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つららの進化です。


「ひやっ!?、つめたっ?」


うとうとしていたぼくの頭にヒヤリとした水が落ちてきた。

何事かと目を開けてみれば頭上にはつららが。


「え……」


つららが浮いていた。

「いやいやいや。…つららが浮いてる!?」

浮いていた。

そして二股になったつららの先っぽから水滴がたれ、ぼくに落ちてくる。

「冷たい?!」

あぁ。あやうく寝てしまうところだった。もし寝てしまったら自力で動けないつららは溶けて死んでしまっていただろう。浮けてよかったー

とか考えている暇もなく。

「つららが!」

もう何度目かになるかわからない驚きの声を上げた。

「―」

じっと見つめているとつららのぼくを見下ろす目と視線があった。

「……つらら?、目が…」

「―」

口はない。けれど目ができている。つららの一番太い部分が少し丸みを帯び、そこに目ができている。そして一番細い下の部分が二股になり、出来の悪い人型のような形に変形していた。

「……進化、した」

おそらくはそうだ。

これほど形状に違いがあるのであれば、これは進化だろう。魔力の特訓でつららは魔力を扱える進化体へと進化したのだ。浮かぶことができるのもそのせいかもしれない。”魔力”によって浮かぶ術を得たのだ。

「つらら、ステータス」




個体 雪わらし

種族 妖


筋力 3

耐久 5

器用 4 

感覚 4

知力 3

魔力 10

魅力 8

速度 3


氷無効


・雪凍術《一閃》

・雪凍術《六花》


固有

《浮遊》



「……だいぶ変わったな」

まず、個体が『つらら女』から『雪わらし』に変わった。”わらし”って確か子供のことだよね。女と言いつつただのつららだったころよりもより人型が強くなったということだろうか。

それでも目と頭と足くらいの区分しかないが。


ステータスは軒並み3くらいずつ増えている。人の赤ん坊程度にはなったようだ。まぁ魔力だけは特訓の成果か、高いけれど。

「速度が付いたってことはやっぱり動けるようになったってことなのかな」

前は速度0だったのでいっさい動けなかった。それを思えば急成長である。


氷が無効になった。

前は氷耐性50だったので、50増えて100になり無効に昇華されたようだ。…無効だからなんだという感じだ。もとから氷無効みたいなものだろうと。


スキルが増えて、変わった。

まず『冷凍術』だった部分が『雪凍術』になっている。違いはわからないが、《一閃》のスキル説明にも変化がある。


・雪凍術《一閃》 <武器攻撃に威力400%の氷属性を追加する。使用後に武器は破砕される。>


威力が100%増えた。でも武器が壊れるのはそのままらしい。そこの部分をなんとかしてほしかったのに!

まぁしかたない。

このスキルは変わらずに使わないままにしておこう。

そして新しいスキルだ。


・雪凍術《六花》 <防具に30s時間の400%の物理耐性障壁を追加する。6度の使用後に防具は破砕される。>


回数制限のある物理防御スキルだった。

400%というのがよくわからないが、4倍くらい硬くなるっぽい。たぶんすっごく硬い。すごい。

「6回か。微妙なところだなぁ。30秒間硬いのかもしれないけど、つららのサイズで何ができるんだろうか」

矢を弾き返せるくらいだろう。

とりあえずこの二つのスキルで攻防を補えということらしい。正直どちらも制限のあるスキルで使い勝手は悪い。


そして最後、固有スキルだ。


《浮遊》 <要魔値。自身を浮遊することができる。装備を/10軽くすることができる。>


浮かべるようになりました。

つららがふわふわ空中に浮いている。動いている。

今まで転がることができなかったのに、自分の意志で浮かび、動けるようになっていた。

「つらら…ようやくだ。よくやったよ、よくやったよつらら~」

ぼくはチロッと泣いてしまう。

ずっと精霊なんていなかったとさえ思うくらい、意味のわからない使い魔だったのだ。それがこうして話を聞いてくれて、少し泣いたぼくを心配して寄り添ってくれるようにまでなったのだ。冷たいけど。

