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ドラゴン、拾いました。

ゆるゆると投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

「あにうえ~みてみて~」

幼い異母弟(おとうと)がテトテトと擬音がつきそうな覚束ない足取りで歩み寄る。

フワフワと揺れる金の髪、キラキラと輝く翡翠の瞳。

私の髪と瞳は茶色だからちょっとだけ……本当にちょっとだけ羨ましい。

「ひろった!」

小さな腕の中にそれはいた。

「よくみせてもらえる?」

「いいよ~」

そっとね、そぉ~っとねと、異母弟は潰さないよう、慎重に私の手の中にそれを移す。


縦長の瞳孔。

口からピルピルと出し入れする舌。

細長い胴体の横に4本の脚。

長い尾まで覆う青緑の鱗。

背中には「く」の字の突起に小さな皮膜……翼?


「う~ん……トカゲだと思うけど見た事ないな……新種かも?」

「しんしゅ!?あにうえとかげしんしゅ!?」

「お城に帰ってお爺ちゃん先生に聞いてみよう」

「うん!しんしゅかう!」

「それは……陛下にお願いしようか」


にっこりとあどけない笑顔の異母弟を真似て口角をあげた。











あれは3歳になったばかりのリュートの初の公務。

年齢を鑑みて一番安全な軍施設の視察。

同行した私も当時は10歳……思えば公務という名の遊興だった。


そんな夢をみたせいだろうか。











「お久しぶりです」


場違いに朗らかな挨拶をする、目の前にいきなり現れたの青年が弟のリュートだとすぐに気付いた。フワフワな金髪は短く刈り込まれ、翡翠の瞳は輝きを失っていた。そうか。切ってしまえばよかったのか。腰まで伸びた私の髪は手入れをさぼったせいでボサボサだ。


いや、そんなことよりも……


「……大きくなったな」

「はい?」

「いや……初の公務での事を思い出していた」

「10年……いえ、11年前でしたか?」

「12年前だよ。本当に大きくなった……ところでリュート、4年振りか?」

「5年です。5年経てば俺だって大きくなりますよ」

「5年か。思い出話に花を咲かせたいが……脚をどけてやれ」

「嫌です」

「リュート」

「嫌です。見てください、この顔。醜く歪んで……脚をどけた途端、兄上に襲いかかりますよ」

醜く歪んでいるのは死の恐怖と過度な重圧の所為だし、この状況でも襲いかかってくるなら寧ろその気概を褒めてやりたい。

暫く無言でリュートを見つめたが、引く様子はない。

肩を竦め、夜着のまま寝台から降りれれば足枷の鎖がじゃらりと鳴る。それを見たリュートの喉が鳴る。

それに呼応したのか、ぐしゃり、と一つの脚に押し潰されていたモノ(・・)が肉塊と化す。

「……左は殺すな。尋問ができん」

「………兄上っ」

グルグルと喉で潰した呻きと噎せるほどの血の匂い。別の脚に押さえ付けられたもうヒトツ(・・・)は失神していた。


さもあらん。


暗部ならいざ知らず、たかが近衛風情がこの恐怖に耐えられる筈がない。


どっしりと体躯。

研がれた爪牙。

その咆哮は乱雲をも散らす。

自然界の頂点に君臨する活殺自在の覇者。


本当に、ほんっっっっっっとうに大きくなった。






あの日、弟が拾ったドラゴンは。

「ドラゴンですな」

「ドラゴンかぁ」

「かぁ~」

「キュル!」

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