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近所の子に遊んでもらいました。


家の玄関をバーンッと開けてその娘たちはやってきた。

隣家のドワーフ族の娘 ナーサ

そしてナーサと同い年くらいではあるが、ナーサより背が高い耳長の娘。

エルフ族の ラーテリアだ。

どうやらうちとこの2家は仕事上のつながりが強いらしい。


ラーテリアの家が森を育て、伐採する木を選ぶ。

うちが選ばれた木を伐採し、薪としてナーサの所へ持ち込む。

そしてナーサの家が薪を使って鍛冶を行う。


他にも木を加工して民芸品を造ったり金属を使った鋳造物を造ったりと3家で協力して生活しているらしかった。

そんなご近所仲のいい所の娘二人が何をしにきたかというと・・・


オレを使ったおままごとだった。


「はいあーん。グーグちゃんきょうのごはんはキノコごはんですよー。おいしいですかーもぐもぐ」

オレンジ地に紫の斑点のあるキノコだった。たぶん食べたら死ぬ。

「はいグーグたん。おはなのかんむりです。かわいいですね。きれいですねー」

花の真ん中に目玉がついている花だ。おそらく魔物の一種だろう。まだ生命力があるのか目玉がキョロキョロと動いている。

怖いんだが。

大丈夫なのか?

このおままごとは危険ではないのか?

