」というお言葉を頂戴した凜は、ご機嫌でハンスに「着いていく〜」と報告した後、アリスと共に自室へ向かっていた。どうやらハンスは見た目どうり、かなり強いようだ。


部屋へ戻る途中、書類を持ったオリバーに会った凜は、アリスの横腹を肘でつっつきながら、オリバーに尋ねた。


「どうしたの?書類なんか持って。」


「ん?あぁ、リンか。いや、まぁ、何と言うか、また魔物が出たらしい。」


オリバーが言うにはクローという村で魔物が出たらしい。


(ん?どっかで聞いた事があるような・・・)


名前に引っ掛かった凜は確かめるためにオリバーに尋ねた。


「ねぇねぇ。クロー村って山の麓にある村?」


「おぉ、よく知ってるな。そこで人を石にする魔物が出たらしい。といっても山の中らしいけどな。」


それを聞いた凜は一瞬考えたが、気にしない事にした。


(明日行くけど山の中らしいし、何とかなるっしょ。)


オリバーに御礼を言い、アリスをそこに無理矢理残した凜は部屋に帰って明日の為にベットに潜り込んだ。

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