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26 元勇者、呪いの眼を話を聞く

「そうだ、これ着ろよ」

「え?」


 オレは猫耳ローブを脱いで、シャオファンに渡す。

 シャオファンの服は切り刻まれて、ちょっと半裸ってレベルじゃないからな。


「ふふふ、テオ様の猫耳ローブだ。

 着れて嬉しい」


 シャオファンはオレの黒い猫耳ローブを着てくるくると回っている。


「……どう。可愛い?」

「この猫耳ローブって可愛いんだな」

「もう、そこはシャオファン可愛いよって言えばいいんだよ?」

「……はいはい、可愛いよ」

「あ。

 そういえば、テオ様猫耳似合うんだね、ネコ族女子にすっごいモテそう」

「うるさい、寒いから早く行くぞ」

「あ、待ってよ、テオ様」

「今からティムール隊に戻るんだから、テオ様っていうなよ。

 オレはリン・テオドールだからな」

「リンちゃん」

「ちゃんづけするな」

「リン」

「それでいいんだけど、むずむずするな」


 早足で部隊へ戻るオレの手をシャオファンが握ってきた。


「おい」

「え?

 だって、恋人が久しぶりに再会した設定じゃないの?」

「そうだけど……」


 シャオファンの手は温かくて肉球がもちっと吸い付いて来て気持ちいい。


「ふふ、肉球触っていいよ?」

「……早く行くぞ」


 触っていいって言われると、ちょっと恥ずかしくなるんだよな。


 オレたちが街道を進んでいくと、ティムール隊が集合していた。

 みなで魔動車に乗り込み、今にも出発するといったところだ。


「ぐははは、あらかた片付け終わったぞ」

「あ、リン。

 半袖半パンで可愛い」


 アイカがくくくと笑っている。


「うるさい、シャオファンにローブを貸したから半袖なだけだよ」

「はい、荷物」


 エセルがオレの荷物を渡してくれた。


「悪い、助かる。

 隊長、オレの……幼馴染のシャオファン、どうすればいいですか?」


 ティムール隊長は考えながら、現実的な案を話してくれた。


「そうだな……他の獣人の男たちは、オレ達と一緒にクルトの街へなだれ込む気だ。

 女たちは、他の部隊と一緒にファラスの街を目指しているから、そっちと合流するといい」

「そうか。

 それが一番、安全かもですね」

「リン、お前がファラスの街へ戻るまで、その子を軍で預かるように言っておこう」

「ありがとうございます」


 隊長と話し終えたオレは、シャオファンの元へ戻った。


「ここから、街道をまっすぐ行って獣人の女たちと合流してくれ。

 オレが戻るまでシャオファンを軍で預かってもらうから」

「……ずっと一緒にいれないの?」

「わがまま言うな」


 オレはシャオファンの頭をポンポンとしてやる。


「わかった。

 いい子にしてるよ」

「頼む」


 オレはその場でシャオファンを見送った。


「じゃあね、リン」

「……またな」


 シャオファンはオレの方をたびたび振り返り、ずっと手を振っていた。


「愛されてるね、テオ」

「人懐っこいやつなんだよ。オレ、着替えてくる」


 アイカにそう言いながら魔動車に乗り込んだ。

 エセルとアイカの側を通り抜けて魔動車の荷物置きへ行き、替えの猫耳ローブに着替えた。


 バアアン!


