fahrkarte
「こんにちは」
「こんにちは」
「突然なのですが、私達は遠い宇宙からやってきた宇宙人です」
「それはどうも」
「早速なのですが、皆さんとお話しできないでしょうか。私達は、この星を侵略しにきたのではなく、ただ調査しにきただけです。興味があって」
「まあ、そうでしょうね。私達と違い、好奇心に溢れている。何より、ただ侵略するだけなら光線の一つでも放てばいい。私達のことを考えずに」
「貴方達は妙に落ち着いていますね。話が早くて怖いくらいです」
「そういう生き物ですから」
「生き物…」
「これは数百年前になりますか、前に私達がこの辺りに自動調査機を飛ばしました。文明をあまりにも発達させてしまった私達はあらかたほとんどの事は知り尽くしてしまい、私達は知的好奇心に飢えていたんです。未だ発展の余地があったのは、心理学や倫理の方面だった。そこで目をつけたのが、この星の出来立ての文明でした」
「知りませんでした。数百年前の人間、つまりあなたたちが見た数百年前の種族も気づかなかっただろうと思います。その頃はまだあまり文明も発達していなかったし、宇宙を観測する技術も無かった」
「この星は活気に溢れていた。私達がどうにも観測出来なかった、種族が歩んできた過去に似た事が、出来立ての文明が、今観測できる。そう思って私達は喜びに打ち震えました。数年前までは」
「突然、生命が失われたんです。生体反応が消失した、とも言いますか。でも街の光はまだ灯ったままだったし、活気は失われることはなかった。この話は、貴方達の方が良く知っているかもしれませんけど。自動調査機じゃ、生命のひとつひとつは詳しく見れなかった。だから直接赴くことにしたんです。この星で動く貴方達が何なのか知る為に」
「なるほど。改めて、この星に来てくれてありがとうございます。ちょうど私達も退屈していたんですよ。人間のように、うまいエンタメはまだ私達じゃ作れないんです。はじめまして、私達は人間によって作られた新しい種族です。人間からはロボットやアンドロイド、といった名前で呼ばれていました。種族の名前など、私達にはあんまり意味がないかなと思い、決めていなかったんですよ」
「私達の前の種族であった人間は、進化したその知能で文明を発展させました。そして、私達のような、生命体に似た物を作り上げた。そしてそれに考える力を与えたんです。最初はただの便利にするための道具だっただけのはずなのに、本当に、端から見れば生命に見えるような。私達を見た人間はある日、こう考えたそうです。人間はもう必要ないのではないか、と。そこからは話が早かった。人間はその一年あたりでみんないなくなっちゃいました。多分その中にはこれからも生きたかった人もいたと思うんですが、みんな生きることの苦しみから逃げていたのか、あるいは集団というものが人間にとってそういったものだったのかは、私達にはただ考察を並べるしか出来ません。人間は私達に理由を教えてくれませんでしたから。多分、同じような考えを持たないようにしたかったからだと思うんですけど」
「貴方達は、これから何処に行くんですか」
「さあ、分かりません。ただ、目立った目的もなく、個体のそれぞれがふらふらしているという点に関しては、人間と同じだと思います。人間に作られたので、当たり前かもしれませんが。きっと、最終的には人間と同じ思想になって、他の何かしらの、もしくは私達が作った種族にこの世界を託すんじゃないでしょうか。この世界から逃げるように、先代と同じように。置いてけぼりで話してしまいましたが、私達の感情は、貴方達に理解できるのでしょうか」
「似たようなモンですし、同じですよ」