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10話 製錬と自然の歪み



凜はリミスに連れられて国王と王妃の政務室にきていた。

政務室の中にはウェールズ、エカテリーナ、トラン、フレデリック、ルーナ、エカテリーナ、ミリエルの王族達、そして、ロザン、ロード、キングリー、ミラン、ロナード、そして一人今朝の会議では見たが名前を知らないモジャモジャした白髪の老人がいた。


「来たか、リン。この黒衣を纏った小柄な男がキングリー、密偵部隊隊長だ。そしてこの者が財務大臣フランだ。フランもキングリーもそなたの事は知っておる。安心してくれ。」


モジャモジャ白髪の御老人がフランだそうだ。


「お初お目に掛かる。私はキングリー密偵部隊隊長だ。よろしく頼む、リン殿。」


「儂はフランじゃ、フラン・アラステス。よろしくの。」


「日本凜です。ん、こっちでは凜日本です。よろしくお願いします。」



挨拶が終わった時、ウェールズが話し掛けた。


「それでリン。話とは何なんだ?」


「金属の製錬の事です。」

「金属の製錬?」


はい。と凜は応え、どのように製錬しているかを聞いた。その質問には科学官長であるミランが答えた。ミランが言うには、鉄を含む鉱物を炭と一緒に熱しまくる方法らしく、何故鉄になるかはわからないが経験で鉄が出来るのはわかっているのでその方法を採用しているらしい。銅の方も似たような感じらしい。現代人である凜は、何故そうなるか説明しないとダメか。と考えながらまた聞いてみた。


「熱する事しかしてないんですね?」


あぁ。と答えるミランの声を聞きながら考えた。


(って事は銑鉄と粗銅?)


「ロナードさん。今腰に着けている剣も見せてもらってもいいですか?」


ロナードはウェールズに確認を取り、了承を得てから凜に手渡した。


(えっ!?何これ!?)


剣を慎重に受け取り、両手で剣の柄をしっかりと握った瞬間、凜の頭の中に剣術の全てが情報として一気に流れこんできた。

その時眼も蒼く光っていたが、一瞬であったため凜はもちろん周りの人達も気付かなかった。剣を持ったままぼーっとしている凜を訝しんだカトリーナが凜に声を掛けた。


「どうかしたんですか?」


「今、剣を持った時に剣の使い方が頭の中に入ってきたの。」


凜は今しがた体験したことを語った。聞いたウェールズ達は考えたが結論は出なかった。


「すまん、リン。それは我等にもわからん。」


「・・・そうですよね。一応伝えといたので、本題に戻りますね。」


ウェールズの言葉に凜はそう返し、ロナードに尋ねた。


「剣を使っていて、もろいと感じた事はありませんか?例えば剣と剣で打ちあっている時に折れてしまったりとか。」ロナードが言うには、確かに剣自体は折れやすいが、この剣は魔法によって強化しているらしく人と戦うには問題はないらしい。相手が魔物や魔獣ならどんなに力を込めても刺さらず、切れず、逆に折れてしまうらしく、普通の武器では、無手で戦うようなものらしい。

現にアーマインの森から出てくる魔物や魔獣に騎士達は何も出来ず、魔法使いや精霊術師に頼っている。



「ふむふむ。強化魔法を掛けるのにもお金とかいるの?」


凜の言葉に黙って聞いていたミランが答えた。


「そうじゃ。第一、生物以外に強化魔法など掛ける事など出来ないんじゃ。そんな事が出来たのは、古代の魔術師団ホラドリムだけじゃ。」「ミラン様の言う通りです。だから強化された武器を買うにはかなりお金が掛かります。一般兵にまで普及してないのが現状です。」


「ん、それって誰が創ってるの?」


「わからないんです。」



ロナードの話では極稀にサカイで売り出されているらしく、サカイの武器商人に聞くと、赤いマントを頭まで被った男が売りにくるらしい。

凜は言及をやめ本題に入った。



「結論から言いますと、これは鉄であって鉄ではありません。銅も同様です。」


凜の言葉に全員が首をかしげた。


「この世界で鉄と呼んでいるのは銑鉄と呼ばれるもので鉄の他に炭素を3.0〜4.5%も含んでいます。銅も同じで粗銅と呼ばれ銅は98.5%しか含まれていません。」


そこで凜はミランに鉄と銅が製錬される前の鉱物を貸して下さいと頼んだ。

前持ってアリスがミランに伝えておいたのである。


凜の言葉を聞いて、ミランは赤茶色の石と黒っぽい石と金色っぽい石、三つを凜に渡した。

その時、ミランの眼がキラキラ光って見えた。と凜は後に語ったそうな。

いつの間にか、ミランさんの部下達も何故かこの場にいた。



「この赤茶色の石、黒っぽい石、金色っぽい石はそれぞれ赤鉄鉱、磁鉄鉱、黄銅鉱と呼ばれ、ご存知の通り鉄、銅の素になります。」


凜は鉄鉱石、石灰石、コークスを同時に炉に入れ還元させる方法を詳細に説明した。


「そして出来上がったのが融解された銑鉄で、こちらで武具に使われている物です。この融解された銑鉄に酸素を強く吹き込む事で銑鉄に含まれていた炭素を取り除きます。そうして出来るのが鋼と言われる物で強度、切れ味など、どれをとっても銑鉄より優れています。といっても、魔物に通用するかはわかりませんけどね。」


私の世界では鋼を使って百階くらいある建物を造ったりしてましたよ〜。という凜の言葉にこの場にいた人は皆、びっくり仰天し開いた口が塞がらなかった。



「銅も不純物をたくさん含んでるけど、まだ純銅にする必要はなさそうですね。」



凜は未だに驚いた顔をしている皆を見てそう言った後、ミランの方を見た。



「ミランさ〜ん!」


「あ、あぁ。何じゃ凜殿。」


呼び捨てでいいですよ。と言った後、


「銑鉄まではこちらで既に造れていますから後は冷やす前に酸素を吹き込むだけですね。あっ、今度製鉄所に見学しに行ってもいいですか?」


「あぁ、勿論じゃ。そん時はわしが直々に案内してやろう。楽しみにしておくがよい。」


凜は、鋼を知って浮かれているミランに製鉄所見学を頼んだ後、手を叩いて未だに呆然としている人達を正気に戻し、自分に注目させた。



「ここからが1番大切な話です。」


と言った後、製錬によっておこりうる酸性雨などの環境変化の諸問題について凜の世界で実際起こっている事柄を例に出し、詳細に語った。

皆、浮かれていたミランも問題がこの世界で起こった時の事を想像し、青ざめた表情をして凜の話に聴き入った。


「技術の進歩による自然の歪み。問題は常にあるという事を心に刻んでおいてください。間違えないでくださいよ、進歩を否定している訳ではないです。問題が起こった時の対策を考えて慎重に行って下さいね。」

こんなの造れるかなぁ、ってなった時にはまた連絡しますね。という凜の台詞で密会は終わった。




これ以後、ウィルヘルム王国は急激に発展していくのだが、凜の環境問題、特に酸性雨による森林の破壊の話は、アーマインの森の魔物のせいで木材不足になっているウィルヘルム王国に浸透しやすく、しっかりと受け止められた。

凜の話を後になって知ったウィルヘルム王国の民衆は、これ以上木材が採れなくなって堪るか!と、環境を守り共に生きていく事になる。

この事により以後ハルクセイド大陸では環境問題が殆ど起こらなったらしい。

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