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24 元勇者、奴隷狩りを狩る

 魔動車での快適な旅は続く。


「卵サンド作ったよ」


 アイカがお弁当を作って来てくれたようだ。

 サキュバスだから朝は弱いのに……


「じゃーん」


 アイカの手でしゅるっと布が取り除かれ、美味しそうな卵サンドがずらり。


「うまそうだな」

「うまそうじゃないんだよ、リン。

 うまいんだよ!」

「エセル、何でお前が得意げなんだ。

 気に食わないな」


 アイカが作ったやつで得意げにするなよな。


「食わねえって……じゃあ、ボクが一番最初にいただきます!」

「こら、オレだって食べるって」


 エセルもオレも、アイカが作った卵サンドに夢中だ。


「ワシにも食べさせてくれ」

「んーと、口に入れればいいんですか?」


 何でこんなワニに食べさせなきゃいけないんだって思ったけど、操縦中のティムール隊長だけお預けってわけにいかないからな。


 大口をあけたワニ顔にぽいっとサンドを投げ込んだ。

 ティムール隊長はバクンと一口で卵サンドを頂く。

 隊長にはオレの頭くらい軽く一口で食べられそうだな……


「美味しい」


 アイカが作った卵サンドをおかわりした。


「そ……そうかな。

 私、料理得意じゃないけど……卵サンドは、みんな食べるかなって」


 たぶん、アイカは器用な方じゃないんだろう。

 この卵サンドはよく見ると不揃いで、挟まれている卵の量もばらばらだ。

 でも、やっぱり美味しいよ。

 一生懸命作ってくれたからだろうか。


「あ。見えてきたよ」


 エセルが指さした前方に向かって目を凝らした。

 砂漠のずっと向こう、建物が見えた。


 ん?


 街道に豆粒みたいな人影が並んでいた。


「人が列をなしてる……」

「もう少し、魔動車で近づくが……いつでも戦闘態勢に入れるようにしておけ」

「「了解!」」


 オレたちは武器に手をかけ、4人で四方を警戒する。

 オレは猫魔導士キャットメイジの職についているが、どうにも杖は使う気にならず、支給品の剣を身につけ、すぐに抜き放てるように構え、魔動車の左を見張った。

 そういえば、聖剣は家の傘立てにさされたまんまだ。


 近づくにつれ、列の詳細が目に入ってくる。

 腕輪をつけられ、麻紐で数珠つなぎにされている獣人たち。

 どの獣人たちも悲壮な表情をして、騎馬兵に追い立てられるまま、クルトの街へ歩いていた。

 騎馬兵と、歩兵が繋がれた獣人たちの監視をしており、かなりの数がいる。


 奥歯をぎりりと噛み締めた。


「ヒューゴーめ、奴隷狩りなんてしやがって……」

「リンはよく知っとるな。

 クルトの街を指揮する敵将、ヒューゴー・フレアウッド。

 爆炎の勇者とも呼ばれているな」


 おっと、一兵卒が敵将の名前を知っていたのはあやしまれるかと思ったが……


「ぐはははは、リン。

 お前、新聞読めるなんてすごいな」


 隊長に頭をくしゃくしゃっとされた。

 あ、良かった。

 魔王軍でも、敵将の情報は新聞で知ることができるんだな。

 助かった。


「うん。

 リン、すごい。

 文字は難しい、私も勉強中」


 アイカがぱちぱちと手を叩いて驚いていた。


「むむむ、ボクだって勉強するんだからね!」


 エセルがすごく悔しそうだ。


「テオがクルトの街を離れた今、ヒューゴーがこのクルトでの全権を握っとる。

 ヒューゴーは奴隷商とつながり、クルトの周りの獣人集落を片っ端から襲って奴隷にしとるらしい。

 今までは、テオがいたから自由にはできなかったようだがの」

「隊長、獣人のみんな可哀そうだよ」

「私、助けたい」


 エセルもアイカもこの状況に心を痛めているようだ。


「ぐはははは、安心しろ。

 ワシらに下された命令は、連れ去られた獣人を解放し、クルトの街へなだれ込め、だ」

「やった!」


 エセルは武器にぐっと力を込めた。


「ワシのタイミングで、魔動車から飛び降りろ。

 目立って暴れるのがワシの役目。

 エセルとリンは、敵のせん滅。

 アイカは縄を解いてやれ。

 ナイフくらい持ってるだろう」

「「了解!」」

「3、2、1……降りろ!」


 魔動車を飛び降りたオレ達。

 ただ、見張りの兵は列の横を通り過ぎる魔動車に気を取られているようだ。

 やがて止まった魔動車に兵たちの視線が集まる。


「な、なんだ!

