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幻想奇譚

【番外編】百年の宴

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

螺鈿の嫁入り の続き物ですが、これ単体でもいけます。

是が非でも幻想奇譚を思い浮かべると、こうなりました。


「嬢ちゃん、どうしたんだい? 座ったまま呆けてしまって」

癖のない青年の声が私を引き留める。気が付くと私は赤い床几台(しょうぎだい)の上で靴を履き替えている途中だった。皆早々に土足に履き替えてその場を去ってゆく。止まる事を知らない川の様に。だから、私はきっと浮いていたのだろう。ただ呆けているから。

「夢を……夢を見たんです。螺鈿に導かれて嫁入りする。数多の雛人形に囲まれて祝われる……」

自分でも何を言っているか分からない。けれども冷静さを欠いた今の私は止まる事を知らない。

あの時は一等怖かった。けれども今となってはあの光景が見られない事の方が心苦しい。もう……見れないのかと。もう会えないのかと。

独りでに狂う私を和装の青年は冷やかすことも無く黙って聞いていた。それから小首を傾げて一つの問いを投げ掛ける。

「お嬢ちゃん、君も雛人形を見に来た訳では無いのかい? 君の手はご丁寧にチケットと靴を持っているし」

言われて視線を泳がせると、明治な半券と外履きを入れたビニールが指先にぶら下がっていた。

「見なきゃ損だよ。絶対損だ。僕なら手に入らずとも、眺める事はするね」

そう言って、青年はニヤッと口角を上げた。ちらりと覗いた犬歯が印象的だった。


ふわふわの癖っ毛に丸眼鏡。明治や大正時代を思わせる和装姿。何となくテレビに出てくる鑑定士を連想させる青年だった。彼は嬉々としながらこの細い廊下を歩く。私も彼の後を追うように続くと木目の巨大な階段と相対した。

頂上が見えない程、長く続く階段だった。天井に目を向けると、日本画の様な屏風がぺったりと貼り付けられており、ただ登る者を飽きさせない。左右に寄り添った竹の手すりは、漆塗りの様につるりとしていて、油断をすると滑ってしまいそうだった。

思わず見惚れたその後に、一歩を足を踏み出す。長い時代によって培われた軋みが心地よく鼓膜を擽る。来たことが……ある様な……。

「僕は何も愛らしいお人形さんだけを見に来ただけじゃないよ。文化の空間そのもの、持ち帰るには大層苦労しそうな、この百年階段も一緒に見に来たんだ。良いだろう? この艶、この軋み。何処を嗅いで甘く馨しい。これが僕を呼んだのさ」

そう饒舌に語りながら、彼は階段を登る。横に備え付けられた二つの部屋には目もくれず、三番目の部屋のところでぽっきりと折れ曲がる。

「良いんですか……? 他にも部屋が……」

「今はね、何よりも君に会いたがっている数多の子達がいるんだ。あまり焦らすのは可哀想だろう?」

そう言って、私を一つの部屋に促した。ほっそりとした廊下を左に曲がると、息を飲む光景が広がっている。

壁一面が黄金の屏風、美人画。贅の限りを尽くした一間に、数多の人形達が飾られていた。この世界は平安京を模したものだろうか? 五重塔、寝殿造が配置され、前には大きな川も流れている。そして多くの雛人形達は傘を持ち、神輿を持ち、何やら宴を行っているようだった。

「……っ」

「どうだい? 君が話していた光景だろう?」

今にも動き出しそうな精巧なその世界は、私の脳裏で動き出す。神輿を担ぎ、傘を踊らせ、そうして幾重もの声で私を歓迎する。おかえり。待っていた。と。

「有難う……御座います。これです。見たかったものは」

私が目に見たのはこの世界線でした。

人生なんて一夜の夢ですし、夢は何時か覚めますし。

でも別に、探しちゃ行けない訳でも、縁がない訳でもありません。


骨董品屋の店主、何度か来てそうなんですよね。

古美術が好きだし、物の声も聞けるから、呼んで欲しいとも何度か言われたと思います。

だから初っ端声掛けてそうな。


今度は映画で見たいです。天秤が可愛いんですよ。

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