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高速道路にて美少女に血を舐められたらお巡りさんが現れた

新作です。現代吸血鬼モノとなります。

基本のんびり展開です。

よろしくお願いいたします。


 ベチャッ

 

 不快な音とともに、フロントガラスに小さな白いシミが広がる。


 ベチャッ


 間をおかずに、二度目。


 実際のところ二度どころか同様のものがフロントガラスのあちこちに付着している。


 もう数えるのも馬鹿らしいくらいに。


 夏の夜の高速道路は、特に山間部など田舎を通る道はとにかく虫が多い。


 虫の中でも特に蛾が多い。


 蛾って奴は種類も多ければ大きさも様々でなおかつ夜行性も多いときた。


 飛び方が下手糞な上にあのブヨブヨした腹は(腹と呼んでいいのか知らないが)極端に防御力が弱い。


 そのくせ光に集まる習性を持っているから道沿いの外灯や車のライトに寄ってきてははねられてハラワタの中身をぶちまけながら死んでいく。


 このハラワタがまたたちが悪い。


 洗い流そうとウォッシャーを動かしても、ただでは死なん!とばかりに汚れが広がるばかりで中々綺麗にならない。


 しかも何かでふき取らないかぎり完全には落ちない。


 同じ夜行性で飛ぶのが下手だが身を守る術は最凶な、日本昆虫界随一の防御力を持つカブト虫を見習って欲しいものだ。


 だがカブトはカブトであの防御力が逆に仇となりガラスを突き破ったなんてとんでも話も噂で聞くが。


 しかし飛び下手なやつらに飛び上手なトンボクラスの回避能力は期待できない。


 己の身くらい己で守って欲しい。


 とにかく、スプラッタ好きじゃない俺としてはこの汚れは勘弁してほしいものだった。


 ドべチャッ!


「まじか」

 

 今度のは一際大きかったうえ、ちょうど視界の真ん中にきてしまった。


 おまけに、ちぎれた死体の破片つき。


 ため息をつきながらウォッシャーを動かす。


 この分ではガラスだけでなく車のフロント全体に虫の殺害痕が付いていることだろう。


 昨日洗車したばかりだったのにな、などと愚痴りながらアクセルを踏む足を弱める。


 ウィンカーを出しながらハンドルを左に操作する。


 同時に軽くブレーキをかけ、徐々に減速。


 青を基調としたバックライトの中央で、浮かび上がるように三桁の数字を表示していたデジタルスピードメーターが見る見る数字を下げていく。


 十分にスピードを落として『P』と書かれた看板のあるわき道へと車を進ませていく。


 そこは小さなパーキングエリアだった。


 トイレと、三つほど並んでいる自動販売機と、あまり明るくない外灯。


 珍しいことにトラック一台すらも停まっていない決して広くない駐車場。


 今の自分にぴったりのパーキングエリアだ。


 愛車を駐車場の一番端に停めて、握りっぱなしだったハンドルから手を離してシートにもたれた。


 両肩が張っている。


 背中は固まっている。


 座りっぱなしで尻も重たい。


 両足はだるい。


 要するに、疲れていた。


 体も、心も。


 止まったはいいが、少し休まないと車外に出る気力すら出ない。


 暗くなったダッシュボードを眺めながら、何か考えるわけでもなくただ座り続けた。


 このまま寝ちまいそうだ、などと思ったが、頭の中はともかく、体は生理的欲求を訴えはじめた。


 要するに、トイレに行きたくなった。





「涼しいもんだな」


 とりあえずトイレで用事を済ませ、眠気覚ましの缶コーヒーを片手にぶらぶらと歩く。


 山間に位置しているからずいぶんと気温が低い。


 とりあえず一休みしようと座れる場所を探していると、入ってきた時は暗くて気づかなかったが植木の奥に丸太を加工した木製のベンチコーナーがあった。


「ちょうどいいな」


 ベンチは電灯から少し離れている上に間に挟んで立っている植木の影でかなり暗い。


 電灯の光に慣れた目だとほとんど何も見えない。


 足元に気をつけながらベンチに座り、コーヒーを一口飲んで夜空を見上げる。


 目が暗闇に慣れてきたからか、まわり全部が山で光源が少ないからか、星がよく見える。


 そういえばこうやって星空を見上げるなんていつ以来だろうなどと思いながら、しばしぼーっとする。


 出発したのが確か二十時前だったから、かなり長い距離を走り通しだった。


 最初のほうはかなり飛ばしていたが、道程の半分あたりでもうどうせ急いでも結果はかわらないと思い、安全運転に切り替えた。


「疲れた」


 やっと肩から張りが徐々に抜けていく様を感じながら、しみじみ呟いた。


 この疲労っぷりはロングドライブだけのものじゃないことは自分でもわかっていた。

 

 十年ぶりの帰郷。


 まだ十年なのか、もう十年なのか。


 もう二度と、帰るまいと思っていたのに。


「だめだな」


 ひどく億劫な気分になり、俺は目線を空から正面に戻した。


 と、視界の左端になにやら白いものが見えた。


 見えたというか浮かび上がったといった感じなのだが、とにかく視界に入った。


 気になって左を見ると、同じように少し離れた場所に設置されたベンチの上に何かがいた。


 何か、というか人だった。


 視界の端に見えたのはその人の足だとわかった。裸足だからよけいに目についたのだろう。


 先客か、と一瞬思うが、駐車場に車は一台も停まっていなかった。


 二輪はどうだろう、なかったように思ったがあまり気にしていなかったから見落としたかもしれない。


 暗がりに停めてあったら気づかないだろう。


 が、すぐにまた違和感に気づいた。

 

 足が小さい。まるで子供のようなサイズだ。

 

 俺は座ったまま首を伸ばして隣のベンチの全体を確認するようを覗き込んだ。


 寝転がっていたのは女の子だった。

 

 背丈的には中学生か、よくて高校生といったところだろうか。


 暗くてぼんやりとしか見えないが、ロング丈のスカートをはいている。


 ロングのスカートでバイクを乗る奴なんかいるだろうか?


