余の幕間
余は絶対的存在だった。
この国の第二王子に生まれ、強力なスキルを有し、金も富も女も選び放題の存在だった。
人生とはこんなにもイージーモードでいいのだろうか?。
それが余の一番の悩みであった。
余には兄がいた。第一王子と呼ばれる、非凡ではあるが面白みのないただの子供の兄だ。
あれは将来余の邪魔となるかもしれない。だから余は思う。
邪魔になるくらい余を楽しませてくれるだろうか、と。
そのために余の傀儡にしないでとっておこうと。
楽しみである。
余の兄はいつ余を楽しませるのだろうか。
いつかが来たらどうしようか。
殺そうか。
繰々ろうか。
それともまた何かするかもしれないから罰を与えてから野に放とうか。
すごく楽しみである。
そんな妄想をいだきながら、その子供は自分に与えられた王城の一角でメイドを呼んだ。
「はい…主様、ご用は何でしょうか」
子供は疲れたので椅子が欲しいと言う。
「椅子を…お持ちしましょうか」
けれどその子供は怒り、メイドに椅子になれと命令した。
「わかりました…どうぞ、お座りください」
四つん這いになったメイドに、子供は満足そうに尻をおろした。
あぁつまらないと言いながらメイドに座り、また別のメイドに声をかける。
「はいご主人様…いかがいたしましたか」
その子供は面白いことをしろ、と申し付ける。
「面白いこと、ですか…わかりました」
メイドはただ無表情で人形のように踊り始める。
くるくるくるくる踊り続ける。
ふと、部屋の外が騒がしくなる。
また何かがやってきたのだろう。今度はどんなおもちゃかと期待する。今までいろいろなものが自分に与えられてきた。
メイド 護衛 料理人 商人 殺し屋 兵士 執事 教師
そのどれもが自分のおもちゃになった。
今度は何か、もっと面白いものかと期待する。
廊下から現れたのは兵士だった。いや、城の兵士よりももっと豪華な細工の鎧を着ているあれは、騎士だろう。
その騎士が何人も、何人も列成して自分の部屋に入って来る。
彼ら全てが剣を持ち、槍を持って自分へと向かってくる。
「止まれ。余の御前であるぞ?」
ピタリ、と彼らは動きを止める。
武器を持ったまま、彫像のように止まる。
さて、どうしようか。
流石にこの部屋には多すぎる。
多すぎる分は処分してもいいかと考えながら、子供は騎士たちを眺めていた。
す、と騎士が一人動いた。
耳の聞こえぬものも混じっていたのだろうか。
いや、耳が聞こえないとて音が体を縛るはずである。
その騎士はまっすぐ自分に歩いてくる。
「止まれ。余は第二王子である」
けれど騎士は止まらない。そのまま踊っている姿のままで止まっているメイドの横を抜け、そして自分の目の前に来た。
「余…ちょ、あ、な、何をす
子供は最後までしゃべることができなかった。
その騎士に全力でぶん殴られたからだ。




