旅路
「今日はこの辺で野営するかぁ」
そう言って俺は近くにあった座りやすそうな岩に座り込んだ。
今は、エルザス共和国に向かうと決めたあの時から4日ほど経ったところだ
あの時は手がかりをようやく見つけた喜びから突発的に旅を決意し、行動にしたが…今思うともう少し慎重に判断するべきだったとほんのり反省している
盗賊やモンスターといった、命を狙ってくる奴らがいるというのに俺はどうして突発的に行動してしまったんだ…せめて仲間の1人でもいたら心強かったが……
まあ、今更くよくよしていた所で仕方がない、事は既に起こしたし、進むしかないんだ。
「とりあえず飯でも食うか」
こういう時は飯だ、飯は老若男女、それこそモンスターであっても好きなものだ
なにか美味いものでも食って気力を養わないとやってられないからな
「…とは言っても、旅の飯なんか硬いパンか干し肉くらいしかないんだけどな…」
*
あれから歩き続け、もう少しで一先ずの目的地であるロレヌという都市に着きそうという所まで来た
だがしかし、ここで問題が起きた。
道の端にある草陰などに8匹ほどのゴブリンがいるのだ
これはどうしたものか、と考えてはみるがあまり良い案が思い浮かばない。
もしゴブリンが1匹か2匹程度なら、倒すか逃げるかで行けるが、5匹となるとそうも行かない。
ゴブリンは知恵を持たないとされる下級モンスターではあるが、奴らだけは下級モンスターの中で珍しく集団行動が出来るほどの知恵がある
そのせいで、たとえ戦ったり逃げたとしても、俺みたいな大して強くない人間は人海戦術でやられてしまう。
「とりあえず様子見するしかないな。」
そう思い、近くの木に上ってそこから偵察する事にした
もし隙があればそこを縫って逃げるつもりだし、無理そうなら近くを通るであろう戦える者を見つけて協力を願うつもりだ
――あれから2時間ほど経ったが、奴らは中々持ち場を離れようとしないし、通りすがりの人も中々現れない。
だが、これはもうお手上げかな。と思っていた所で運良く人が来たのだ
それも中々ガタイが良く、恐らく冒険者と思われる頼もしそうな男だった
「このチャンスを逃すわけにはいかねぇな」
そう思い、急いでその男に声をかけた
「おい!そこの人!」
「…?なんだ、俺の事か?」
「君の事だ!唐突に悪いんだが、ちょっと困ってるんだ、助けてくれないか?」
「本当に唐突だな、まあいい。困ってる事ってのはなんだ?俺は冒険者だからな、報酬と事によっちゃ助けてもいいぞ」
報酬か…今の俺の懐では大した額は出せないが、少しは無理をしないと一生ここで立ち往生する事になるから仕方ないな
「すぐそこの道に8匹くらいのゴブリンがいて通れないんだ。それをなんとかしたいんだが、俺一人の力では難しい、だから協力してくれないか?」
「分かった、良いぜ。だが報酬はいくら出すつもりだ?」
「報酬か…生憎今の手持ちに余裕がなくてな。少ないが、金と討伐したゴブリンの魔石は全て君の物でいい、これでどうだ?」
「魔石か、魔石ならたとえ下級モンスターでもそこそこの値になるだろうし、それで手を貸そう」
彼はそういい、手を俺に差し出し握手をしてきた。
*
「今から共に戦うんだ、まずはお互い軽い自己紹介をしないか?」
「いいぜ、俺の名前はダブレだ。冒険者で役職は戦士をしている」
俺は戦士と聞き、喜んだ。
なぜなら俺は近接戦は苦手で弓やちょっとした魔法を撃つ方が得意な遠距離型だからだ。
「戦士か!それは心強いな!俺の名前はグデリだ、訳あって旅をしている。俺は弓や魔法による遠距離攻撃が得意だ。よろしく頼む」
「おう、よろしくな」
「じゃあ自己紹介も終わったとこだし、早速戦術を考えようぜ」
「あぁ、そうだな」
「俺としては、戦士である俺が引き付け役をするからその内にグデリが攻撃するのが良いと思っているんだが、どうだ?」
「一般的な戦法だな、それで行こう」
そう言い、俺達は少しの会話をした後ゴブリンのいる場所へとゆっくりと進み、ゴブリンを奇襲するのに良さげな場所を探し始めた。
「おいグデリ、ここなんかいいんじゃないか?」
そういい、タブレは後ろがほどよく草木が生い茂っていて、後ろがちょっとした獣道のような所の前にある木を指さしてきた
「お、確かにここなら影から忍び寄りやすいし、逃げる時も安心だな」
「だろ?かここからならいくら相手が8匹とはいえやれるだろう」
「あぁ、そうだな。ここからなら弓も撃ちやすいし好条件た。じゃあ、準備して配置につくか」
「わかったぜ、俺はいつでも行けるから準備が出来たら言ってくれ」
そういい、俺は弓の準備をした――