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飼育小屋に行ってみます。



「え?、ブララと?」


驚いたような声をあげたのは女子パーティーのリーダーである元魔王ピーティッティこと、リアラだ。

おととい授業でいっしょのパーティーを組んでいたことを知っているであろう彼女は、まるで初めて聞いたことのように驚いていた。

(女子って怖い…)

昨日からブララことノーラを正式にパーティーに借り受けいっしょにダンジョン探索をしていることを告げたのだ。


「ふーん。グーグ君ってああいうタイプが好きなんだ?」

「タイプ?、う、うん。盾使いは好きだよ。守ってくれるし、それに兵士や騎士って大体盾使ってる感じだよね?。かっこよくない?」

「あー、ね?わかるー」

わかっていないような顔で同意された。

盾職の兵士や騎士なんかは単独ではなく、多人数の前衛なんかに起用される職類だ。

鎧騎士アーマーナイト

守護騎士ガーディアンナイト

そんな呼び名で国に仕えている立派なものたちなのだ。

それが、ダンジョンの浅層で役に立たなかったからとつまはじきにするのは視野がせまいと言わざるをえない。

グーグが魔王だったころでさえ盾職はやっかいな存在だったというのにだ。

(でも言っても理解してもらうのは難しそう…怖いし)

リアラは火力職を起用してサクサクダンジョンを進むのが好きなようで、パーティーメンバーにも火力のある使い魔を集めさせている。

そんな彼女に守りの大切さを説いても右から左だろう。

だから何も言わないことにした。


「それで…彼女の部屋に保管してあるいらないドロップ品をいくつか使っていいかな。ぼくもうさぎのしっぽがほしいんだ」

「しっぽ?ふうん?」

リアラはアメリアのポシェットに付けられている白いうさぎのしっぽに目を向ける。ぼくのパーティーがようやくそのレベルの装備品に手を付け始めたのに気が付いたのだろう。

「うん。いいよ。てゆうか、それはいらないやつだから好きにしていいわよ。グーグ君とブララが売りたいなら売ってもいいと思うなぁ。重いけど。うん。好きにして」

かわいそうな者を見る目を向けつつ、許可をくれる。

まぁね。彼女からすればそこは大分前に通った道ですでに次の段階に進んでいるのだ。今更そんな物必要ないということだろう。

「で、でも売ったお金って…」

「あたしらはいいよー。そもそも売れないようなのしか残ってないから。売れても店に運ぶのが大変なのとかばっかりだしね」

重くて売りに行くのが大変ってどんな物だろうか。そんなのを自室まで運ばされていたノーラの苦労を思うとかわいそうになる。

「ありがとうっ、助かるよ!」

ぼくはそうお礼をいってそそくさとその場を離れるのだった。







自分用の『幸運の』うさぎのしっぽを作ってほくほくしていたぼくをアメリアが呼び止めた。


「まってグーグっ、今日暇よね?」

今日は探索をしない日である。本来であればアメリアは実家の系列店へバイトをしに行く日だ。

「予定はないけど…どうしたの?」

「今日はわたしも休みなのよ。だから飼育小屋に行かない?」

飼育小屋は生徒の使い魔を預けておく場所だ。

召喚系のスキルではない支配系のスキルを持った生徒たちはここに使い魔を預け、探索に行く時に連れ出していくのである。

「そういえば前に何か行く用事があったような、なかったような…」


集団暴走スタンピードの時だ。アクアキマイラに土嚢をかぶせた火炎竜の活躍に、アメリアにベルフルーラにもお礼を言っておいて、と言うと自分でいいなさい、と断られたのだ。

