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03 魔王ミモザの闇魔法

「わらわは自分で言うのも何だが……か、可愛いと思うのだ。

 ど、どうだろうか、テオ。

 わらわは、髪もきれいだし、それに、実は、家庭的なのだ。

 目玉焼きも作れるのだ」


 頬を染めたまま、照れたように笑うな。

 あー、くそ。ミモザの小さい牙が見えた。

 まじで魅了されるんだが。

 く、くらくらしてきた。

 それに、目玉焼きは、自慢するような料理じゃねえだろ、くそ。 

 か、可愛い……

 嫁にしたい……

 

 な、なぜミモザに惚れてはだめナのか。

 イや、決して駄目じゃない。

 種族ノ違いが何だというノだ。

 オレは気にシナイ。

 銀髪二白イ肌、トテモ大好物ダ。

 銀髪ナデナデしタイ

 魔王ダカラ何だ、イヤ、マオウデナクテハダメダ。

 …アノオンナ、ウマソウ…


「おらあああああ!」


 ガツン!


 オレは聖剣の柄で額を殴打、魅了される寸前で意識を取り戻した。

 くそ、思考力がゾンビ以下になるとこだったぞ。

 くそお、気を緩めてしまい、魔王に魅了を食らってしまうとは何たる不覚。

 

「ミモザ。

 もうオレは戦う準備は万端だ。

 昂りすぎて、血が飛び出しそうなくらいだ」


 ぷしゅー


 額から血が飛び出した。

 このくらいの出血、魅了から立ち直るためと思えば安い犠牲だ。


「だ、大丈夫なのか?」

「ふん、魔王ミモザと戦うときにこのくらいの小傷、気にしちゃ戦えないしな」

「フフ、それもそうか」


 その答えが気に入ったのか、ミモザは上機嫌に笑うとオレとの距離を詰め、大鎌を振り上げた。

 氷狼フェンリルはグルル、と今にもオレをめがけて飛び掛かってきそうな勢いだ。


「フフ、そなたもわらわが心配か。

 なに、一緒に戦うつもりなのか?

 気持ちは嬉しいが……そうだな、相手はテオ一人だからな。

 私も一人で戦おう。

 今日は獲物を独り占めしたい気分なのだ。

 るーちゃん、わらわに任せてくれ」

「キャウ。…クウン」


 氷狼フェンリルのるーちゃんは、主の命を聞き、すぐに戦闘態勢を解除。

 子犬のような声で鳴きながら後ろへ跳躍し、四つん這いで床に座して平伏した。


「るーちゃん、よく躾けてあるな」

「フフ。

 るーちゃんに手は出させないから心配するな」


 オレたちは軽口を叩きながらも、じりじりと互いの間合いを探っていた。


 ミモザは大鎌を構えているため、射程で勝る。

 オレは大鎌の一撃をかいくぐって攻撃するしかないが……それも互いに武器しか扱えない場合の話。

 さりとて勇者と魔王である。

 お互いに武器以外での選択肢がないはずがない。


「ハアッ!」


 先に動いたのはオレの方だ。


 突撃とともに詠唱不要の光魔法「光球ライトニングボール」を数発放つ。

 白骨騎士スケルトン程度であればかすっただけで消滅するくらいの威力はある。

 しかし、なんせ相手は魔王ミモザだ、大した傷にもならないだろう。

 せいぜい目くらましにでもなればいいが。


 光球ライトニングボールの衝撃で床がめくれ砂煙が舞う。

 その向こう、わずかに見えた二つの赤い瞳を目掛けてオレは跳躍し、袈裟斬りを放った。


 ガキィン


 大鎌の一薙ぎによって、オレは聖剣ごと弾き飛ばされた。


「くッ」


 はじき吹き飛ばされたオレは、左手から発した風魔法で衝撃を緩和し、地面に着地した。

 しかし、その際一瞬よろめいた隙ですらミモザは見逃してはくれないようで……砂煙がおさまった時には、ミモザはすでに詠唱を終えていた。


黒棺(ブラック・コフィン)


 ミモザから伸びる黒い影が地面を伝う。

 影はオレを目掛けて伸びてきたかと思うと、オレの周りをしゅるしゅると蛇のように取り囲んでぐるぐると床を這いずりまわった。


 足先から床が薄くなるような感覚が伝わり、オレは慌てて風魔法を詠唱する。

 オレの周りの床はパカリと口を開け、そこには真っ黒な穴が出来上がっていた。


「ははは、さすが。

 魔王の闇魔法ってのは、規格外の威力だな」


 どうにか風魔法の詠唱を間にあわせ、飛翔したオレは近くにあった柱に聖剣を突き刺した。

 なんとか聖剣にぶらさがっているが、下を見れば真っ黒な穴。

 そう落ち着いてもいられない。

 

