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伊達な伊達メガネの作成を試みます。


探索日でない日の放課後がきた。

ぼくはその日、本格的につららのスキルをどうにかしようと図書館で本をあさりに来ていた。


その日の午後の剣術の選択授業でぼくは《鉄壁》のスキルを習得していた。



盾術《鉄壁アイアンウォール》 <15s時間の盾の耐久に練度/2を追加する。>



15秒と短い効果だが、短時間で終わる戦闘なら十分だし、それに《盾打》の発展スキルに盾で攻撃できるスキルがある。その時の威力には盾の耐久値が加算されるらしいので意味がある。

まぁ単純に盾が硬くなるので便利なスキルだ。


こうしてぼくがスキルを覚えられたのだし、つららも…と期待する気持ちがあった。

つららの魔力はあれから微増している。なので魔術の特訓をしていてくれているようではあったが、まだ魔術スキルは発現していない。

なのでどうにかならないものかと図書館にきてみたのだけれど。


「うん。本がいっぱいだ」


知能の低い感想しか出なかった。

そもそも無機物?に魔術を覚えさせようと言うのが無茶なのか、そういったことを研究している本なんかこんな場所に置かれているわけがない。専門書、しかも必要性の薄い部類の専門書だ。きっと研究機関のさらに人気のない棚あたりにならあるかもしれないレベルだろう。

「うーん…ツンだ」

詰みです。

期末試験には間に合わなさそうだ。


「グーグ君?」

「あ、ユベル君。相変わらず本の虫だね。ダンジョンに行ってる所を見たことがないよ」

メガネ男子のユベル君である。彼とは一度も北のダンジョンで会ったことが無かった。

「ちょっとは行ってるよ。東のダンジョンだけどね」

「そっか」

そういえば彼は放課後の北のダンジョン攻略要請の話のときにはいなかった。学園長のお眼鏡に適わなかった6人のうちの一人だ。

「何か探し物かい?」

ぼくはユベル君に使い魔のことを相談することにした。

彼はこの図書館の本をかなり読んでいるらしく知識が豊富である。ぼくが一から本を探すより彼の記憶に頼った方がなんぼか楽できそうだ。


「うーん…動かない使い魔に魔術を、ねぇ…。そもそもとして、その”妖”って種族は魔術が使えるのかな?」

妖のことは良くわかっていないが、教師のカガスミが妖らしいので魔術は使えるんじゃないかと思っている。後でいろいろ聞いてみようと思う。

「ならいいか。そうだ、あとは練習でも魔素を消費するんじゃないかな。魔術は体内の魔素の流れを意識して動かす必要があるからね。運動する時みたいに魔素を動かす器官が疲れてしまうと思うんだ」

魔素は魔力の値によって総量がきまると言われている。が、魔術の習得訓練に魔素が使われているかはよくわかっていない。疲れるから使っているのだろう、ということが言われているが。

「魔素を使うのか。うーん、ならもっと訓練させるには魔素を供給してあげればいいのかな」

「たぶんね。魔素ポーションをたらしながら訓練させればいいんじゃないかな」

あれは回復ポーションよりも値段が高い。魔素はダンジョンから吸収して魔素ポーションに返還することができるのだが、ここ迷宮都市のダンジョンは特別仕様なのかダンジョン壁から魔素が吸収できないようになっていた。

なので供給源よりも消費者の多いアイテムなのだ。

「…しかたないか。覚えるまでの出費だね。ありがとう、しばらくそれでやってみることにするよ」

ぼくはユベル君にお礼を言ってさっそく買い物に行こうと思い立つ。ふと、彼のメガネを見て一つ思い出したことがあった。

「そうだ、ユベル君、お礼ってわけじゃないんだけど実は『伊達メガネ』ってアイテムがあるんだ。良ければ使わない?」

ノーラからもらったアイテムに『伊達メガネ』というネタ装備がある。使い道がないのでユベル君にあげることにした。よくメガネがずり落ちていたので。

「いや、伊達メガネって度の入っていないメガネだよね?。もらっても仕方ないんだけど…レンズを変えればいいのかな」

「あぁ、メガネってそういう感じなのか」

メガネ理解の低いぼくは度というものが必要だと知らなかった。

とりあえず彼にマジックバッグから取り出した『伊達メガネ』を見せてみる。

「形は普通のメガネだね…。《鑑定》あぁ、でも効果に知力+1ってあるからこれ、度を入れると効果消えちゃうかもなぁ…」

「え、待って、今何したの?」

「うん?、鑑定のこと?。ボクは《鑑定眼》があるからね、鑑定できるんだよ」

鑑定持ちがいた!

