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神秘少女隊。


放課後。

この日は探索をしない日だったのだが、ぼくはダンジョン前まで連れ出されていた。

アメリアはぼくを心配しつつバイトに行ってしまい、セビは女子の勢いに負けて途中で帰ってしまっていた。

なので今は女子13人のパーティーと一緒にここにいる。


女子13人グループ

神秘少女隊アルカナクラスタ


…パーティー名らしい。そういえばうちのパーティーに名前は付けてなかったなぁ、と思い出す。

そのうちみんなで検討しようかな、と遠い目をしながら遠くを見つめる。

「グーグ君、しっかりして。とりあえず確認するわよ」

そう言ってパーティーリーダーのリアラが準備に必要なものを確認してくる。

リアラ・アリュード

魔王ピーティッティを名乗る恋愛魔王の女の子である。

彼女はかわいい。流石に恋愛手助けを自任するだけあって女子の中でもあか抜けた感が一番高い。

しかしアルカナとはおそらく運命を占うカードのアルカナだろう。いろいろな役割を持ったカードであるが、そのカードに描かれているどの役割を彼女は担っているつもりなのだろうか。

恋人ラヴァーズ”か、それとも”女帝エンプレス”か。

「グーグ君が『かわいい』を手に入れるには、ダンジョンにいるモルラビをグーグ君が倒さなくちゃいけないのよね。でも倒せたとしても絶対に手に入るわけじゃない。だからモルラビの数がたくさん必要になる。モルラビを捕まえてグーグ君に倒させる。だから私たちはモルラビを倒さず、たくさん捕まえてこなきゃいけない。そういうことよね?」

うなずいた。

「それであってるよ。あ、みんなは『かわいい』を付ける装備や小物を持ってきてる?」

「持ってきてるわ」

「ならいいよ。ダンジョンの中でどんどん『かわいい』を付けていけると思う。あ、でもこれは魔術だから魔素がなくなったらできなくなるからね」

ぼくの魔素が切れてしまえば使えない。休むか回復アイテムを使うしかないだろう。休むならきっと続きは日を改めることになる。

「わかってるわ。それは大丈夫。植物の魔物で近くの相手の魔素をゆっくり回復できる魔物を使役している子がいるから、魔素を回復しながら協力してもらうわよ」

「……」

(こき使われる未来しかみえないっ!)

逃げ出したくなったがこれだけの人数の女子に囲まれて逃げられるはずもなく、ぼくは前後左右をホールドされたままダンジョンに潜らされるのだった。





ぼくはただ女子パーティーが狩ってくるモルラビを殴る作業をしていた。

モルラビを殴り『かわいい』が保存できればそれを彼女たちの求めるモノに付与していく。

『かわいい』以外なら石ころに付与して捨てる。

ちなみにおまけで実験してみたが、一度『』付きの属性を付与したアイテムに別の『属性』は付与できないようだった。

モルラビから保存できる『属性』は『かわいい』と『白色の』と『跳ぶ』だ。『白色の』が付いた石ころに『跳ぶ』をつけることはできなかった。『跳ぶ』が付いた石ころにも『白色の』を付けることはできない。

それからもう一つ。『属性』を付与したアイテムから付与した『属性』を保存することはできなかった。

『白い』石ころからは『白い』を保存することはできない。


こんなのがわかったのも、結局ずっと《保存》と《付与》をやらされているからでもあるのだが。

ぼくの傍らには一つの植物がうわっていた。

”マジックマッシュルーム”

