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パーティー仲間を探します。


放課後、一人で冒険者ギルドに行ってみた。

冒険者ギルドは街の真ん中あたりにある。この街は四方にダンジョンがあるからそのちょうど中間あたりに作ったのだろう。

新一年生がわらわらと集まっていて人が多い。

ぼくはのんびり順番待ちをしながら辺りを観察していた。

魔術クラスの生徒は戦技科の生徒とパーティーを組むのがマストのようだ。後方火力だけ、もしくは近接火力だけでパーティーを組んでもいざというときに対処できない。

だからだろう、ダンジョンのために協力しあう心づもりができているようだ。

けれど使役クラスはそれがない。

使役クラス内でパーティーを組む。

これは使い魔を前衛もしくは後衛にし、自分が補助や攻撃の足りない部分を補えるからだろう。

ともあれ、なるほどよそに手伝いを頼むと言うのもアリと言えばアリなのだろう。


順番がまわってきたのでDランクへの昇級クエストの条件を聞いてみた。

「一月以内に3つの課題達成で昇級となります。課題はランダムな魔物討伐ですね。どれもEランクの魔物10匹を倒せば完了です。数は冒険者カードに自動的にカウントされますので、樹定数を討伐したらカードを持ってカウンガーにいらしてください。本日から昇級クエストを受けますか?」

一月以内という条件だと少し厳しいかもしれない。でもどんな魔物が選ばれるのか、実際に受けてみないとわからないこともある。

ぼくは昇級クエストを受けると答えた。

「ではこの箱の紙を3つ引いてください」

腕を入れられる穴が空いた箱を差し出される。それに腕をつっこみ、中に入っている紙を3つ取り出した。

「…『モールラビ10匹』『しょうゆバッタ10匹』『青白クラブ10匹』ですね。カードに記載します。…はいできました。クエストを中止する場合には100Gかかりますのでご注意ください」

渡された冒険者カードには


モールラビ 0/10

しょうゆバッタ 0/10

青白クラブ 0/10


と書かれている。

これを倒せば自動的に0の数字の部分が増えていくはずである。

便利だなぁ。

選ばれた魔物はどれも普通であれば簡単に倒せる魔物ばかりだ。…普通であれば。

攻撃スキルも魔術も使い魔も頼りにできない現状では普通に武器をふるって泥試合をするしかないのだろう。

しかしぼくには妙案があった。

そう、他にたよればいいのである。


ぼくは足取り軽やかに学園の女子寮に向かうのだった。




「……グー君。それくらいは自分でこなしなさいです」

1年半ぶりに会った義姉はきっぱりとぼくの思惑を却下したのだった。

「そんな!義姉さん無理だよっ。だってこれだよ?つららだよ?お茶を冷やすくらいしかできないんだよ!」

義姉であるラーテリアは生粋のエルフである。養父と師匠の間に産まれ、戦闘技術を評価されて学園の戦技科3年に在籍している。

「グー君が困っているなら手伝ってあげたいですけれど、でもそのクエストはパーティーを組んで行えばほとんど問題なくできるものです。クラスメイトと協力するいい機会ですよ」

