表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/108

堕落してます。


「師匠ただいまー!」

「ただいまです」


五ヶ月ぶりに帰ってみると、ぼくたちを出迎えてくれたのはパモだけだった。


「プ」

「・・・・・・師匠は?」

「プ」


パモクルスが階段の上を指差す。

あのダメエルフ、昼間から寝ているらしい。

一部体調不良の疑いもあるので悪し様には言わないが、ぼくがいなくなって自堕落に拍車がかかったと思われる。


ぼくと義姉さんは師匠の部屋の前に立つ。

コクコクとお互いに頷いて覚悟を決め、部屋の扉をノックした。


「ししよー?」


声をかけるとくぐもった返事が返ってくる。

ぼくは部屋の扉を開けた。


投げ捨てられている服、下着、書きかけの紙、何かの道具、それから布団にくるまって幸せそうな師匠。

部屋は見事に散らかり、そして師匠はだらけまくっていた。


「師匠!いつまで寝てるんですか!弟子と娘が帰ってきたんですよ!ちょっとはシャッキリしてください!」


師匠はかぶっていた布団から頭を出した。


「お帰り、グー君、ラーテ。二人は勘違いしているよ。これはね、新しい魔道具の実験なんだよ」


ドヤ顔でそう言いました。


「みてて」


そう言って布団をかぶったまま、腕を伸ばしてパチンと指をならす。


ス、と部屋が暗くなる。

またパチンとならすと、今度は部屋の釣り灯りが明るくなった。


「ね?」


自慢気だ。


「師匠、すごいですね。確かぼくが学園に行く前にやってた魔道具の研究ですよね?、明暗の魔術が届くようになったんですね」

「ふふーん、すごいでしょう」

「すごいすごい。じゃ、もう満足ですね」

「え」


ぼくは義姉と共謀して師匠を引っ張り出した。


「おふとーん!?」


夏に布団もないだろうに、引っ張り出された師匠はショックで泣いていた。


「ちなみに、何日前から実験を?」

「・・・3日前?」


一週間くらい前だな。

完全な引きこもりになる前で良かった。

ぼくは師匠のことを義姉にまかせて部屋の片付けをはじめる。

散らかった道具や服はもちろんのこと、ベッドの布団も丸めてパモに干すように渡していく。

さて、問題は魔道具だ。

これはこのまま残しておくと師匠の今後に難を遺す。


「あー、予想通り壁に方陣を埋め込んでるのこ。ここがブーストで・・・えぇ、ハイブーストも入ってるぞ?、ええとこの実験のメモは・・・これか。なるほど同じ魔術じゃ効果がでなかったから・・・ブースト、ハイブースト、ブーストの特殊輝石と」


ふむふむ。すごいなぁ。

師匠が見つけた魔道銀で魔術の方陣を描く方法は、魔道具界隈に革命をもたらしたらしい。

まだ迷宮都市まではその恩恵が届いていないが、王都ではすでに魔道銀で方陣を組み込んだ魔道具の研究が始められているそうだ。


「でも、この種類の違う魔術を並べるのってぼくの付与と同じだよね。根底のルールみたいなのはいっしょってことかな」


"同じものは付けられない"


そんなルールがあるとしか思えなかった。

ともあれ、魔銀で魔術を使えるという発想はぼくの課題である武器作成に何かしら使えそうな発想だった。

あとで師匠にアイデア使用の許可をもらおう。

ついでにアドバイスがもらえると嬉しいのだけど・・・師匠の気が乗ればってとこかな。



「いいよー」


使用の許可は簡単にもらえた。

というか、そもそもが技術契約をしていないので誰でも使えるようになっていたのだ。


「あー!あの時だ!あの時ぼくが契約忘れなければっ!!」


今ごろは大金持ちだったのに。

師匠の新技術は携帯ランプによって広まった。

携帯ランプを商業ギルドに持ち込んだ時、師匠が使いまくった魔物素材の補填ばかりに気が向いていて技術契約を忘れていたのだ。


もちろん、商業ギルドの職員は忘れない。これはすごい新技術だなと思えばきちんと製作者本人に技術契約の是非を確認してくれていた。

・・・・・・

寝たまま安楽に生活する技術に頭を悩ませていた師匠に対して。

うん。

師匠は許可しちゃったのだ。

便利になるならいいことだ、みんなで楽にすごそうよ、と言ったとか言わなかったとか。

かくして師匠の技術は全国に、無償で広められることになったのだ。


「ぬふぅうう!」


後悔先に立たず。

がっくりときた。





数日呆然としていたぼくだったけど、依頼のことを思い出した。

そうだ魔道具剣作らないと、と。


とは言ってもアイデアはない。

うーんと唸りながら今の手持ちとジザベルからの依頼を思い出す。


『属性』の保存できる道具類は学園で手に入れられたモンスター素材。特に竜素材が強力だ。


火炎竜のウロコから『火属性 中』『硬い』『焔』

地竜素材から『土属性 中』『硬い』『剛体』

飛竜素材から『風属性 小』『飛翔』

火竜素材から『火属性 中』『火属性+』

水竜素材から『水属性 中』『水属性+』『流水』

氷竜素材から『水属性 中』『冷気』

黒竜素材から『速度+』『耐久+』『威圧』

聖竜素材から『治癒+』


それからジザベルにもらった金属素材。


白金

魔導銀

それから

神銀ミスリル

流体金属のエーテル


アダマンタイトとオリハルコンはなかったけど、非常に高価な金属素材をいただいた。ぼくの鍛冶で加工できるかわからないけど試していきたい。

そしてぼくが造らなければいけないのは剣だ。模擬聖剣の素体になりそうな剣。


《火炎弾》のスキルが付いた直剣に火属性を付与し、束に《燃力》の特殊輝石をはめ込んだ火属性でまとまった一本


《三段突き》のスキルが付いた刺突剣に風属性を付与し、束に《速力》の特殊輝石をはめ込んだ手数の多そうな一本


《耐久+》と《生命力吸収》が付いた厚剣に地属性を付与し、束に《自然治癒》の特殊輝石をはめ込んだ耐久力な一本


《水弾》と《瞬歩》が付いた短剣に水属性を付与し、束に《潜水》と《水耐性》の付いた特殊輝石をはめ込んだ一本


この四本の剣、短剣とは異なるものを作らなきゃいけない。

・・・・・・

火属性の剣に『火属性 中』とか手数の剣に『速度+』とか耐久力の剣に『治癒+』とか付ければよくない?

・・・・・・交渉失敗したかな。まぁ考えないようにしよう。どうせ付けても500Gだし。


でもどうしたものだろうか。

素材を並べてみてもひらめくものがない。

四属性がダメってなるとできることが少ないのだ。


「うーん・・・んんんうぬー・・・」


思い浮かばない~

うん。

無理だこれは。

あきらめよう。


「よし、魔導銀であーそーぼ」


何か思い付くかもしれないし。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