「なあ、この黒い穴……ただの穴じゃなくて、奈落ってやつだろ?」


 闇魔法には詳しくないが、ダンジョンなどで最も気を付けるべきものはこの奈落である。

 落とし穴の中が奈落だった場合、落ちたら出てこられないばかりか、消えてしまうのだ。


「くくく。

 そんなに気になるなら試してみるか?」

 

 ミモザは目を大きく見開いた。

 すると、ミモザから伸びた黒い影は地面を這い、オレがぶら下がっている柱までたどり着くと、螺旋を描いてぐるぐると上昇してきた。

 影が柱をつたう。

 オレがぶら下がっている位置へ食指を伸ばすまで、もうわずかの猶予もない。


「わわわ、さっきの魔法、床だけじゃなくて柱にも効果あるのかよ」


 オレは慌てて聖剣を抜き、風魔法を噴射。

 まだ奈落に飲まれていない床に着地した。

 オレが先ほどぶら下がっていた柱を振り返った時には、黒い影はすでに柱を奈落と変えてしまっていた。


「くくく、はははははッ!」


 ミモザは笑うと黒翼をはためかせ、漂うようにその奈落の上へ浮遊していた。


「さすがの勇者も、すべてを飲み込む奈落に対しては手も足も出ぬのか」

「ふん、翼がある奴はいいよな。

 さっきから、ミモザが足場を消すもんだから風魔法使って浮いたり、聖剣にぶらさがったりしてるんだぜ。

 少しは休ませてくれよ」


 ミモザの嫌味に対しては軽口で返す。

 当然、戦いの最中に休ませてくれるなどと思っちゃいないけどな。


「そうか、テオは疲れてるのか。……しかし、残念だったな。

 簡単には休ませてやらないのだ」


 くくく、といたずらっ子のように笑ったミモザは、口角をゆっくりあげた。

 オレへ攻撃する最善の手段が浮かんだに違いない。

 手を胸の前で組むと、両手の指を絡ませ、魔力を集中させた。

 バチバチ、と黒い小さな稲妻が両手からあふれる。

 それは、ミモザが強大な魔力を収束させていることを物語っていた。

 ミモザの傍らに控えていた氷狼フェンリルも、巻き添えを嫌がったのか、キャウと小さく吠えた後、一目散に部屋から逃げていった。


冥界への扉(ネザーゲート)


 ミモザの影は増幅し、その濃度を増すと、両手に黒い渦となって巻き付いた。

 深紅の大鎌を掲げると、その黒い渦は大鎌を飲み込んでいき、ミモザは渦の螺旋運動を一層大きくするように大鎌を旋回させた。


「はああああああっ!」


 ミモザは黒い渦が持つ闇の魔力を螺旋状に練り上げ、巨大な渦を作り上げると奈落目掛けて投げつけた。


 空間がゆがみ、奈落は闇の魔力をゆっくりと飲み込んでいく。

 奈落が魔力を飲み込んだ瞬間、静寂が訪れる。

 しかし、奈落でさえその膨大な魔力を持て余したのであろうか。

 闇の魔力があふれ出し、すべてを飲み込んでしまい、あたり一面奈落と化した。


「くっ……」


 オレは床が消える瞬間、天井に向けて飛び上がって聖剣を突き刺した。

 またもやぶら下がって奈落に落ちるのを防ぐしかなかった。


「ははははは、どうだテオ!

 翼のないそなたは、床がないと戦えまい。

 わらわの頭脳に恐れ入ったであろう?」


 ミモザは気分良さそうに高笑いをしている。


「ふん、お前が魔力を使い果たすのを待っていたんだよ」

「減らず口を……わらわの魔力はこんなもので使い尽くしはせぬ。

 それより、いつまで聖剣にぶら下がっているつもりだ?」


 オレはミモザの様子をずっと伺っていた。

 先ほど、特大の闇魔法を打ったところであるが、疲れた様子どころか汗一滴かいていないようだ。

 隙を探ってるが、どうやら待っていたところで事態が好転しそうにないな。

 絡め手でも使うか。

 ぶら下がってる間に魔力も随分ためられたしな。

読んでいただきありがとうございます。


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