 耳をつんざくような音が聞こえてきた。


「くそ、魔導士が潜んでやがったのか!」


 ティムール隊長と、エセルが飛び出していった。


「あの音だと、誰かケガしてるかもね」


 アイカも車から降りて走り出した。


「オレも……」

「リンは残ってて」


 アイカは振り返って笑ってくれた。


「エセルから聞いた。

 エセルを助けた。

 風魔法ですっごく早かったって。

 それにその女の子も助けたの?」

「ああ」

「やるね、リン。

 でもね、頑張る子は無理をしちゃう。

 私たちに任せて休んで?」

「いや、オレは……」

「オレは?」


 オレは全然平気だと言いかけて、あまりにも強すぎると、疑われてしまうよな。

 今オレは上級職ですらないんだし。


「じゃあ、オレは休む」

「うん、任せて」


 アイカはオレに手を振って戦場へ駆け出して行った。

 今のうちに着替えておくか。

 オレは荷物置き場に行って着替える。

 他の座席は外から丸見えだからな。


「頭ポンポンとしてたわね」


 誰もいないのに声がする。

 エミネだな。


「うるさい、知り合いだよ」

「……どうだか、あっちの女の子はだいぶテオに惚れてるみたいだったけど?」

「助けてあげたからな、多少好感度はあがってるかもな」

「へー」


 いや、その「へー」ちょっと感じ悪いな。

 軽口はさておき、隊長たちが戻るまでにエミネと話しておこう。


「エミネ、クルトの街や周りの村の獣人が奴隷にされてるらしい」

「ひどいわね」

「なあ、エミネ」

「何よ」

「お前も人狼だから獣人だよな。

 ヒューゴーが街を爆破するらしいが、あいつのことだから獣人が死ぬなんて全く気にせずに爆破するぞ」

「ヒューゴーがどんな奴かくらい、獣人であればみんな知ってるわよ。

 ネコ族の村を襲って女子どもをすべて奴隷にした後、男たちを集めた家を爆破したんだもの」


 エミネの言葉には、怒気が含まれていた。


「オレはヒューゴーの手伝いなんてしたくない。

 でも、背いたら命令違反に当たるんだよな」

「そうね、それがあたしが監視してる理由だもの。

 命令違反があれば、あたしがテオを殺すわ」

「クルトの街の獣人を犠牲にしてもかまわないのか?」

「……王都に姉がいて、今はホワイト公の庇護下にある。

 だから、あたしはどんな虫唾の走る行為だって……従うわ」


 エミネの表情は見えないが、その声には確固たる意志があるように聞こえた。


「お前の事情は分かったよ」

「……街が爆破されるのを見過ごすことが、正しいなんて思ってないわ。

 でも、お姉ちゃんはたったひとりの家族だから」

「責めてるわけじゃない。

 エミネ。

 もし、お前がヒューゴーの行いに怒りを感じているのなら、お前がどうやってホワイト公に報告を行っているか、教えてくれ」

「……それは……」

「頼む」


 オレがエミネに頼んでいるのは極秘事項であるはずだ。

 監視対象であるオレに教えてしまえば、エミネの命すら危うくする可能性がある。


「指輪とイヤリング、これはテオと同じ。

それと……」


 エミネは随分悩んでいるようだ。


「あたしの眼よ」

「眼?」


 エミネの眼は金色に輝いていて印象深い。


「眼には呪いがかけられていて、詳しい方法は教えられないけど、あたしが見た記憶を保存し、取り出して映像にすることが出来る」

「……大丈夫か、それ今オレに話してしまっても」

「言ったでしょう?

 眼だけよ。

 見たものしか復元できないみたい。

 あたし、何回か試したから確かよ。

 あたしが聞いたこと、話したことはホワイト公の耳には入らないわ」

「ありがとう、エミネ」


 オレはエミネに頭を下げた。


 監視役としては懲罰モノ、極秘事項にあたるレベルのことを、エミネはオレに話してくれた。


「あたしだってヒューゴーの支援なんてしたくないもの」


 ブロロロロ。


 急に魔動車が動き出した。


「ど、どういうことだ?」

「あたし、見てくる」


 エミネは今、透明になっている。

 偵察にはうってつけの人材だ。


「任せた」


 エミネがそうっと荷物置きの間の布をめくり、あちらの様子をうかがう。


「シアドステラの兵士。兜が上等だから、偉い人だと思う」

「助かるよ」


 オレはエミネと入れ替わり、聞き耳を立て隙を伺う。

 上等な兜をかぶったシアドステラの指揮官は、鹵獲した魔動車の性能を知り、喜びであふれていた。


「ははは、何だこれは!

 魔力で走る馬車……こんなものはシアドステラにはない。

 奴隷狩りに失敗した指揮官には土産が必要なのだ、これさえあれば、ふふふ。

 奴隷狩りに失敗したお目こぼしには十分だろ、それどころか出世もあるかもな。

 ふふ、ははははは」

 

 ゲスだな、こいつ。

 少し質問でもしてみるか。


「今にも必死で戦ってる味方をどう思う?」

「あ?

 ふん、援軍も来ねえ。

 負けに決まってんだろ、こんな戦。

 降参しないセンスのなさを疑うね。

 え?

 今、オレは誰と話していた?

 誰だ?

 誰かいるのか?」


 あたりを見渡すが、誰も見当たらなかったようだ。

 オレが荷物置き場に忍んでいることには気づかなかったらしい。


「誰もいねえか。

 ふん、この世はうまくやったもんの勝ちなんだよ。

 上の貴族には逆らわず、獣人奴隷をこき使ってさ。

 へへへ、テオよりヒューゴーについていって良かったぜ。

 オレは、生き方ってもんを知ってるからな」

「そうか、じゃあ教えてくれよ」


 オレは荷物置き場から飛び出て、指揮官の首に剣を這わせた。


「ひ……」

「生き方ってもんを知ってるならさ、

 ヒューゴーについて知ってることを教えてくれると助かるな」

「た、助けて……」

「できれば、爆弾をしかけた場所とかさ」

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