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母親の愛はもっとも尊く。

そして父の愛はすっごく痛かった。

5ヵ月になるオレは、父の過剰な抱擁に頭を悩ませていた。

やつの愛は痛い。

オレを抱きしめほおずりして「たかいたかい」と言いながらブンブンふりまわされる。

ダメージにして 5、2,状態異常[酩酊] みたいな感じである。

この状態、常に死と隣り合わせだった。

ダメージもさることながら、奴は仕事帰りにオレで疲れをいやすためか、帰ってきていの一番にオレのところにくるのだ。

まず汗臭い。

そして微妙に伸びたヒゲがザリザリとオレの肌を削りながら汗と顔油をオレにぬりつけていく。

それがなんだかもう良くわからないがオレの意識を喪失させるほどに辛いのだ。

助けて!と叫びたくなる。

魔王であったはずのオレが、人間でしかない母親にすべてをなげうってでも助けを請う瞬間でもあった。

母親はニコニコみているだけだったが。


そんなわけで、オレはこの父親に対抗するべくスキルや魔術を模索しているのだった。


「ただいま!今帰ったぞっ!」

「あなた、お帰りなさい。今日のご飯もイーモのスープよ」

「やったね!。グーグ!今日も芋だよ!」

ここ最近はずっと芋だ。どうも山から食べ物が減ってきているようだった。外の空気もだんだんと寒く、冷たくなってきている。


冬が近い。

季節の移ろいとともに生活が辛くなってきているだろうに、父親は毎日それを感じさせない笑顔で帰って来る。

そして体と、心が冷え込むのを温めるようにオレに温もりを求めるのだ。

「グーグただいま!、あ~ぐ~ぐ、ぐ~ぐ、ぐ~う~ぐ~ぐーぐぐぐぐっ」

部屋に飛び込んできた父コダーダは、揺り籠からオレを取り上げるといつものようにほおずりしてきた。

ぎゃあああ、死ぬ!

などと耐える日々は終わりだ。オレは生きるため、全力で抗うことを心に決めていた。

「あ~」

ゴリゴリ

「だ~」

ぐいぐい

「ぎゃぶ~」

「はぁ~かわいいなぁ」

ちくしょう!魔術が出ない!。

内発と違い、外発の魔術はスキル名を口に出さないといけない。・・・それが、赤子の舌足らずな発音では難しいのだ。

一人の時にも練習しているが、いまだに一度も発動したことが無かった。

オレは心身ともに絶命ギリギリになりながら揺り籠にもどされた。

良かった・・・今日も生き残れた・・・。

ひーひーふーふーと息を整えていると、何か再び心が疲れる感覚があった。

・・・・・・おや?

ひーひーふーふー

再び疲れ、オレは急速に眠くなるのを感じる。これは・・・魔術か?。

歓喜するよりも眠りにいざなわれながら、オレは新たなスキルの獲得を予感していた。


目が覚めたオレは母親にペースト状の芋ごはんを食べさせてもらいながら思考していた。

・・・さっきのは魔術が発動したことによる魔素の喪失だった。

だが何の魔術だろうか。

「《ふぇい~・・・》」

「あら、もうあきちゃったのかしら?。もっと食べないとダメよ?」

差し出されるまま芋ペーストを口にいれる。

うむ。芋だ。

「《をーたー・・・》」

「はいはい。今あげるわよ~」

うむ。芋だ。

「《あーば~・・・》」

「あらあら。ばーばじゃなくてマーマよ~」

うむ。芋しかない。

「《らーあー・・・》」

「いやー?まだ半分も食べてないわよ~」

うむ。毎日の芋だ。

「《かーえー・・・》」

「からくなーいからくなーい」

もぐもぐ

・・・わからん。

《火矢》でも《水弾》でも《石礫》でも《光矢》でも《影縛り》でもない。風魔術、無魔術には外発の初級魔術が無いし・・・オレは座り始めた首をかしげる。

・・・思い出してみよう。あの時はコダーダの攻撃で息もとぎれとぎれだった。

そんな状態で魔術が使えるだろうか?。

疲労

心労

負荷

皮膚ダメージ

そしてあの時の呼吸・・・

ひーひーふーふー

「・・・《ひーふー》」

何も起こらない。まぁそうだな。

「ぎゅーにゅー?牛じゃなくて山羊の乳ならあるわよ~」

そう言って母メルーダがオレにコップに入ったミルクを飲ませてくる。

「あぶびゃっ」

「あら?」

ミルクは熱かった。覚まし忘れられた液体が、オレの口内から喉を通り、食道を熱していく。

火傷だ。

めっちゃ火傷した!