少し離れた場所でオレたちを見ている母親へと視線を向けた。

ニコニコとほほえましくこちらを見ていた。

母ー、母ー、たーすーけーてー

だめだった。通じやしない。

オレは頭に魔草の花冠をのせられ唇によくわからない花の汁を塗られ、毒々しい色のキノコを持たされ、頬をぷにぷにされる。

苦痛だ・・・。

魔物を顎で使っていたオレが、幼女たちのおもちゃにされている。

転生とはこれほどの恥辱を受けるものなのか。自信の身の不憫を嘆くことしかできなかった。

しくしく



春に一歳の誕生日を迎え、初夏にさしかかるころ。オレはようやく一人で家の外に出る機会を得た。

父親は仕事に出ているし、母親は昼寝中。

天敵であるナーサとラーテリアは今日はまだ現れていない。

オレは裏口の扉を箒の柄を使って開き、裏庭に出る。

夏の陽気になってきた日差しを避けるために、植木の影に腰を下ろす。

よし、これでゆっくり外発の魔術が使える。

オレはかつての魔術のことを思い出しながら体の中に流れる魔素に意識を向ける。


まずは――火だ。

赤き刃となった火が、矢になって敵を貫き、燃やし尽くす。その矢が三本、オレの目の前に浮かび、解き放たれるのを待っている――そんなイメージだ。

オレは『火』と『矢』を魔素で練り上げていく。

内ではなく 外に――閉じていたまぶたを開き、何もないはずの空中を確認する。

ポっと、小さな火が浮いていた。それは間もなくフッと消えてしまう。

種火程度の大きさの火だ。矢のカタチにはなっていない。

けれど成功だ。この調子なら《火矢》はすぐに覚えられるだろう。

オレはもう少し《火矢》の練習をすることにした。


30分ほど練習し、《火矢》を習得することに成功した。

さて、次は何を覚えようか、と考え始めた時、家の中から叫び声があがった。

「グーグっ?、グーグっ!?、ど、どこにいるのっグーグっ!」

やべ

オレはこっそり裏口の扉から家の中にもどる。

「あーっ、グーグちゃんいたー!」

なぜかナーサに発見され、ぎゅっと抱きしめられてしまった。

「つかまえたー」

つかまってしまった。

「ナーサちゃん、ありがとう!。よかった、グーグこんなところにいたのね。もうっ、心配しちゃったじゃない」

母はナーサごとオレを抱きしめる。

安心したのか、ほっとした表情をしている。

すまない、心配させてしまったか。

まだ一人で行動するにはオレの体躯は小さすぎる。

さすがに騒ぎになるのは嫌なので、次はもう少し背がのびてからの方がいいかもしれない。

オレは母親の腕の中で少し反省した。

気を付けよう・・・。




一歳と半年をすぎたころ、村で変化があった。

村の男たちが総出で木材を運び込み、村の周りを囲う石積みを、より高く補強しはじめたのだ。

オレは母親に何をしてるのか聞いた。

「まーま、パパあにしてう?」

「んー?、あれはねぇ、魔物が入ってこないように壁を造ってるのよ。魔物は怖いからねぇ、パパたちが頑張って守ってくれてるの」

今年の秋は山の実りが少なかったらしい。そのせいで山で冬越しの準備をしているはずの魔物たちが村の近くまでやってくることが増えていた。

万一の備えとして囲いを高くしているのだ。


オレも、そろそろ準備を始めることにした。

固有スキル《魔獣召喚》に必要な魔素量は数値にすれば10といったところだ。今のオレの魔力は5。そろそろ魔素が足りているはずである。

今世で契約している魔物はいないが、もし、もしも前世でした契約が残っているのなら――このスキルを使うことで何かが召喚することができるはずだ。

それを試す。

魔物が村に入ってくるかもしれない。その時のために身を護る方法を少しでも用意しておきたいからな。

あくまで自分の身を護るためだ。

魔術の方はほとんどの初級を習得していた。

内発の魔術だけではなく、外発のほとんどを、だ。無いのは”魔”属性の初級と才能の有無にかかわる希少系の魔法のだけだろう。

”魔”属性の初級は魔素量に直結する。魔素が少ない今では取っても扱えない。なので他属性の魔術から育成することにしたのだ。

まぁ”魔”属性は攻撃魔術といえるものが一つも無い。

このまま取らないかもしれない属性だった。


火属性魔術《火矢》

水属性魔術《水弾》

土属性魔術《石礫》

光属性魔術《光矢》

闇属性魔術《影縛り》


十分だ。

スキルは使わなければ育たないことを考えると、こんなに覚えても手が回らない。

・・・ちょっとスキルを取りすぎたかもしれない。

人間種族は習得できるスキル数に制限がない。

いくらでも覚えられる楽しさにまかせてスキルを取りまくってしまった。いっぱい取れるって良いな。すごく良いな。

ふふふ。あとはこの魔術を活躍させる環境がやってくることだが、まぁどうとでもなるだろう。

この世界には魔物がいるのだから。




《魔獣召喚》使ってみた。

「・・・・・・・・・・・・」

・・・・・・何も出てこない。

だめだった。

まぁそうだよな。契約もリセットされてるよな。

うーん・・・


秋の暖かい日。オレは家から少し離れた広場で人目につかないようにスキルを試してみた。

結果はまぁ、予想通りである。

しかしこうなるとどうしたものかね。

契約魔術をどっかで調達しないといけなくなる。

自分で用意することもできるが、”魔”属性の魔術なので正直あまりとりたくない。

まぁ一回契約さえできればあとは呼び出し放題なので、魔術はそれほど必要ではない。

誰か使える人間を雇えればそれでいいだろう。

しかしこうなると・・・もう一つの前世のスキル、魔王技《災歌》もきちんと使えるのか不安になってくる。

《災歌》使えるか?

発動させるには生命力を消費しなければならない。今のオレに発動させられるまでの生命力があるだろうか。

ためすために命をかけるのは割に合わないのでもうしばらくは使うつもりはない。


とりあえずスキルまわりはこんなところだろう。

魔王時代からのスキルはまだ使えず、魔術は必要なものはそろった。他に武器用のスキルもあるけれど、これ以上スキルを覚えても育てきれないだろうし、必要になったらその時に覚えればいいだろう。

オレは広場の草原に寝転んで空を仰いだ。

スキルを覚えて・・・

それで?

それで何をするのか。

また、世界を破滅させようというのか。

前世のオレは、何で世界の破滅をしようと思ってたんだろうか・・・・・・


「グーグちゃんみつけたー!」

オレの寝転んでいる横に、小さな影があらわれた。

自分の顔を覗き込んでくるのはドワーフのナーサだった。

「なーさ。どうしたの?」

「グーグちゃん、あーそ-ぼー。グーグちゃんは何してるのー?」

何も。あえて言うなら世界を破滅させるかどうか考えていただけだ。

「せかいのことかんがえてた」

「ふーん。なら、ナーサとあそんでいいよね。なにしよっかー」

オレの崇高な悩みなどどうでもいいらしく、ナーサはオレにいくつか遊びを提案してくる。

かくれんぼ けんぱ はっぱあつめ おままごと きのこさがし

「・・・はっぱあつめ」

おもに掃除と呼ぶ。

「ナーサはおにごっこがいいな。ナーサがグーグちゃんをつかまえるの!。いいよね?。おにごっこ!」

選ばせてくれるのかと思ったらちがうらしい。

オレはナーサの圧に負け、鬼ごっこを遊ぶことにした。

オレが逃げてナーサが捕まえに来るらしい。

「それじゃぁかぞえるね。いーちっ、にーいっ、さーんっ・・・・・・」

オレは急いで立ち上がり、とてとてと走り出した。

ふふふ。風魔術を習得しているオレの速度は並みではない。

風魔術《速力》 移動速度が15%も増加するスキルである。

この幼児体型ではたかが知れていると思うだろう。だが、相手はあのナーサなのだ。ドワーフ族なためオレとほとんど遜色ない足の長さをしている彼女相手ならば、15%と言えどもそれは圧倒的な差になりえるのである!


「ぐ~ぐちゃ~んっつーかまーえちゃうぞ~」

「あびゃらびぇぎゃぶえかはkjおp!?」

振り返ると奴がいた。

短い足で驚くほど高速に移動していた。

おれは後ろからぎゅっと捕獲され、持ち上げられる。

ばたつく足は空を切る。

「グーグちゃんかわい~♪」

ぐむーと抱きしめられるが、どういうことか。なぜこれほど早いのか。魔術を使うオレよりはやいぞ。

田舎の子供相手に15%程度の上昇では効果がなかった。

捕獲されたオレはナーサのなすがままにぷにぷに弄ばれていた。

「うへへ~。グーグちゃんあったかくてすき~」

うむ。好きなだけめでるがいい。

とは思いつつ。ナーサは止めないといつまでもオレをおもちゃにするので適当な頃合いで拘束を解きにかかる。

「ふ~。それじゃぁ、またナーサがおにね!」

ナーサは笑顔で宣言した。

なんてこった・・・まだ続くらしい。鬼と言うか鬼畜の所業である。


オレはナーサが満足するまで鬼ごっこに付き合い、おもちゃにされた。

空は紅に染まり山に陽が沈み始める。

「グーグちゃん、またね~」

オレは迎えに来た母の腕の中からナーサに手を振る。


おわ・・・た・・・


ぐったりと母の胸によりかかる。やりきった、という万感の想いに包まれていた。

今のオレにとっては、ナーサですら天敵だといえる。

・・・早く大きくなりたい。


とうとう文頭スペースすらやらなくなったずぼらさよ…( ˘ω˘)スヤァ

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