番外編01 ただしビームは……
短いです。リューが生まれたちょっと後の話。
たくさんの感想、誤字の指摘、とてもありがたいです。いつもありがとうございます。
学園の昼休み、私は校庭の片隅で空を睨んでいた。
リューが目から黒いビームを出したのを見て、私にもできるのではと試している最中だ。数十分はこうしているが、私の目からビームが出る気配はない。
「おい、そんな所で何をしているんだ?」
声に振り向くとパトリックがいた。あ、危ない。慌てて私はパトリックから顔を逸らす。
「あまり近づかないで!」
「す、すまん」
パトリックがそんなにしょんぼりとした声を出すとは思わなかった。そそくさと離れていこうとする彼に手短に事情を説明する。
「あのね、目からビームを出そうとしてたから、危ないよって」
「ビーム?」
「えっと……光線? 産まれたばかりのリューが目から出してた黒いやつよ」
「ああ、あれか。ん? それをユミエラが出す?」
私たちは目を合わせることもなく、離れたままで話を続ける。
「ええ、出力が絞れそうだし、撃つまでが早いし優秀そうだなって思って」
「……そもそも、目から出す意味はあるのか?」
ああ、なるほど。リューが目から出していたものだから、そういうものだという固定観念に囚われていた。
「そうね、指先から出せるようになれば同時に十本撃てるし、そっちのほうが良いに決まっているわ」
「藪蛇だったか……」
目だと二本しか撃てないし、視界が塞がれる可能性もある。流石パトリック、私に無い発想を平然としてのける。
待てよ、そもそも目とか指とか特定の部位に囚われているのが駄目なのではなかろうか。全身の毛穴からビームを出せるようになれば、死角が無くなるではないか。
「んー、でも背中とかからだと服に穴が……」
「背中?」
「全方位にビームが撃てたら強そうだと思わない? イガ栗みたいなかんじで」
全身からビームを放つ私を想像したのか、パトリックは盛大に顔を顰める。
「やめておけ。そもそもブレスと同じで、ドラゴンには可能でも人間には不可能なのだろう」
「ああ、ブレスの練習からするべきってこと?」
私は炎を吐くべく、口を大きく開ける。あ、なんか出そう。
「……すごい間抜けに見えるぞ」
パトリックに言われてよくよく考えたら、今の私は嘔吐しているようにしか見えない。
「分かった……ブレスもビームも諦める」
いま私が彼から顔を背けているのは、目からビームが出たら危ないからだ。
決して恥ずかしいからではない。
二章やります。一章同様、書き溜めも無いけれど見切り発車。内政とか結婚に関するあれこれになる予定。