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21-1 勇者のいない勇者パーティー(ジャック視点)

 テオは表向き、特別な任務についてる最中らしい。

 テオが筆頭勇者どころか、勇者を剥奪されたことを知っているのは、ホワイト公と勇者たち。

 そしてオレ、戦士ジャック・サーぺンティン。


 テオが追放された後、オレたちは王都に戻り平民勇者エディ・パーカーの元で世話になることになった。


「ジャックさん、ミリアさん、アイリーンさん。

 噂に名高いテオ隊の皆さんと一緒に戦えるなんて光栄です」


 エディはオレ達にもさわやかな笑顔で挨拶をしてくれた。

 他の勇者たちはオレ達平民なんかゴミを見るような目で見下してくるからな。

  

「よろしく頼むよ」

「「お願いします」」


 ミリアとアイリーンは少し緊張しているようだ。


「ええ、今日からボクの隊で預からせていただくわけですから、みなさんにはキッチリ働いてもらいますからね!」


 冗談めかしてエディは話すが、テオを失ったオレ達へ対するフォローはしっかりと伝わってくる。

 ……きっと、ホワイト公に従い、テオを追放してしまったことに引け目を感じているんだろう。


「さて、ボクの部隊の決まりなんかを説明します。

 うちはテオ隊と違って100を超える大所帯なので、それぞれ職業によって決まり事が違ってきます。

 それぞれ、ひとりずつ説明しますね」


 オレとミリア、アイリーンはそれぞれ離れた場所に案内された。


「では、戦士隊の説明をする。

 パーティーの盾となるわけだから、持っている盾で攻撃や魔法をいなし、最前線で戦うわけだが……」


 体格の良い戦士から、しっかりと練られた戦法を教え込まれた。

 正直、分からない部分がかなりあるが……

 何とかするしかない。

 

 ミリア、アイリーンも戻って来たため、これからエディ隊の編入試験を受けることになる。

 中級者向けのダンジョンで、4人パーティーあたりで力試しに挑むようなところだ。


「さて、石板をチェックさせてくださいね」


 オレたちは、自分の石板をエディに渡した。


「さすがのレベルとステータスですね、さすがテオ隊のみなさんだ」


 エディはうんうんと頷きながら、みなのステータスなどをチェックしていた。

 オレたちはテオが強いモンスターをぶっ倒してたからレベルはかなりのものだ。


「みなさんならこのダンジョン物足りないくらいですかねー。

 さて、そろそろ行きますか。

 試験官と、みなさんの補佐は私が務めます……といっても、私は危険な時に手を出すくらいで基本、何もしませんけどね」

「「ええええ!」」


 オレとミリアとアイリーンはびっくりして大きな声を出した。


「いや、ほらもう一枚前衛いないと……」


 オレは怖くて後ずさった。


「何言ってるんですか、ジャックさん。

 みなさんのステータスだったら、このダンジョンくらいの敵は大丈夫ですって……」


 エディはぐいぐいとオレを押してくる。


「補助魔法いっぱいいっぱいかけないと怖いですよぉ」


 アイリーンはいつものように泣き言だ。


「道中で補助魔法かけながら、行けばいいじゃないですか、ほら、行きますよ」


 オレたちはエディに押されてダンジョンに挑むことになった。


 ★☆

(中級者用ダンジョン:セルヴァの洞窟)


 いきなり暗がりだ、クソ。

 めちゃくちゃ怖ええ。


「こ、怖いですよぉ」


 アイリーンが早速怖さを口にした。

 オレは我慢してたんだがな。


「え?

 皆さん何で明かりもなしに進むんですか?

 ミリアさん≪松明トーチ≫の魔法ですよ」

「私は補助魔法なんて地味な魔法は使いませんの」

「あはは、そうなんですね。

 えっと、じゃあ誰が?」

「「テオ」」

「え?そうなんですか、珍しいですね。

 勇者の魔法力は割と攻撃用に取っておくんですが……」


 ……


「じゃあ、ボクがつけますね」


 エディが≪松明トーチ≫を使うと、辺りがぽわっと明るくなった。

 テオが使っていたものと同じ自動追尾タイプ。

 使用者と適度な距離をとって追いかけてくれる。

 テオの魔法より少し暗いが……


「あら、テオの≪松明トーチ≫より暗くありません?」

「……へー、そうですか……」

「ねえ、皆さんもそう思いますよね、テオの方が明るかったって」


 やべえな、ミリアはその場の空気っていうものを知らない完全な自由人だからな。

 普段は魔法使いが≪松明トーチ≫を使うものとか言う常識をどこかに置いてきたタイプだから。

 さらにひどいのは常識をたとえ知っていたとしても「だからどうだというのです?」って平気で言ってしまう。

 エディの顔が引きつっている。

 

「おい、やめろって」

「ねえ、アイリーン。

 暗いですよねえ、これじゃ私心細いですわ」

「……そ、そうですねえ。

 暗くて怖いですよお……」


 あ、アイリーンが怖がって常識より怖いのを優先して、愚痴を漏らしやがった。


 エディから奥歯をぎりぎりきしませる音が聞こえてきかと思えば、血走った目のまま、剣で地面に魔法陣を書き、聖水を振って魔法を発動。

 ≪松明トーチ≫に発動した魔力を吸収させた。


「はあ、はあ。

 これでどうです?

 魔法を強化する魔法を全力でかけました。

 ほら、まさに外のような明るさでしょう?」


 ≪松明トーチ≫からは燦燦と光が漏れ出ている。


「そうですね、明るくていいのではないですか。

 まあ、テオは魔法陣で増幅なんてしませんでしたけど」

「……あ?」


 やべえ、ミリアの言葉に、エディが我を忘れる寸前だ。

 血走った目でミリアを睨んでやがる。

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