まるまるとしたただのキノコなのだが、実はこれ、立派な魔物である。

魔物とは体内に魔石を持ち、魔素を吸収して育つものが魔物と呼ばれている。

そしてこの植物、マジックマッシュルームは自然の中にあふれる魔素を吸収し、再び大気に放出する。

放出された魔素は魔素ポーションと同じような効果をもたらしてくれる。放出された大気を取り込んだモノの魔素を回復するのである。

”キノコの中に魔素を吸収する魔石がある”このせいで本来全く動かず人の脅威にならないキノコではあるが、分類上は魔物ということになっている。

魔物だから魔獣支配や魔物召喚で使い魔にできるということだろう。


それがぼくのそばに3本ほど生やされ、消費した魔素をゆっくりと回復させているのである。

「グーグ君。次がきたわよ。次は4匹。まだまだいける?」

「うん、魔素は大丈夫…でもこのパーティーはすごいね。次から次にモルラビが送られてくるよ…」

10分で6~10匹くらい狩ってくる。薬草採集もしてるとはいえ、ぼくらのパーティーの倍以上の効率だった。

「ふふん、すごいでしょ?。サリージャたちが強いからね。どんどん倒してくれるのよ」

サリージャと言うのは女子グループのイケイケメンバーである。


この女子13人パーティーにはパーティー内にさらに三つのグループが存在する。

サリージャのいる、イケイケ女子による高火力グループ。

リアラのいるバランス、補助グループ。

あとはおとなしめの女子の集まった後方担当グループだ。


今はイケイケ高火力グループが弱らせた魔物をそれ以外のみんなで捕まえ連れてきていた。

「この階層なんてもう余裕そうだよね…と、出たよ。『かわいい』が保存できた」

女子たちの装備はほとんどが鉄装備だ。機動力や火力を優先しているからか軽装だが、すでに5階層でレア種狩りをしている彼女たちにとっては1階層の敵なんて雑魚でしかないのだろう。

「ほい、グーグ君。今度はこのぬいぐるみにお願い」

「はいよ。《付与》」

カチコンと鉄鎚を振り下ろし、腕に持つのにちょうどよさそうなサイズのぬいぐるみに『かわいい』を付与する。

ぬいぐるみが輝き、確かに『かわいい』ぬいぐるみが完成した。

「よし、ありがとう。あと4個だよ。これならすぐに終わっちゃうね。…二週目とかできそう?」

ぼくの作業が大変そうだったので一人一回という約束だったのだが、魔素は補充され僕自身はずっと座ってたまに鉄鎚を振るだけなのだ。ほとんど疲れていない。

できるかと言われればできるのだが、やりたいかと言われるとそれほどやりたいことではなかった。

「……だめだよ。約束だからね。これ以上はお金をとろうかと検討中なんだ」

「そっか。まぁそうだよね。グーグ君のやってることって鍛冶屋とか魔道具屋の仕事とおんなじようなものだもんね。本当ならお金をもらってやる仕事だよね」

うんうんとリアラは理解してくれたようで、今日はあと4回で終わりということになった。

「ま、それに『かわいい』を付けれる物をもう一個持ってこないとってなると時間かかるからね。今度でいいかなー」

「……」

今度までに料金プランをしっかりと決めておかないとまたただ働きさせられかねない。

怖いのでなんとかしようと決意する。


「モルラビ持ってきたよ…あっ」

こちらに小走りで走ってきていた女子が何かにつまずいて倒れる。

彼女は体に銅の鎧を着ていた。それが重いのか転んでしまったようだ。

「あーあ、ブララはほんとドジだなぁ。大丈夫?ラビつぶれてない?」

リアラはその女子を立たせながら彼女の持ってきたモルラビを確かめていた。

「あーらら。死んでるじゃん。ちょっと、しっかりしてよー?」

「う、うん…ごめんなさい」

ブララと呼ばれている少女はまわりの女子に謝りながら再び草原へと走って行ってしまう。

「グーグ君ごめんねー。ラビもっと丁寧に扱わないとだよね」

ぼくににこやかな顔を向けてくるリアラに、ぼくも気にしないよ、と返事を返す。

しかし…女子グループの闇を垣間見てしまった気分だ。

流石に13人。みんな仲良くなんてことはなく、内部では序列みたいのができているのだろう。

今ここにいて届けられるモルラビを受け取り、ぼくに《付与》させている女子と、モルラビを捕まえて運んでくる女子。

その運んでくる方に重い鎧を着こんだ女子が入っている。それを見てもここにいる女子たちは代ろうともしない。

(ひえぇ…)

怖いことにはかかわらない。

それがぼくの処世術である。


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