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25話 不人気なダンジョン探索

「今日受ける依頼は、南の森に見つかったダンジョン。 あんまり深くないし魔物も少ないって話だから、ヤッコの最初のダンジョン探索にはもってこいだろう」


「お気遣いありがとうございます。 お二人はこういった場所を探検するのがお仕事なんですね」


森の中をトンディ先行のもと、搔き分けるように進む3人。


トンディ手には方位磁石とマゾ子から渡された地図があり、森と会話をするように耳をぴこぴこと動かしながら、地図のばってんが記された場所を目指す。


「Dランクのダンジョン探索なんて、Sランク冒険者なのに、意外と低いランクのクエストを受けるんですね」


「まぁね、魔王討伐するわけでもないし。ここらのダンジョンのどこかに、お父さんの手がかりが眠ってるから」


「お父様……ゲイト様の手がかり、ですか?」


「あぁ、トンディの親父さんはここの地域にあるどこかのダンジョンで行方不明になっているらしくてさ」


「なるほど、だからこうして手がかりを探してダンジョン探索をしていると」


「そういうこと、まぁ急いでも早く見つかるようなものでもないから、それ以外の依頼はあんまり積極的には受けるつもりはない。のんびり暮らしながらお父さんを探せればそれでいい」


「欲がないのですね、お二人は」


「積極的に稼ぎたいとは思わないだけ」


「質素に平凡を愛する。 神の道にも近しいステキな人生観だと思いますわ」


「大げさ」


呆れたように苦笑を漏らすトンディに、ヤッコはニコニコと笑うと「そうでしょうか?」と呟いた。


「ちなみに、ダンジョン探索とは具体的には何をする依頼なのでしょう?」


「基本的に求められるのは三つ。 一つはそれが遺跡なのかただの洞窟なのかを見極めること。二つ目は、外部への脅威があるか。 三つ目が脅威が発見された場合できる限りその脅威を排除すること……まぁ、報酬は全部クリアしても一部だけしかクリアできなくても変わらない」


「そうなんですか?」


「発見されたばかりのダンジョンってのはギルドも持て余すんだよ。 何もないただの遺跡の場合もあるし、やばい魔物の巣になってる場合もある。 そこの調査に一般人を向かわせるわけにもいかないし、かといって冒険者だってそんななにがあるかわからない場所に危険をおかしてまで行きたくはない」


「ダンジョンにある宝箱は冒険者の夢……とよく聞くので、ダンジョン探索は人気が高い依頼だと思っていましたが」


「たしかにダンジョンには宝箱があるけど」


「あるのは本当に稀。中に強い魔物がいる時の方が多い」


「リスクとリターンを考えると割に合わない、という訳ですね」


「そ、だから私たちみたいに理由がなきゃ好き好んでダンジョンに潜る人間はいないってわけ。だから初心者冒険者が、冒険の練習がてらに受けられるようにってダンジョンの探索依頼っていうのは達成に必要な目標を著しく下げる傾向にあるのさ。 まぁそれでも、ダンジョン探索で強い魔物に出くわして全滅……なんてよくある話だから、大抵の冒険者はそこらのコボルト退治だったりスライム狩りなんかをして経験点を稼ぐのが普通なんだけどね」


「……まぁだからこそ都合がいい。ダンジョン探索の依頼はほとんど手つかず状態だから、お父さんの痕跡があっても荒らされてないはず」


「それに、ダンジョン内の物は壁画以外は持ち帰り自由だから、レガシーのパーツを持ち帰り放題って訳」


「レガシー……古代鉄の時代にある遺物ですね。 トンディさんの頭についてる」


「ふふーん‼︎ クレール、こんなものも作れる。 すごいでしょ‼︎」


「まぁ、これはクレールさんが……クレールさんはガンスミスという職業だけでなくレガシーマスターとしても優秀なのですね」


「まぁね、でもそんなの魔法の代替品にしかならないから……」


「そんなことありませんよ? 今、王都ではレガシーの開発に余念がありませんから」


少々悲観的にそう語るクレール。

しかしその言葉を否定するようにヤッコはそんなことをいい、トンディとクレールは目を丸くする。


「え、そうなの?」


「はい、たしかにレガシーは旧世代のガラクタ、魔法に劣るという考え方は主流でしたが。魔法はあくまで人や生命に宿る魔力というものの範囲でしかなにかを成すことが出来ず、その性質上蓄えるということができません。 だからこそ使える人に限りがある上に、進歩がすすんだ現代では魔法における天井が見え始めているんです」


「天井……そうなんだ」


「ええ、いかに強大な力を持つものでも、ひとりでは限界があるということです。 それに対して、レガシーの動力の一つである〜電気〜というものには近年注目が集まっているのですよ」


「なるほど、電気は蓄電鉱石に蓄えられるからね。こんな感じに」


こんこんと頭を叩き、ヘッドライトを示すトンディ。

クレールはちょっと嬉しそうににへらと笑った。


「えぇ、例えば洞窟内で明かりの魔法を使えば、道具は杖のみでたりるかもしれませんが、そもそも探索中延々と魔力を垂れ流しにしているわけです。 当然消耗も激しく1時間も持ちません。光の魔法を操る我々聖職者であっても夜ランタンを手放さ無いのはそういった理由です」


そう語る聖女。

たしかにいくら下位魔法だからといえども、垂れ流しにしていれば消耗もあっという間だろう。

だが、だからこそ。

(ってことは、アリサのやつ今相当無理してるんじゃ……)


クレールの脳裏にそんな不安が過ぎる。


「それに、電気は熱や水力で生み出すことができますので、ほぼ永久に尽きることはないですし、わざわざ新しい施設を作らなくても、国の機関であるごみ処理施設や水路、アンデッド処理施設を利用して生み出せる可能性もあります、ただ昔の技術ゆえにその膨大な電気の使い道となるレガシーが発見されていないのが、一番の問題なんです」


「昔の人は使ってたみたいだけど、機械ってのはでかさと壊れやすさが比例するからなぁ……仕方ないさ」


「水路で発電……。クレールが近くの橋の下に作ってた水車ってまさか」


「あ、バレた? 蓄電鉱石、実はあそこで充電してるんだよね」


「クレールすごい、最先端‼︎」


「え、えへへへへ、そんなこと」


謙遜するクレールであったが、その顔はアイスクリームのように溶けてしまっている。


「あれ? でも水車作ったのこのヘッドライトができるずっと前だよね? なんで充電してんの?」


「あぁ、まぁちょっとねぇ。もしかしたら今度、面白いもの見せてあげられるかも?」


そう笑うクレールに、ヤッコとトンディは二人顔を見合わせて首をかしげるのであった。


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