お礼を言いに行くついでに飼育小屋に行ってみようと思っていたのだ。

とはいえ、お礼的なものは別の日にしてある。なのであとは飼育小屋の見学みたなものだけだ。

「いいよ、行こう。アメリア、案内よろしくね」



飼育小屋は馬小屋に近い。

それぞれの魔物ごとに部屋がわかれているが、樹の棒が一本横にかけられているだけで割と自由に出入りできる。

もちろん捕食されそうな魔物は保護するために鉄柵のついた部屋に入れられているが、そうでないものは喧嘩しないようにいくつかのグループに分けられて飼育されていた。


「おじさんこんにちはーっ、今日は見せてもらうわね!」

手足に革製の防具を付けた妙齢の飼育員に声をかけながら慣れた様子でアメリアが小屋のある敷地に入っていく。

色々な匂いが風にのって流れてくる。

「キースのグールだ…」

一部強い腐食臭がしていた。

他にもコカリオ、ヒュージスライム、ファントム、大えりまきなんかがいて、こちらを観察している。

部屋の半分くらいは空き部屋だ。今日の探索に連れ出されているようだ。


「ベルフルーラ、きたわよっ。今日はグーグもいっしょよっ」

アメリアが顔を出すとベルフルーラは彼女の胸に顔をこすりつけ甘えた声をあげる。

一番大きな部屋に入れられているが部屋的にはまだ余裕があるようだ。

(でも将来的には部屋に入らなさそうだなぁ)

グーグの知っている火炎竜の成体の大きさから考えるとこの部屋では高さが足りない。

まだ子供だからなんとかなっている部分があった。

「こんにちはベルフルーラ。こうしてじっくり見ると始めて見たときより若干大きくなってるよね」

竜は長い生のためか成長は他の生物の子供よりも遅い。が、それでもやはり子供なのでそれなりの成長速度をしていた。

人間の頭一つ分くらい高さが増えている気がする。

「そうね。ベルフルーラは成長してるわね。この間わたしとノーラを乗せてもふらつかなかったものね」

アメリアがベルフルーラにのっている場面はあまり見ないが、やはりその体躯の大きさから人を乗せることも可能だった。けれどアメリアは火炎竜をそういった便利な道具扱いするのを嫌がる傾向があるようで、どうしてもという場面でしか背にのらないようだった。

「そうだ。ベルフルーラ、アクアキマイラのときはありがとうね。今日は改めてお礼にきたんだ」

「クルル?」

首をかしげる火炎竜にグーグは持っていたマジックバッグからかたまり肉を取り出して捧げた。

「お礼っ、ベルフルーラ、食べてくれる?」

「クー♪」

うれしそうに肉を食べ始めた火炎竜の様子を若干こわごわと眺めながら、グーグはアメリアが部屋の掃除を始めたのを見て手伝いを申し出る。

「ならそこの手押し車を持ってきて。この後洗い掃除だから水桶もお願い」

汚れた飼葉を取り換えるようでグーグはそれを入れるための手押し車を持ってくる。そして所定の場所に持っていき、何度かそれを繰り返しながら水をいれた水桶も持って行ってあげた。


「……ねぇグーグ、リアラと何かあった?」

「え、何もないよ。ノーラの部屋の使わない物の処分をしていいって許可もらったくらい」

今朝、リアラと会話している所をアメリアも見て心配したようだ。

前みたくぼくが色香で迫られてやしないかと探りを入れているらしい。

「ふーん。…リアラみたいな女子ってどう思う?」

「や、別に…どっちかっていうと苦手かな。女子ってだけで苦手だし、そのうえ男の弱いところを突いて来ようとするし。ぼくはアメリアみたいなさっぱりした子とかノーラみたく引き気味な子のほうが話しやすくていいよ」

ただしノーラは内面に何か抱えてそうだった。

今の所それは自分の使い魔にしか向けられていない。こっちに向けられないことを祈ろう。

「そ、そうっ!、ふ、ふーん。わたしの方がいいわけね」

「そうだね」

アメリアは最初のころはいつも怒っているようで怖かったが、それは人づきあいが苦手でいろいろな感情を隠すための方法だと言うことがわかってきてからは怖くなくなった。

まだたまに突然怒りだして困惑させられるが、それでも彼女が良い人物であることがわかっているので気にならない。

アメリアはいい子だと思う。

「ふふっ」


上機嫌になった彼女は火炎竜の体洗いも楽しそうに進めていく。

柔らかくなさそうなブラシでゴシゴシ体を洗われている火炎竜からは何かいろいろな物が落とされ、きれいなつるつるウロコが現れていた。



リアラの話題が出たついでにぼくも聞いてみたいことがあった。

「ねぇ、アメリアはリアラのパーティーに行ったりはしないの?」

「……どういう意味かしら」

少し声のトーン低かった。

「あ、あわ、いや、アメリアに行ってほしいってことじゃなくて。うちのパーティーだといつまでも浅層をぐるぐるしてそうだし、ダンジョン探索に積極的っぽいアメリアならぼくらよりも女子パーティーのほうがいいかなって」