 自分もバイクは乗るし、まわりに女性ライダーも結構いるが、ロングスカートをはいて高速道路を走る酔狂な奴はさすがに見たことがない。


 ビッグスクーターならいけるか?


 いやでも、さすがにないような。


 さらに目をこらしてよく見ると、女の子の着ている服はスカートというか、ワンピースのドレスみたいなものだった。


 ゴスロリに見えないこともないが、どちらかというと瀟洒でクラッシックな、映画でよく見る中世西洋の貴族の娘といった服装っぽい。


 この季節にはちょっと暑そうに見える。


 ついでにいえば肌の色もかなり白い。


 ぼうっと浮き出ているように見える。


 髪の色も黒じゃない。


 白、というかプラチナというか、そんな感じの色に見える。


 顔が確認できないからわからないが、もしかすると外人さんかもしれない。


 深夜の人気のないパーキングエリアではだしでベンチに寝転がっている未成年とおぼしきTPOをわきまえない服装をした外人娘。


 あまりポジティブなイメージを抱けないシチュエーションだった。


「どうしたもんかな」


 小さくそう呟いた瞬間。


 むくり。


 唐突に少女が目覚めた。


 寝ぼけた感じで「ここはどこだったろう」といったふうにあたりをきょろきょろと見回した後、俺の存在に気づいた。


 びっくりしたのか目をぱちくりさせてこっちを見ている。


 目が慣れてきたとはいえ暗くてそこまではっきりとは見えないが、やはり外人さんだった。


「こんばんわ」


 とりあえず悪意はないといった意味もこめて笑顔で挨拶をしてみたが、残念というかやはりというべきか、通じていないようだった。


「きゃんゆーすぴーくじゃぱにーず?」


 無反応。


「けーねんじーやーぱんしゅぷれっひぇん?」


「やーぱん?」


 反応あり。


「あ~、いっひ、いっひはいせー」


 C評価だった教科書があっても怪しいレベルのドイツ語を必死になって思い出そうとしてみたが、所詮付け焼刃以下。


 適切な言葉は何が良いかすら思い浮かばなかった。


 不思議そうな顔で俺を見つめる外人娘の視線に耐えかねて、苦笑いを浮かべながら脇に置いたままの缶コーヒーを一口飲もうとして手に取ろうとしたら、缶をつかみ損ねてひっくり返してしまったばかりかベンチのささくれが右手の人差し指に刺さってしまった。



「いっつー。ってうわ、血ぃ出てきたよおい」


 とりあえずとげを抜いてふーふーと息を吹きかけてみるが、もちろん痛みが軽減されるわけでもない。


 けっこう深く刺さったのか、思った以上に血が出てきた。


 ティッシュでも当てるかと左手で右のけつポケットをまさぐろうとするも、以外にキツイ体勢に中々ひっぱりだせない。

 

 すると、唐突に俺の指を小さな手が包み込んだ。

 

 驚いて横を向くと、女の子が俺のすぐ横まで来ていた。


 この暗さでもはっきり顔がわかるくらいすぐ近くまで。

 

 間近で見るとやっぱり凄く綺麗な色の髪に、ぱっちりとした薄い紫色の目が印象的な、すごく整った顔立ち。


 かなりの美少女だ。


 それにしても近づいてきたことにまったく気づかなかったが、それ以上に女の子が俺の指を両手で包み込んだことによっぽど驚いた。


「えぇ?」


 冬の寒い日にホット缶を手にするような、夏に感じることはないだろうしびれるように心地よい温かみが徐々に俺の右手に広がっていく。


 同時に、痛みもスッ、と引いていった。


 女の子は緩慢な動作で俺の手を離した。


「え、あれ?」


 傷口からはまだ血が出ているが、痛みは驚くほどに収まっていた。


「おお、なんか知らんが痛みがひいた。ありがとな。君もしかして凄腕の気功師かなんかなのか。それともあれ、魔術師か。回復魔法的なディア的ななにか使えるの?」


 俺の軽い冗談交じりの発言にも女の子からの返答はない。


 言葉が通じていない以前にこっちをみておらず、そのまま俺の隣に座って自分の手のひらをじっと見つめている。


 ぺろ。

 

 舐めた。


 たぶん、俺の血を。


 いや、汚れたなら拭けばいいじゃんティッシュくらい貸すぞ。


 そんな事を口に出す前に外人娘の様子が唐突におかしくなった。


 なんとゆーか、固まっている。


 目は焦点が定まってなさげだし、口は半開き。


 そんなに俺の血がうまかったのか、それともまずかったのか。


 まずかったのならそれはそれでショックだ。


 健康診断の血液検査でもクリーンだと医者から太鼓判を押してもらったのに。


 いや、逆にうまかったからだとしてもこんな表情されるとそれはそれで複雑だが。


「君たち、ちょっといいかい?」


「え?」


 唐突に背中から声をかけられ、慌てて振り向く。


 そこには残念なことにどこからどう見てもお巡りさんな人が立っていた。



とりあえず本日中に五話投稿いたします。

後旧作の騎士団長引退宣言の閑話も更新予定です。

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