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義姉がやってきます。


ある日のお昼休みだ。

教室の外がざわついていた。

学食に向かうためにグーグはセビと準備している所だった。

「なんだろ?」

食事の席をとるためにいそいで廊下に出た生徒たちが立ち止まり、道の端によっている。まるで人が通るのを邪魔しないためのように。


「お邪魔いたします。グーグ君はいますでしょうか?」


教室の扉から現れたのは天使だった。柔らかな乳白色の肌に金の羅紗を思わせるキラキラとした長い髪をまとわせ、長い耳と澄んだ翠玉エメラルドのような瞳の少女。

彼女の周りには静謐な空気が流れ、神聖を保とうとしているかのようだった。

「あれ、義姉さん。めすらしいね」

教室のみならず廊下にいる生徒たちが息をのんで見つめる仲、なんでもないように挨拶をするグーグだった。

「グー君。食事はまだでしょうから、いっしょに食べましょう。どうしても話しておかなければいけないことができたのです」

「いいけど…」

チラリとセビを見る。グーグはいつもセビやシーダといっしょに昼食を取っているのである。

セビは首をブンブン振って問題ないことをアピールした。

「…うん。いいよ。セビ、ありがと」

二人が連れ立って出ていくのを見守り、ようやく教室の生徒たちの硬直が解かれる。


「な…なんだあれは。女神かなにかか?」

「いや、知ってるぞ。3年生の生徒だ。戦技科でみた」

「姉って言ってたか?グーグは姉がいたのか…」

「…ふんっ!、びびび、美人じゃないっ何よっ!」

「はぁ…(ハート)」


もうしばらく教室の騒音は収まりそうになかった。




教室を出たグーグと義姉のラーテリアは中庭の空いているベンチに腰を下ろした。

ラーテリアが二人分だと言う弁当をグーグとの間におき、開いていく。

「すごいね。ちなみにこれは誰が?」

「私が作りました」

なかなかのボリュームがあるが、エルフである彼女は肉を食べない。なので弁当の中身はほとんどが野菜と果物、あとたまに魚と穀物で埋まっていた。

「どうぞ召し上がれ」

「いただきます」

少し不安だったが義姉の作った食事は普通に食べられる物だった。

味が付いているがまだ薄かったりたまに濃かったりと、年相応の少女が作った料理だと思った。

「…おいしいね。義姉さん料理できたんだ」

「母からグー君の料理がすごいと聞いたので。義姉としてがんばりました」

そのあたりは師匠とは違う。

師匠なら「ならグー君にまかせたほうがいいよね~おいしいし♪」とか宣うはずである。


お弁当をいただき、食後のお茶まで出してもらい一息つく。

義姉はもそもそ上着のポケットから一通と書類を引っぱり出す。

まず手紙をぼくに渡してきた。

「父からの手紙です。読んでください」

「義姉さん宛だけど…わかった」

ペラリと開いた手紙には養父さんの近況や旅のことが書かれていた。そして最後におかしな一文があった。

「…………は?」

ありえない名前。失ったはずの名前があった。


「次にこれです。父がその生徒について調べてきてくれた情報です」

そう言ってぼくの前に数枚の書類を広げる。


『登校実績なし。逃亡・失踪の可能性』

『調査員、自警団により捜査が行われる』

『鑑定した協会にのみ鑑定結果が残っていた』

『鑑定時に警護していた兵士によれば、それはドワーフのような少女だったらしい』


――ドワーフ。

そしてその名前。

スキルで選ばれ、学園に招集されたということ。


それだけでは何一つ彼女であることの証明にはならない。

けれど

けれどそれは彼女だった。

「…ナーサ」

「ドワーフ族の女性には名前の一部を伸ばす習慣があります。イーダ、クーリア…。ですので同盟のドワーフ族である可能性はあるのです」

「でも義姉さん。これはナーサだ。ナーサだよ!」

感覚がそう言っていた。

ナーサは本来義姉、ラーテリアと同い年である。けれど身長の低いドワーフ族であり、実年齢より若く見られていたとすればグーグと同じ年に鑑定祭を受けたとしても不思議はない。

なによりも”北”の学園への入学である。

グーグたちのいた村…ケイフ村があった連峰は、この国の北側に位置しているのだ。

すでに村はない。

あの日、村が黒い粘液に呑まれた後、その山に棲まう”龍”によって跡形もなく吹き飛ばされたのだ。

山の一画を削った巨大な痕跡は国中に知れ渡り、今でもその時の事件の話を覚えている者も多い。

それは”龍”の怒りに触れたのだ。

または”龍”に挑んだ場王の残党がいたからだ。

そうウワサされるも真相は謎のまま、今も連峰の近隣の村では恐れられている話だった。


けれど知っている。

その原因を。

そしてその代わりとして、彼女のスキルをもらったと言うことを。

交換したことを。


ナーサはぼくのスキルを持っている。

ならば国はナーサを学園に迎えるだろう。

そう確信していた。


「ナーサのスキルなら学園に選ばれる。ぼくら3人のスキルが入れ替わったとき、結局一番強いスキルはナーサの所にいったんだ」

それは勇者候補を退けるほどのスキル。万物を圧縮するスキル。

「だからきっとこれはナーサだよ」

「……そうかもしれないです。でも、絶対ではないのですよ。それに、今は行方もわからないままです」

養父の調査でも行方不明のままだ。

なぜ鑑定祭には参加したのにその後に行方をくらませたのか。

今、どこにいるのか。


会いたい。

探しに行きたい。


「義姉さん、ぼく、北の学園に編入したい」

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