 馬車?

 て、敵襲か?」


 列の後ろの方の騎兵は、魔動車に気を取られてぞろぞろと集まってきた。


「へへ、お先!」


 エセルが飛び出して行って、魔動車に集まった歩兵を槍で横薙ぎに吹っ飛ばす。


「ぐあ」

「へえ、なかなかやるな。

 エセルのやつ」


 群がる歩兵を次々に槍で吹っ飛ばしていくエセルの力と敏捷性はなかなか目を見張るものがあった。


「ぐははは、エセルには負けられんな!」


 ティムール隊長は人の背丈ほどある戦斧を投擲し、見事に歩兵をまとめて吹っ飛ばして見せた。


「「ぎやああああ」」


 力任せではあるが、確かなコントロールにオレは思わず拍手をした。


「お見事」

「ぐははは、そんなに褒めるな」


 隊長はゆっくりと前進していく。


 近くの敵はあらかたエセルと隊長が片付けたので、アイカはあたりを見渡し、とらえられた獣人たちへ近づいていった。


「私、麻紐切るね」


 アイカが飛び出して行ったが、立ち眩みを起こした獣人の老婆がいた。


「だ、大丈夫?」


 アイカはその老婆に駆け寄り、回復呪文を唱え始めた。

 しばらく、かかるだろうな。


「じゃあ、オレは麻紐を斬るとするか」

 

風刃ウインドエッジ


 スパスパスパスパ

 長い列の麻紐をすべて切り離した。


「な、なんだ!」

「何でかわからんが、逃げれる、逃げれるぞ!」


 獣人たちは逃げようとしたが、歩兵の中にいた魔導士が≪炎のファイアアロー≫を唱え、牽制すると獣人たちの足は止まった。


「く、くそ。

 炎魔法か……」


 獣人は炎耐性が低いため、炎魔法が直撃すれば致命的ダメージを受けるのだ。


「逃げるな、貴様ら!

 逃げた奴から≪炎のファイアアロー≫の餌食にしてやるぞ」


 上等な兜をかぶった騎馬兵が指示をとばし、この場を立て直そうとしていた。

 この場の指揮官だろうな。


「うわわわわわ」


 前の方に突っ込んでいたエセルが、突っ込み過ぎて処理しきれなくなったのか、ぞろぞろと騎馬兵を引き連れて走って戻ってきた。

 余裕がなくなったエセルは四つん這いで走っている。


「た、助けてええ!」


 おっと、やばいエセルが追いつかれるかもしれないな。

 さすがに騎兵の方が直線は速いな。

 オレは、エミネに連絡をした。

 スパイとしてどこまで戦っていいのか聞いてないんだよな。

 オレは小声で左手につけた指輪でエミネに話しかける。


「おい、エミネ、聞こえたら返事しろ」

「……む」

「おい、オレ戦うぞ。

 いいんだな、人間倒して」

「むにゃ……チーズしゅき……むにゃ」

「エミネのバカ野郎!」


 あいつ今昼だぞ、いつまで寝てるんだ!

 それに魔動車の周りで戦いがあってたのによく寝れるな。

 あー。もう知らない。

 普通に倒すからな。

 そうしないと、スパイと疑われてしまう。


「うわあああああ」


 騎馬兵たちを引き連れて必死に逃げるエセルの進行方向に立った。


「エセル、伏せろ」

「え?

 な、何なのリン」

「いいから、伏せろ!」


 オレは抜刀してエセルに飛び掛かった。

 エセルは慌てて地面に伏せた。


「死ねええええ!」

「う、うわああああ」


 騎兵たちがランスでエセルに総攻撃をかけた瞬間、オレはスピードを上げ突撃し、ランスごと騎馬を真っ二つにする。


「「ぎゃああああ」」


 素早く納刀して、落馬して痛みに騒ぐ兵士たちにはとりあえず、首筋に手刀をかましておく。


「てい、てい、てい」


 騎兵たちは動かなくなった。


「ふう……エセル。

 あぶないところだったな」


 オレはエセルの手を引っ張り起こしてやる。


「ありがとう」


 エセルは腑に落ちないといった顔でオレにこう言った.。


「ねえ、リン。

 リンは魔導士じゃないの?」


 しまった……

 慌ててたから、つい抜刀して突っ込んでしまった。

 くそ、どう言い訳したもんかな……

短編書きました。良ければ読んでいってくれると嬉しいです。

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