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本日の打ち上げです。



その日の探索を終え、ダンジョンを出てきた時に少し時間をもらって話をすることにした。

ダンジョンから少し離れた喫茶店にみんなを連れて入る。

ダンジョンの目の前にも飲食できる店はあるが、そこは使わない。

ダンジョン近くは人気なのか店の品の値段も高いのでぼくたちみたいのは余程のことがなければ使おうとは思わないのだ。

適当なものを頼んで改めて今日のことを振り返る。


「ノーラが入ったことで3階層までは怖いものがなくなったと思う。だから次の中日にはもっと下の階層に行こうと思うんだ」


ノーラは北のダンジョンの先の階層を知っている。なので彼女の意見を聞きつつ下の階層での戦闘経験を積んでいきたいと思っている。

3階層はモールスネークとモルビー、モールウルフの住処である。モルビーとは先日嫌になるくらい戦ったので戦闘経験は足りている。モールスネークはまだ不安があるが。

今日のみんなの動きを見る限り、そのモールスネークも問題はないだろう。


「いいわよ。賛成だわ」

「うむ。問題ないと思うぞ」

「わ、わたしで手伝えるならがんばりますっ」

みんないけると思っていたようで否定的な意見は出なかった。

なのでこれは決定事項として、

「それでね、そのためにみんなの装備をちょっといじらせてほしいんだ。ノーラとセビの装備を」

「わ、わたしですか?」

「ほう、今度はどれを『硬』くするのだ?」

セビの装備は銅の剣と左腕の籠手だけ『硬い』が付いている。

もちろん防御面も足りないが、セビには攻撃面での強化をしようと思う。

「セビの靴に『跳ぶ』を付けようと思うんだ。今のセビの《風刃スラッシュ》は射程が短いからね。火力はあっても届かなきゃ宝の持ち腐れだよ。だから…」

「なるほど。『跳ぶ』ことで距離を縮め、《風刃スラッシュ》を叩きつけろと言うことなのだな」

「うん」

面白そうだと言うことでセビから付与の許可をもらう。


「それで、ノーラは『硬い』だね。皮装備は全部『硬』くしよう」

「は、はい。ありがとうございます」

「あとは…どうしようか。鉄の防具は10階層超えるまで変えなくてもいいと思うけど、安全のために『硬』くしとく?」

一度付与すると変えられないため必要がないなら『属性』の付与はしないままがいいだろう。ゴブリンとの戦いがどれくらい大変なのかわからないが鉄を壊すほどなら『硬い』を付けておいた方がいい。

「あの、他にどんなのが付けられるのですか?」

ノーラはぼくの付与をあまり知らない。女子パーティーには『かわいい』しか付与しなかったし。

「『かわいい』とか『柔らかい』とか『虫っぽい』とか」

「白とか緑とかよね」

「幸運にもできるぞ」

「…………ええと」

柔らかくしたり虫っぽくしたりなんてまったくいらないし、色を変えれるのはこだわりがあるなら便利だが、何も付与でやらなくてもいい。こうしてみるとほとんどろくな防具用の付与が無いことがわかる。


「あの…軽い、なんてものは無いでしょうか?」

「軽い、か」

ノーラは女子パーティーとの動きについて行けなくてハブにされている。

なら装備を軽くできれば少しは改善するのではと考えているようだ。

「まだ見たことないけど…何かから保存できるかもしれないなぁ」

「軽くって何で付けるのよ。布?紙?」

「とりあえず軽石あたりで試してみるかな。紙もいいね。あとは羽とか」

なぜか石ころに信頼を置いているぼくは、中でも軽い石と呼ばれる軽石に着目していた。

他にもいくつか候補があるので後で試してみることにする。


一通り話が終わり、のんびりジュースとつまめるおやつをつつきつつ今日の探索の話なんかをして時間をつぶした。

今日はセビとぼくの新しいスキルについてのことが多かった。

その話がひと段落したころ、ノーラがぼくのスキルについて尋ねてきた。


「…グーグ君のスキルって面白いですね」

面白い。

戦闘面で役立つわけでは無いが、戦闘を補助するには使えるスキルがそろっている。

人数が多く一人の戦力がパーティーの戦力に直結しないような女子グループになら、一人はこういったメンバーがいても問題ないだろう。

けれど流石に女子に囲まれているのはぼくの心臓に悪いので移籍しようとは思わないが。

「どんなことができるのですか?」

「うん?、どんなことって言われても、見ての通り魔物や物品を倒すと『属性』ってのが保存できるんだよ」

倒すというのがあいまいだが、石であれば割れるまで叩き、うさぎのしっぽならへにょへにょになった。

そうすると『属性』が保存されているのだ。

「物から、ですか。ならお店に売っている文具や食器からでも『属性』が保存できるのですよね?」

「まぁ、できるだろうね。でもやってみたけどたいていが『色』と『硬い』か『柔らかい』とかかな。あまり役に立ちそうなものはなかったね。人の手が加えられてるものからはそんなに多くの『属性』が保存できないみたい」

他には『丸い』なんかの形状のものや『臭い』なんかの匂いに関するものがあるくらいだ。

稀に『高価な』とか『色褪せた』なんかもある。

魔物の多彩さに比べると本当になんてことはないものばかりだ。

「それでも、魔物相手ならなにかできそうな気がしますね」

ノーラはぼくをまぶしそうに見つめる。

彼女にとってぼくは中身の入っている宝箱みたいなものなのだろう。


「面白いでしょ。でもグーグはわたしがもらうわっ!」

「あげないよ!」

アメリアがぼくの肩を掴んで自分の方に引き寄せる。彼女が信奉する魔王だったという理由もあるが、今のグーグは出涸らしのグーグである。

過去の栄光とは無縁の存在なのでそのうち目が覚めて塩対応されるのではないかと危惧している。

「セビもノーラも装備を強化してもらえていいわねっ」

「う、うん。セビなんかは実験的にって感じだけどね」


「で、そろそろわたしには?」


アメリアがグーグに顔を寄せながら聞いてくる。

パーティーで一人だけ何も付与されないとなれば言いたくもなるだろう。

まぁ彼女の装備はかなり上物なので手を入れにくくはある。

他の《付与》が付けられなくなるからと、アメリアの装備はずっと変わらないままである。

「…この間『幸運の』うさぎのしっぽ作ったし」

実験でできただけできちんと作ったとは言えない。

「楽しみにしてるわねっ」

しっぽでは許されなかったらしい。


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