これほどのことをうれしくないはずがない。

「よかった。よかったねつらら~」

ぼくの赤点も回避できるので良かった。




次の日、ぼくはさっそくつららを友人たちに自慢していた。


「見てみて~、召喚『つらら』!」

呼び出されたつららは地面に落ちることなくふよふよとぼくの目の前を浮遊している。

「おお、つらら君が飛んでいる!」

「グーグ、つららが飛べるようになったのね!」

「まぁ、浮かべるだけだけどねっ。姿もちょっと変わったんだ♪」

「ほお、これは進化したということであるか?」

「え、進化なの?。すごいわねっ」

「スキルも増えたんだよ。硬くなるんだっ。つらら、スイル《六花》!」

つららはうっすら白く輝くとスキルを発動させた。

「どうっ!」

「わからないわ!」

「つついて確かめればよいのだろうか」

「……どうなんだろう。あ、いや。違うかも。『防具に400%の物理耐性障壁を追加する』ってあるから、防具を装備してないとダメかも」

今更スキルの仕様を理解するぼくであった。

調子に乗って使ってしまったが、つららの身体が防具判定でないことを祈りたい。こんなことであと5回使ったらつららが死ぬことになってしまうので。

「防具、であるか」

「うん。つらら用の防具を作らないとだめっぽい」

「……ひっかかるところ、ほとんどないわよね。唯一…首っぽいとこかしら」

今のつららは前のまっすぐなつららから頭っぽい部分と二股の足?ができた形状である。防具を装備させようにも持たせることも履かせることもできないのだ。

「頭にのせるか首?にかけるしかないか…」

「―」

つららもそうだと言っているように思える。

しかしつららのサイズだと完全な専用装備が必要になるな。

もらった黒鉄素材は自分たちの装備に使ってしまった。硬くするならどこかで黒鉄を手に入れてくるしかない。


「……そういやオーダーメイド品って《鍛冶》でどこまで作れるんだろう…」

簡単な形状のものは言葉にするだけで作れる。手袋であれば「手袋」というだけで平均的で一般的な手袋ができあがる。

しかしつらら用となると《鍛冶》では作れないかもしれない。

ある程度の形状まででもいいので指定することができないだろうか。

「うーん…製図してみるかな」


「なんだグーグ、お前の使い魔がようやく使えるようになったのか。それで何ができるのだ?」

教室の扉を開けてそういったのはガードナーだ。

「おはよう、クラスメイトの魔王バグラハウラの人。意思の疎通ができるようになってできることが一気に広がったんだよ」

「待て待て、魔王呼びはやめてくれ」

「そうだっけ?、ぼくはクラスメイト扱いになったんじゃないっけ」

友人は名前で呼ぶぼくである。今決めたが。

「……勇者候補の手下や恋人になったらではなかったか?。昨日の呼び出しはどうだったのだ?」

「うちのパーティーに入りたいって言ってたけど断ったよ」

「ならまだ友達ではないか」

こんなすぐに手のひらを返しそうな友達は嫌だなぁと思うのだが、まぁ魔王呼びは許してやろうとも思う。

ぼくのせいで「事故」が起きては寝覚めが悪いので。


「ふむ。飛べて、硬くなれるだけか。……まぁ、成長したのではないか?」

明らかに言葉を選んだ様子のガードナーである。

攻撃手段がなく、小さな体で硬くなるだけだなどと…確かにモルラビの方が戦闘で有利なのだろう。

せつなくなんかない。

「くそう…いまにもっと強く成長するんだからね!」

「ふん。期待しておこう」

うすら笑いを浮かべて自分の席につくガードナーを、ぼくは悔し涙でにらんでおく。

涙は冗談だけども、うん。きっとつららなら成長できるはずである。


「大丈夫よ。一度の進化でこんなに姿が変わる魔物は見たことがないわ。期待できるわよ」

「ありがとうアメリア。でも魔物じゃないんだ…」

ぼくも魔物のことなら知識があるんだが、精霊となるとさっぱりだ。ましてや妖怪ともなれば知っている人物を探すことさえ困難なのである。

「もう一回くらい進化を残してるといいんだけど…」

一度の進化でスキルを二個取得できたのだ。もう一回くらい進化すると戦えるようになるかもしれない。

「がんばろうね、つらら」

「―」

つららはぼくの心配をよそに楽し気であった。


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