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26話 ソードオフショットガン【ウインチェスター】

「随分森の奥に来たけど、本当にこんな場所にダンジョンなんてあるのか?」


「地図ではこの先」


「わわっ、随分と木々が生い茂ってますねぇ」


「気をつけて、クレールは何度か足を滑らせてダンジョンに落ちてる。 ズボン破けてパンツ見えてた。 パステルピンク」


「トンディさん? それ言わなくていい情報だよね‼︎?」


「しかもそれに気がつかないで商店街を練り歩いて、一時期パステルピンクって呼ばれ……」


「トンディ‼︎?」


顔を真っ赤にし、クレールはお尻を抑えて叫ぶ。


「ふふふふ、おふたりは本当に仲がいいですね」


「でしょ?」


「くっそ……否定はしないけれど、この状況でよくそう言えるなヤッコ」


「喧嘩するほど仲がいいと申しますし、見ていて微笑ましいです。 聖女としての修行のせいで、私には友人一人作ることを許されませんでしたから」


「ヤッコ……」


寂しそうな表情で笑うヤッコ。 その姿にトンディとクレールは顔を見合わせると。


「なら、私たちがはじめての友達」


「だな」


トンディとクレールはそっとヤッコと手を繋ぐ。


「トンディさん、クレールさん」


驚いたような表情のヤッコに、二人は何も言わずに笑顔のみを返し。


「さぁそれじゃあ、みんなで仲良くダンジョン探索に……」


レッツゴー。


そう高らかに宣言をしようとしたクレール。


しかしその言葉をかき消すように。


「ベアアアアアアアアアア‼︎‼︎」


大声が響き渡り、森の向こうの木々がなぎ倒されるのが見える。


「ななっ‼︎? なんだぁ‼︎?」


「あの声……」


その声にトンディはハッとした表情で近くの木の上に登ると、表情を硬ばらせる。


「まずい……あれ、ジャイアントベア。 しかも、囲まれてる‼︎?」


「クマだぁ‼︎? ここクマ出る山なの? 聞いてないぞそんなの‼︎」


「おかしい、春先のクマは冬眠明けで凶暴だから、この時期クマが出る場所のクエストはAランククエストになるはずなのに」


「あ、そういえばギルドにクマの巣討伐の依頼が貼ってあった気がする‼︎?」


「またマゾ子か……」


うんざりとした表情でため息を漏らすトンディ。

言われて見れば地図を見返すとたしかにクマが巣を作りそうな森の奥にバッテンがついている。


「あんのやろう……地図のバッテン、ダンジョンの入り口じゃなくて巣穴の密集地帯のバッテンか‼︎」


「帰ったら狙撃の的にしよう……」


「ショットガンのな‼︎」


「えぇと、よく事情がのみこめませんがとりあえず、ピンチということでよろしいのでしょうか?」


「「そういうこと‼︎」」


息ぴったりに叫ぶ二人に、ヤッコはあらあらと呟きながら腰にさしたメイスを手に取り、トンディは弓を、クレールは肩に担いだ38口径リボルバー【スミス】を引き抜き構え。


「これでもくらえー‼︎」


先頭を走るクマの顔面にむかい引き金を引く。


ミノタウロスのツノをへし折った銃弾。 しかしその一撃はクマの頭蓋を撃ち抜くも。


「べあああぁ‼︎‼︎」


「き、聞いてない‼︎? 象撃ち殺す銃だぞこれ‼︎」


「クモや骨格が人間と似通ったミノタウロスとはわけが違う‼︎ 特に頭蓋の硬さは鋼鉄並み‼︎ ハンドガンじゃ意味がないよクレール‼︎」


驚愕するクレールにたいし、トンディは冷静にそう木の上から語ると。

トンディはちくしょうとつぶやきながらハンドガンをホルスターにしまう。


「くっそー、こんなところでも火力不足かよ‼︎」


「泣き言言わない‼︎ 援護する‼︎ ヤッコは危ないから下がって、怪我したら回復頼む‼︎」


「え? ですが私……」


なにかを言おうとするヤッコ。

しかしそれよりも早くクレールの眼前にクマが飛びかかり、その巨大な腕でクレールを殴り飛ばそうとするが。


「疾‼︎」


「ベアあぁ‼︎?」


クマに向かい放たれた矢はまっすぐクマの両肩を貫く。


悲鳴をあげて倒れるクマは地面をのたうちまわる。 立ち上がろうともがくが、突き刺さった弓矢が邪魔をしてうごけないようだ。


「肩甲骨を撃ち抜いた‼︎ クレール次がきてる‼︎ 行ける?」


「あぁ、問題ない‼︎ こいつを持ってきてるからなぁ‼︎」


そう言うと、クレールは背中におったショットガン【ウインチェスター】を引き抜く。


「く、クレールさんそれは?」


「昔から、クマ殺すならライフルかスラッグ弾つめこんだショットガンって相場が決まってるのさ‼︎ 銃身ぶった切ったソードオフだから射程は短めだけど」


「があああぁ‼︎」


叫びながら鋭い爪を振り上げるクマ。

しかしクレールはその腕を潜るようにすり抜けると、ふとk路鬼潜り込みその心臓部にショットガンの銃口を押し付けてニヤリと笑う。


「ゼロ距離でぶっ放せば関係ないもんね‼︎」


引き金を引くと同時に放たれるスラッグ弾。 巨大な鉄の塊は、クマの頑丈な骨格を砕き、心臓を破裂させる。


「がっ……かっ」


「クレールさん‼︎ もう一頭来ています‼︎」


「ベアあああぁ‼︎」


心臓を失い、クレールにのしかかるように倒れるクマと、仲間の仇と言わんばかりにクレールへと襲いかかるもう一頭のクマ。


しかしクレールは落ち着き払って死亡したクマの巨体を背負うと。


「どおおおおりゃあぁ‼︎」


「べっ‼︎? べあああ‼︎」

襲いかかるクマにめがけて投げつける。


およそ300キロはあるクマの巨体。

当然投げつけられるように飛んできたその巨体に、クマは転げるように横倒しに倒れ。



「もう一丁‼︎」


転倒し、あらわになった胸をクレールは引き金を引いて撃ち抜く。


なにかが砕けるような音が森に響き、また一頭ジャイアントベアの心臓が動きを止める。


「す、すごい威力……あの巨体を一撃で……」


「散弾詰めこんであるはずの重心にどでかい弾入れたスラッグ弾だからね、近接戦で戦うならライフルよりも頼りになるんだ……ただ」


「ただ?」


ちらりとクレールは森の奥を見ると、そこには数頭のクマがさらに迫ってくるのが見える。


「装弾数が二発だから大群に襲われるとやばい‼︎ トンディ、リロードするまで助けて‼︎」


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