もっともな意見だ。

今後のことも考えてクラスメイトと早いうちにパーティーを組むのは必須といえるだろう。授業で討伐クエストを行う場合には仲のいいメンバーで組まされるという話しもある。

ぼっちは不利でしかないのだ。

けれどぼくと組んでくれるクラスメイトがどれほどいるのか。

”ゴミ使い魔”という話が広まってしまった今、ぼくはどうしたって一人ぼっちなのである。

「うぅ…わかったよ。クラスメイトにたのんでみるよ」

なんとか昇級クエストだけでも手伝ってくれる人がいないか交渉してみるしかない。

人に何かを頼むのはおっくうである。

やはり師匠といっしょにひきこもっていられた時間のほうが幸せだったと思う。

ともあれしかたない。

なんとか課題をこなしていくしかないのだった。



「…グー君はどうしてあんなに後ろ向きになってしまったんでしょうか」

ラーテリアはため息をつきながらひとりごちる。

それはきっと母のせいだろう。

グーグは過去、心に大きな傷を負っていた。

自分のスキルのせいで村がなくなり、そこに住んでいた両親、幼馴染、知り合いをすべて失ってしまったのだ。

『自分があんなスキルを持っていなければ』

その思いはグーグを縛り、深い暗闇に沈めてしまう。

いつまでも消えない傷痕を心に残してしまう。


それを何とかするために、のんびりと隠者の生活をしている母にあずけられたのだったが。

一応解放に向かってはいるようではある。こうして学園に入学しに来たのがその証拠だ。

以前のグーグならどうなろうと自分の内側に引きこもっていただろう。けれど旅をし、学園に来ると言う前向きな姿勢がみえる。

それでもまだ足りないとは思う。

幼馴染だったころの彼はもう少したよりになる存在だった。

今の彼は後ろ向きに回復していた。

なぜ後ろ向きなのか。

それもこれも母がグーグにひきこもり方を教えてしまったからだと、ラーテリアは思う。

もっとまともな人にあずければよかった。

とはいえ、あちこち旅をする父にはあずけられず、他に伝手もない。

母に預けるしかなかったわけなのだけれども…。

悩ましいことだ。

いっそ自分がグーグのすべてを背負ってしまおうかとも思う。

学園の課題も、将来も、もしかすると一生も背負ってしまおうかと。

――けれどそれは、どうしても踏み出せない理由がある。

グーグのことが大好きだったあのこのことを考えると、自分がしていいこととは思えなかった。


答えは出ないまま、ラーテリアは父からの定期連絡の手紙にペーパーナイフを入れる。

開いて読み進めてもあまり頭に内容が入ってこない…いや、

もう一度読む。

何度も手紙の同じ場所に目を向けて、その意味を何度も、何度も咀嚼する。

父からの手紙。

エルフ族が人種族を監視するために方々へ放った監視員である父は、今はあちこちの町や村を訪れてその情報を”森”へ持ち帰る。

情報を集めるついでに旅を楽しんでいる父は、こうして旅先から手紙をよこしてくるのだ。

その手紙の一文に目が釘付けになる。


”ナーサという名前の生徒が北のイディア学園に入学した”




「お願い!ぼくとダンジョンに行って!」

「お断りします」

通算13回目のお断りだった。

「お前まだやってるのか。いいかげんあきらめたらどうなのだ?。お前は足手まといだろう」

魔王の少年がぼくをうっとおしげに見ていた。

「君だって配下が集まってないじゃないか。”魔王”なんていうやつには誰も力をかさないぞ」

魔王は人種族の敵である。

人種族を殺すためだけに戦争をおこすいかれた存在が魔王なのだ。そんな魔王を自称する彼らはクラスでも孤立気味だった。

「フッ、配下は質が肝心なのでな。我が高くありさえすれば、自ずと質の良い配下が集まって来るであろう」

意識の高い話だなぁと白い眼を向ける。

このままだとぼくといっしょにぼっちルートまっしぐらだというのに何も心配はないらしかった。

もういっそ孤立しているメンバーでパーティーを組んでしまおうか。

流石にそれは早まった判断かもしれず、最後の手段として残しておきたかった。

「でもまだパーティーを組んでない、孤立したクラスメイトなら…」


いくつものグループができていく中、まだ固まっていない生徒も残っている。

まず自称魔王の4人。一人抜けているのは恋を手助けする魔王だけは女子に人気だからだ。

そして貴族らしき数人。貴族同士固まる連中もいるが、やはり一般人の多いクラスでは貴族が浮く結果になっていた。ただ貴族の一部は護衛を連れている。その護衛と共に課題をこなせるのでぼくみたいに困ってはいないだろうと思う。

あとは…なぜか赤毛のドリル少女もまだパーティーを組んでいないようだった。

クラスメイトからパーティーにさそわれたのを見ていたのでとっくに組んでいると思っていたが、自分と同じように人見知りなのかもしれなかった。


ぼくは赤毛の少女に声をかけようと席をたつ。が、横から別の声がぼくの名前を呼んだ。


「やぁ、グーグ君だっけ?、君はパーティーを求めているのだね、なら余と組まないかね?」

黒い髪の少年だった。護衛を連れていることから彼が貴族であると推測できる。

「え、い、いいのか?ぼくは使い魔が使えないし、スキルも頼りないものばかりだよ」

「うむ。実を言えば余もまともな戦闘技能をもっておらぬのだ。しかしこうして手を組めば何かはなせそうではないかね?」

ちょっと言葉使いがおかしい気もするが、背に腹は代えられない。

ぼくは彼と手を組むことにした。

「よろしく…ええと?」

「セビアである。余のことはセビでいい。貴族ではあるが堅苦しいのは嫌いでな。普通に友人として接してほしいのだ」

貴族から友人づきあいをしてほしいと言われてもちょっととまどうのだが。

「うん。…よろしく」

ともあれ、こうしてやっと一人とパーティーを組むことができたのである。


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