「あいーっあいーっ」

「あーあーあー、ごめんなさい、あつかったわね。今、冷やしてあげるからね~」

母はそう言って水をとりに調理場にいそぐ。

オレは痛みに耐えられずに涙を流しながら雄たけびをあげていた。

「はーいーっ、あー、へうえー、へあーっ」

コップに水をくんできた母親はオレの口に少しずつ流し込んでいく。

はぁ、はぁ、少し痛みがひいて来た。

まだ痛みが残る口で荒い息をあげる。

「ひーひー・・・はーひー・・・《ひーうー・・・》」

おれの精神から何かが引き出され、そして口内の痛みが引いていく。

・・・魔術だ。

もしかしてこれは・・・

オレは再びさっきの魔術を発動させる。

口 喉 食道

すべての痛みが消える。

やっぱり――そうか。これは治癒魔術の初級魔術


治癒ヒール


魔族という種族では覚えられなかった魔法。人間種族でもこの系統を覚えられるのは稀であり、覚えられたならそれだけでいくらでも将来が開ける。そういった類の魔術だった。

人と言う種族が持つ、可能性の一つ。

それを、オレは使えるのだ。

すごい。すごいことだぞこれは。

流石すぎるぞオレ。

魔族という束縛から離れてしまえば、こんなにも可能性にあふれているのだ。

あぁ、早く育ちたい。

もうちょっと育ったなら、もっといろんなスキルが覚えられるだろう。そして・・・

そしていつか世界を破滅させるのだ。

魔族だったころの夢 願い 望み。


オレは


世界を破滅させるために生まれたのだから。




真冬になった。

この部屋は家で一番あたたかいらしいが、部屋の扉を開け閉めするたびに廊下から冷たい空気が侵入してくる。

揺り籠の中で寒さを我慢しながら、かけられたいた毛布を足元に蹴り丸める鍛錬をしていた。


わんつーわんつー・・・あわんつーわんつー・・・


ふ、地面が恋しいぜ。この束縛された環境とも、いいかげんおさらばしたい。

そろそろこの鍛えられた肉体ならば、這い這いが可能なはずである。

オレはプニプニとかわいい腕をふりまわし、自分のステータスを空中に表示させた。


個体 グーグ

種族 人間


筋力 4

耐久 3

器用 3 

感覚 3

知力 8

魔力 3

魅力 3

速度 2


毒耐性2


・魔王技《災歌》--

・火魔術《燃力》3

・水魔術《治力》3

・土魔術《硬力》2

・風魔術《速力》2

・光魔術《明光》1

・闇魔術《暗視》2

・無魔術《失力》2

・治癒魔術《治癒》1


《魔獣召喚》


これがオレのステータスだ。

ステータスはほとんどない。悲しいくらいに貧弱だ。まぁしかたない。転生のおかげか、知力だけ高いのがもうけものか。

魔王だったころは平均50越えだった。転生することでほぼ初期からのスタートになってしまった。

しかしスキルは違う。

魔術の感覚を知っているおかげで、今世で魔術を獲得するのが簡単である。

本来、スキルは感覚を掴まなければ獲得することができない。オレはその感覚を模索する時間を、圧倒的に短縮できるのだ。

生後7ヵ月でこのスキル数。

末恐ろしいことだ。


そしてまさかの魔王時代からのスキルの継承。

あるとは思わなかった・・・とんでもないスキルが二つも残っていた。


魔王技《災歌》


そして


固有スキル《魔獣召喚》


広範囲破砕スキルと軍団召喚のスキル。

とんでもないスキルが残っていたものだが、しまし今すぐに使えるというわけではない。

《災歌》は代償に生命力を消費する。今の赤子の生命力では、下手をすると発動させたとたんに代償が払えず死ぬかもしれない。

《魔獣召喚》は”契約”をした魔獣や魔族を召喚することができる。なのでまだ一匹も契約していない現状、何も呼べないということだろう。

魔王時代の契約がそのまま使えるとは思えないが、それでももしかすると、と期待する気持ちがないわけではない。

ただ、こちらも発動に魔素を消費する。

その魔素量がまだ確保できていない。

将来的に魔力を育て、魔素量を確保できたときに試してみたいものだ。


オレは将来に胸を躍らせながら、せっせと体動していた。

外発の魔術は家から出ないと危なくて使えないからな。がんばって外に出れる体をつくらないと。

「あ・・・あ・・・あーしょっ」

くしゃみが出た。

・・・流石に毛布を蹴飛ばしたままというのは寒かったかもしれん。

オレは仰向けのまま体を180度回転すると、頭を毛布の中にもぐりこませた。

うむ。あたたかい

そのままオレは毛布のやさしさにつつまれたのだった。スヤァ


月いちか月にののんびりUPです(´▽`*)

人様の作品はガッツリ読むけど自分の物はスカスカ進行! あると思います。

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