冒険者ギルドでも鑑定してもらえるが、あちらは頼むとどんなアイテムでも一回500Gかかる。パンなら50個分だ。なので無料でやってもらえないか、クラスメイトに鑑定持ちがいないか探していたのだ。

「ユベル君。ぼくのパーティーメンバーになってよ!」

「え、いや。もうパーティーがあるからそれはちょっと困るかな。でも鑑定がしてほしいってことだと思うんだけど、それなら言ってくれればしてあげるよ」

神がいた。

「ありがとう!君のような友達をずっと探していたんだ!パーティーが組めないのは悲しいけど…ぼくのスキルはアイテムとか作ったり改造したりするのに長けたスキルがあるんだ。で、いろんなアイテムの効果が知りたいんだけど…」

ぼくはそう言いながらよくわからないアイテムをいろいろ取り出して見せた。

「へぇ、いいよ。目が疲れないくらいの分なら鑑定してあげるよ。まずはこれからかな」

そうして彼に次々とアイテムを観てもらった。


壁にくっつく板 

転がる石

湿ったスポンジ

消えるノート


「……ええと…ほとんどそのままだよ。ゴミじゃないのかな」

師匠からもらった意味不明アイテムはやはりゴミだった。ただノートは勉強するときに暗記するのに役立っていたが。

「あぁ、スポンジはカビが生えないなら掃除や野菜の種の栽培に使えそうだね。ただ、やっぱりあまり衛生的には思えないけど…」

次に本命であるダンジョン産のいらないアイテムを見せる。


ジェル

うさぎのしっぽ

『幸運の』うさぎのしっぽ

狼の牙

毒の牙

ヘビのぬけがら

ガマの油

巻物

黒鉄

気合ハチマキ


宝箱から出た指輪も観てほしかったが、今はアメリアが装備している。機会があればお願いしよう。


「ジェルとぬけがらは薬の材料かな。黒鉄は鍛冶の材料。針は裁縫に使える。油は回復アイテムらしいけど、効果が低いみたいだね。牙は薬や鍛冶で使えるみたい。巻物はこれに何か属性を付けると別のアイテムになるみたいだね。ハチマキには筋力+1の効果があるよ。しっぽには幸運+1、幸運のしっぽには幸運+2の効果があるみたいだね」

おお、やっぱり幸運はあったのか。しかも効果がきちんと倍になっているようだ。

今度みんなの分も作っておこうと決めた。

「それより…属性を付けると別のアイテムになる?」

「うん。この”巻物”ってアイテム。面白いね」


ぼくはユベル君に断って鉄鎚を取り出し、その場で付与をしはじめた。

「マジックバッグいいなぁ…売ってるけど高いよね…」

希少なアイテムだと思われていたマジックバッグだが、冒険者の多くは当たり前のように持っていた。

ダンジョンに潜り、もどって来るためにはほとんど必須のアイテムというわけで、マジックバッグ自体はよく見かけるアイテムになっていた。

その容量はいろいろだろうけども。


「……できたよ。鑑定してみて」

ユベル君はぼくの作った火属性の巻物を鑑定眼で確認していた。


「名前が変わってるね、『火遁の巻物』。敵に「火遁の術」を放つことができる。魔術の一種かな?」

「おー。ダンジョンで使ってみないとわからないけど、すごそうだね。《火炎弾》より強ければいいんだけどなぁ。…使った素材の値段的に」

火炎竜のウロコは高額だが、巻物は低階層のレアドロップだ。そう考えるとそんなに強いアイテムではないかもしれない。

「うん。後で使った感想を教えてね。それにしてもグーグ君のスキルは面白いなぁ。そこの失敗したってアイテムは『焔』の石だし、『幸運の』うさぎのしっぽも興味深い効果だったし。ねぇグーグ君。伊達メガネから知力を取り出して伊達メガネに付与できたら、勉強がはかどると思うよ」

なるほど。『伊達な』伊達メガネとか作って装備しながら勉強すればぐんぐん知識を吸収できるかもしれないのか。

「それは期末試験の勉強によさそうだね。…しかも売れそうだ」

「ふふ、そうだね」

ユベルの協力のおかげでいろいろと前進している気がする。


その後ぼくはユベル君とわかれ、職員室の狐教師に顔を見せたあと魔道具店にポーションを買いに向かった。

魔素ポーションを何本か購入して帰途についた。





夕食後つららを呼び出して魔術の習得訓練をさせてみる。

と言ってもいっさい様子のかわらないつららを見ているだけだ。

たまに魔素ポーションをたらし、融けてきたら返還して再召喚する。

「……ポーション効果あるのかなぁ…?」

使われているかわからない。

つららを召喚している皿には魔素ポーションがうっすらと貯まりはじめている。

ぼくは魔素ポーションを全部コップに出し、つららごと皿の上の物を全部コップに流し入れた。

つららが沈んだ後ポーションの中で浮かぶ。

カクテルをかき混ぜるマドラーのようだった。

しばらく見ているとポーションが一気に3ミリくらい減る。どうやら魔素を補充したようである。

きちんとつららが訓練していることが目に見えてわかり、うれしくなる。

「よし、がんばれつらら。その調子だ」


たまに還して呼んでしつつ、ぼくは他の作業をすることにした。

『伊達』伊達メガネの作成である。

「…………あ」

始めようと道具を出したところで思い出した。

伊達メガネにはろくな『属性』が無かったのだ。

確か伊達メガネから保存できるのは『黒色の』だけだった。

世の中そんなに甘くないらしい。


仕方ないので自室の掃除でもすることにする。こんなことでも《掃除》の練度は増えるのだ。



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