ぼくとセビと、アメリアとベルフルーラの戦力には大分開きがある。ぼくらのせいでアメリアの足を引っ張ってしまっているのは申し訳なく思っている。

ダンジョンに潜るとステータスが成長しやすい。それは深層であれば深層であるほど顕著だと言われている。

ぼくらといっしょでは彼女たちの成長が遅くなってしまう。

「ふんっ、気にしないでいいわよ。冒険者としてやっていくつもりなら別だけど、わたしは将来商人になるだろうしね。それに…今はベルフルーラだけだけど、私のスキルで仲間にできるのは”幼獣”だけなのよ。”幼獣”を連れて深層なんていけやしないわ」

アメリアのスキルは《幼獣支配》という幼獣にしか効果の無い支配系のスキルだ。そのスキルで仲間にした魔物は育てなければいけない。

子供から大人へ。

そして大人になると支配が途切れ、アメリアの元を去っていくのだという。

期間限定の支配スキルなのだ。

そんなスキルでは深層の魔物とは戦えない。恐ろしい成獣たちに対して、成長途中の子供を立ち向かわせなくてはいけなくなってしまう。

根が優しいアメリアには、それはできない選択らしかった。

「だから、グーグたちのところがちょうどいいわ」

ほどほどに戦い、ほどほどにしか潜らない。

それが合っているのだと彼女は言う。


ちょこちょこ会話しながら洗い終わるのを待つと、道具を片し終わったアメリアから「これ、持っていきなさいよ」と大量の何かを渡された。

「ん?え?これ、え?ええっ?」

赤く宝石のように輝きを放つウロコだ。

おそらく火炎竜のウロコ。

「生え替わりの時期なのよ。だからウロコがたくさん出るのよね。売ってもいいんだけど、グーグなら何か役に立ててくれそうだから、あげるわっ」

そう言って腕でかかえきれないほどのウロコを押し付けてくる。

しかもアメリアのポシェットもマジックバックだったらしく、そこからも大量のウロコを出してぼくにくれる。

「わ、あ…ありがとう。うれしい、うれしいよ。でも多すぎない?火炎竜のウロコってかなり高価な素材だった気がするんだけどっ!」

師匠の元で錬金術師をしていたので素材の値段はある程度知っていた。確か竜関係の素材はどれも最低金額で1万Gをくだらないはずである。

「いいわよ。売られるとちょっとあれだけど、使うなら好きにしなさい。それに私のためにも使ってくれるんでしょう?。グーグに面白い付与してもらうの、楽しみにしてるわねっ」

「う、うん。ありがとう…がんばって面白い『保存』探してみる…」

そうしてまたぼくはアメリアに借りができていくのだった。



「そういえばグーグ、あなた幼馴染を探してるのよね?」

「うん?そうだよ。それがどうかした?」

アメリアとセビはぼくが村で過ごしていたころの幼馴染を探しているのを知っている。

北の学園の入学者一覧に名前だけあったという幼馴染の消息を探すために、今はこの迷宮都市でお金を稼ごうと奮起しているところである。


「その子って女の子だっけ?」

「そうだよ。ドワーフの女の子」

「…………」

いつも騒がしいアメリアが何か思案している顔で明後日の方をにらんでいる。

「その子って何歳くらいだったの?」

「ぼくより二つくらい年上だったから…5歳くらい?」

「ふ、ふーん。そう、5歳だったのねっ!」

ほっとした様子がうかがえた。

「うん。それがどうかした?」

「別に、何でもないわよっ」

「……えー」

「ふんっだ!」

最終的にはそっぽを向かれてしまう。

彼女が一体何を確かめたかったのかさっぱりわからないままである。

(はじめに話した時に女の子だって言ったはずなんだけどなぁ)

その時にはあまり重視されていなかったはずだが、何か確認しなきゃいけないことでもあったのだろう。

ともあれ、そっぽを向かれたのでそれ以上追求することはできなかった。


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