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17 元勇者は猫魔導士に転職する


 長身のエルフがローブと長い帽子を着て、オレを待っていた。

 左手には分厚い本を持っていた。

 何らかの聖典かな。


「あなたには様々な未来があります。

 さあ、石板に触れ、浮かび上がる文字を読み取り、その中で希望する職業を選ぶのです」


 長身のエルフの神官に、大きな石板へ案内された。


「両の手を合わせ胸の前で組みなさい」


 指示されたとおりに手を組むと、神官はオレの手の上に、自分の手を重ねた。


「全身の力を抜いて。

 魔力を自分の手に集めるイメージです。

 そう。

 では、右手を石板の上へ置いてください」


 石板の上に置いたオレの手に、神官がまた手を重ねて呪文を唱えた。


「自身の根源たる魔力を、何物にも染まらぬ魔素として取り出したまえ。

 その魔素がなじむ職業をこの者に示したまえ。

 さあ、名前を唱えるのです」

「テ……リン・テオドール」


 神官が唱え終わり、オレが名前を名乗ると、オレの右手に集まった魔力が石板に流れ込むのを感じた。

 魔力の流れ込んだ石板は青い光に満ちており、右手の魔力が抜け終わったと同時に、石板から青い文字が次から次へと浮かび上がる。


「ちょ、ちょっと多すぎて読み取れない」

「あなたが持っている石板をこの大きな石板に乗せなさい。

 青い文字が石板に染み込みますから」

 

 オレは大量に文字が現れては消えていくのに慌てていたが、神官の指示にとりあえず従うことにする。


「収まったか」

「もう、あなたの石板を取り上げていいですよ」


 自分の石板を持ち上げ、手に持ってみた。

 石板は青い光でいろんな職業を示していた。


「戦士、魔導士、聖者……それの上級職が転職先にあるのはわかったけど……」

「へー、さすがにいろんな職になれるのね。

 でも、不思議。

 基本職の猫戦士の上級職になれないみたいね」

「オレでも猫戦士になれるの?」

「姿をその職に寄せてればいいらしいわよ。

 もしかしたらスライム戦士にもなれるんじゃない?」


 スライムになった姿を想像してみる。


「さすがに嫌だな」

「あたしも嫌」

「冗談は置いておいて、さて、いろいろな職になれるみたいだし、何にしようかな」


 やっぱり選択肢が多いのはいいな。

 ウキウキする。


「賢者やパラディンにも慣れるみたいだから、それでいいかな」

「ダメに決まってるじゃない。

 何でネコ族の新人が賢者やパラディンなんて人間職のさらに上級職についてるのよ」

「確かに。

 じゃあ、どうするんだよ」

猫戦士キャットファイターか、猫魔導士キャットメイジとかじゃない?」

猫盗賊キャットシーフ猫狩人キャットハンターもあるな……

 なあ、この職業欄の隣にある三角帽子何?」

「そうよね、転職したことないって言ってたわね。

 三角帽子のマークは『魔法適正あり』のマークよ。

 それがないと職業は、かなり魔力が下がるわ。

 まあ、魔法適正ない職業は体力や素早さなんかが高くなるからどっちもどっちなんだけど」

「困ったな、オレは勇者だけに剣も魔法も使いたいぞ。

 ちなみに、エミネは?」

「私は狼勇士ウルフウォーリアよ。

 一応、上級職だけど」


 エミネは髪をかき上げて、ちょっと自慢げだ。


「そうか、エミネが前衛ならオレは後衛にするか……じゃ、猫魔導士キャットメイジにするよ」

「そんな簡単に決めていいの?」

「ほら、エミネとダンジョンとか潜るんだったらバランスいいほうがいいだろ?」

「何でテオと一緒にダンジョン潜るのよ」

「え?

 ダンジョン嫌いか?」

「いや、嫌いってわけじゃないけど……」

「じゃあ、行こうよ」

「……テオがそこまで言うなら行ってあげてもいいけど……」


 エミネは髪をくるくるいじりながら顔は平静を装っているけど、尻尾がぶんぶんと動いている。


「ははは。じゃあ、行ってくるよ」

「何がおかしいのよ」


 オレが神官の方へ歩き出しても、エミネの尻尾はまだくるくると動いていた。


「決まりましたか?」

「はい」


 もう一度、石板の間へ。

 大きな石板の前に立った。

 神官にうながされるままに右手を石板の上に置く。


「さあ、その名と職業を猫神バステト様へ誓うのです」

「……リン・テオドール。

 オレは、猫魔導士になるぞ」


 青く光る石板から右手を介してオレの魔力が取られた後、石板は青く光りだした。


「おお……まぶしいな」


 石板から青く光る文字が飛び出してオレを取り囲んだ。


「バステト様、新しい道を歩き出したリン・テオドールへ祝福を」


 神官の掛け声で青い文字はオレの体へ入ってきたかと思うと、青い光はたちまち消えてしまった。


 神官に頭を下げ、石板の間を出てエミネの元へ向かった。

 

「見た目は変わらないように見えるけど、どう?

 うまく行った?」

「ニセモノだなとは、ならなかったけど」


 オレは取り出した石板に触れた。


「ねえ、あたしにも見せてよ」


(名前:テオ・リンドール

 職業:無職→猫魔導士キャットメイジ

 筋力:100%→90%

 体力:100%→80%

 魔力:100%→115%

 敏捷:100%→130%

 光魔法耐性:100%→10%

 闇魔法耐性:100%→150%

 炎魔法耐性:100%→50%

 水魔法耐性:100%→75%

 その他属性耐性100%→100%)


「え?

 魔導士なのに、敏捷の方が補正が高いの?」

「魔法には注意だな……水にも火にも弱いのか」

「まあ、火に弱いのは獣人はしょうがないわよ」

「ただ、中々戦えそうだな。

 速いのは助かる」

「あ、テオ。

 のんびりステータス見てるわけにも行かないわよ」


 席を立ったエミネはオレの手を引っ張った。


「さ、宿屋に帰ったら引っ越しの準備するわよ」

「ん?

 どこに?」

「牙爪隊の寮よ。

 言わなかったっけ?」

「聞いてないぞ!

 気が休まる暇もないじゃないか」


 文句を言いつつ、宿屋へ向かった。

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