表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/108

自分のスキルを確かめました。


雪の降る夜。

山主によってスキルを交換されてから半月がたった。

あれから山主は現れていない。両親たちの話を横耳して得た情報をつなぎ合わせると、どうやら”龍”という種族も他の爬虫類と同じように寒さに弱いらしく、冬場はあたたかい山のすそのの方の町に下りてしまっているらしい。

よって…オレのスキルがどうなっているか、確認に来ることはないってことだ。少なくとも春までは。

怪しまれてはなんだからと今まで魔術を覚えなおすことを我慢していたが、そうとわかれば気にする必要はないだろう。

オレは魔術の再取得を頑張ることにした。


「んーと、まずは…」

《燃力》からいくか。

《燃力》は筋力を15%内発する魔術だ。力持ちになることは素より、足も速くなるし握力も上がる。なかなか便利な魔術だった。

オレは寝ている両親の隣で静かに《燃力》の感覚を呼び起こす。

内発の魔術なので口に出さずとも発動できる。なので寝れない夜であってもこうして魔術を使うことができるのだ。

ゆっくりと、自分の中から魔素が消費され…魔術が…

……

魔術が…

……

…あれ?

おかしいな。確かこれで間違いはないはずだけど…こうか。

……

発動しない。

一度失ったから、もう一度覚えるのには時間がかかるのかもしれない。

オレはいろいろアプローチを換えながら小一時間、魔術の発動を鍛錬してみた。

「……・ばかな」

発動…発現しない。

……ま、まぁ、そういう時もあるだろう。

オレはひとまず《燃力》を置いとくことにした。うん。…《治力》。《治力》にしよう。

今のオレの内から湧き上がる渇望が、《治力》だと訴えている。

そう、この疲労感と眠気を吹き飛ばすくらい、快活な治癒を求めている。オレはゆっくりと自分の中から魔素が消え、代わりに活力が――

…………

……

あ。いや。…《硬力》。そうだ今日は《硬力》だった。よし、《硬力》《硬力》。たしかこう……

……

…………

「んんんんんんんんんんんんん?????」

ははは、おかしいな。

魔術が発現しない。

まったく。

あれからしばらくやってみたのだが、《燃力》《治力》《硬力》以外のスキルも試してみた。

試して…全滅した。

全てっ、失敗したっ!

内発だけじゃない、外発の魔術も試してみたがそのどれもが…一つ残らず発現しなかったのだ。

《火矢》《燃力》《水弾》《治力》《石礫》《硬力》《速力》《光矢》《明光》《影縛り》《暗視》《失力》《治癒》

どれもこれも一切合切端から端まで発現しない。

スキルの条件を達成しているはずなのにスキルが現れない。

これには理由がある。

たとえば”種族”だ。

火属性の魔物は水属性魔術を覚えないし、アンデッドは《治力》や《治癒》を覚えない。

魔族にも不得意属性はあるし、そもそもすべての属性種族は”無”属性魔術が苦手だ。

あとは”ステータス”由来の理由もある。

ロックゴーレムなんかの”物理”な魔物は魔術自体ほとんど覚えられない。

スライムは”耐久”や”魔力”のステータスが無いからなのか、それらを強化する魔術が覚えられない。

覚えられないには覚えられないだけの理由があるはずなのだ。

今、覚えられない理由はわからない。

一度覚えたスキルをもう一度覚える、ということがどういうことなのかわからないから。何らかの制限があるのか、それともスキルとは一度しか覚えられないものなのか。

きっと理由があるだろう。

その理由をオレは知らない。

…おそらく、”龍”である山主なら知っているかもしれない。

もうしばらく魔術の鍛錬は続けるが、魔術を獲得するためには山主に会いに行かなければならないかもしれなかった。




さて、魔術が覚えられないとなったオレだが、スキルをあきらめたわけではなかった。

もらったスキルが二つ、あるからだ。


錬金術《保存》

鍛冶《鍛冶Lv1》


ナーサにもらったこのスキルだが…派手さは無いな。

『錬金術』というのは俗に言う錬金”魔”術で、魔素を使って何らかの効果を行う魔術のはずだ。

スキルの詳細を確認してみる。


<要魔値。属性を保存することができる。>


属性…というと”火”属性や”水”属性だろう。確かダンジョン産で属性石というアイテムがあったはずだ。

……

購入に金銭が必要な気がする。それもそこそこ高額な。

うん。次にいこう。


<鍛冶を行う。Lv1:粘土・草>


うん?

うん…職業スキルである鍛冶は職業によって扱える素材が違うと聞いたことがある。

建築業なら木材、石材。貴金属業なら金や銀といった感じだ。

…いやおかしいだろ。

粘土ってなんだ

草ってなんだ

粘土も草も鍛冶素材と違くないか?粘土はまだわかるが、草ってなんだ草って。草で何を造れというのか。籠か、それともゴザか。

草を生やすことができる!

……

農家かな。

野菜の安定供給に使えるかもね!

はぁ…(溜息)

どっちにしてもこの素材二種類は鉄鎚を必要としない。

ナーサにもらった鉄鎚は鍛冶Lvが上がるまで出番はなさそうだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