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番外編10 あけましておめでとうございます(2/10投稿)

新年あけましておめでとうございます。

コミカライズ3巻が発売されております。リュー君とエレノーラが登場する3巻。ユミエラとエレノーラのメイド服が見られる描き下ろし短編もあります。

 お正月と言えばおみくじ。ということでおみくじを作りました。

 私は箱をパトリックに差し出す。


「はい、これ引いて」

「また突然…………これは?」

「新年だからおみくじ作ったの」

「まだ新年じゃない」


 えーっと……今の私は王立学園を卒業して、領主一年目で、まだ冬になったばかりで……ということは全然新年じゃない。

 ここ最近時間の感覚がおかしいんだよな。ちょうど一ヶ月前にお正月だった気もしてくる。


 とりあえず今はお正月じゃなくて、あけおめとか言っちゃダメな時期みたい。春節と考えれば……春節っていつだ?

 ともかく、流石はしっかり者のパトリック。今がお正月じゃないと理解しているんだな、偉いぞ。


「まあ、気にしないで引いてみてよ。今年一年の運勢が分かります」

「このクジ一つ一つに占い結果が書いてあるのか? それはだいぶ……いい時間の使い方をしたな」


 おみくじは出た瞬間の結果で楽しくて、仕事とか健康みたいな細かい項目を眺めて二度楽しめて、何が言いたいか良く分からないお説教みたいな部分であまり楽しくなくて、累計二度楽しいものだ。

 しかし私は仕事・健康……以外に何があったか憶えていなかったので、大吉や凶の部分だけを作成している。

 だからそんなに時間かけてないんです。仕事を放ったらかしにしておみくじ作ってたわけじゃないんです。


「いや、漢字二文字だけだから。運勢のランク? みたいなのが書いたの。大吉みたいな……あ、SSRって言ったほうがわかりやすい?」

「両方わからん」


 パトリックはお手上げだと首を振り、箱に手を伸ばした。

 ふふふ、罠があるとも知らずに素直におみくじを引くとは油断しすぎですよ。

 彼は箱の中の紙をゴソゴソと物色し……動きを止めた。


「……引かないの?」

「ユミエラがただの占いをやるはずがない。何か仕掛けがあるんじゃないか?」

「な、な、な……ないよ」


 パトリックはお見通しだった。

 実はこのおみくじ、凶の確率が20%だったりする。2割はそこまで高くないと思うかもしれないが、おみくじの凶としては破格の当たりやすさだ。おみくじを箱買いしても出るか怪しい凶が、普通に引きうる確率まで引き上げられているのは罠と言えるだろう。

 凶が80%とかになるとただの嫌がらせなので、本来はこれくらいが丁度いい塩梅だと思うんだけど。


 罠を警戒したパトリックは更に聞いてくる。


「ランクと言っていたが、どの順番で良い運勢なんだ?」

「大吉が一番良くて、次に中吉? 小吉……あれ? 小吉より吉がいいんだっけ? あと末吉……いま言った中では一番下だったような……?」

「自作しているのにどうして曖昧なんだ」


 いやだって知らんし。小吉・吉・末吉あたりの順番ってみんな知らないでしょ。知らずに初詣だけ神社に行っておみくじ引いてるでしょ。

 おみくじはパック裏にレアリティ表記が無いから知る機会も無い。どうして表記が無いんだろう? あまりガチガチにやるとサーチされたり転売ヤーの餌食になるからかな。

 トレーディングカード脳で考えると、レアカード凶の封入率が高いユミエラオリパは良心的かも。


「大吉が良くて、凶が最悪って覚えておけば大丈夫」

「なるほど、凶が多めに入ってるんだな」


 思考盗聴されてんの?

 私のしょぼい企みは見破られたとはいえ、おみくじは引いてもらうからね。パトリックにはおみくじ界のブラックロータスこと凶を引けるのか。

 彼は引くしかないかと諦めてため息をつき、無造作に紙を一枚箱から取り出した。


「これは……なんて書いてあるんだ?」

「小吉だ。小吉……小吉かぁ」


 なんとも反応に困る。小吉は良いんだろうけど……ねえ? 普通すぎてあまり面白くなかった。大吉と凶を半々にして天国地獄50%おみくじにした方が盛り上がった気がする。

 小吉にピンとこなかったパトリックも、私の反応を見て曖昧なやつの一個だと分かったようだ。


「一番良いのを引いたら来年以降下がり調子かもしれないからな。これくらいでいいんじゃないか?」


 小吉引いた人が小吉フォローあるあるを言ってる。

 さて次は私の番だ。おみくじボックスをパトリックに押し付けて、私は大吉を引くとしよう。

 ちなみに大吉は一枚しか入っていない。しかし確実に引ける。もちろん細工がなされているのだ。


 上側に貼り付けてあるので、いくら運が良くても普通に引くのは不可能だ。糊付けが甘くて落下してしまい、しかもそれをピンポイントで引くという豪運の持ち主なんて……。

 

「大吉ですわー!」


 いや、エレノーラちゃん漢字読めないでしょ。

 いつ現れたのかは脇におきつつ、彼女の引いたおみくじを確認する。


「大吉ですわよね?」

「……大吉です」


 読めずとも大吉を確信する彼女の精神がすごい。たぶん引く前から分かっていたのだろう。麻雀漫画の主人公みたいだ。


「最後にユミエラさんの番ですわ」


 エレノーラに引くよう促されるが、まずいことになった。仕込んだ大吉を引かれたせいで、私は真っ当な運試しを迫られている。

 くじ運悪いんだよなぁ。2割で凶……8割を引けばいいと考えれば大丈夫そうかも?

 命中80のわざが当たるイメージだから……全く信用できない確率だ。異世界でなみのりイドンプ問題に悩まされるとは。

 降水確率80%と思えば……いける! 80%は絶対に降る! 今なら引ける!


「引きます……これです!」


 何吉だろうか。目をつぶっておみくじを引いた私は、ゆっくりじわじわとまぶたを開けて……。


「同じ文字がありませんから、吉ではありませんわね」

「じゃあ凶じゃん」


 エレノーラの超推理により、自分で見る前に結果が分かってしまった。

 降水確率で考えてたけど、20%の日に傘を持たないで出かけてずぶ濡れになったなぁ……と今になって思い出した。

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アニメ公式サイト オンエア情報
【2024/01/10】 小説6巻発売です!
カドカワBOOKS公式サイト gw3da0i61udyjawxccgcd983iazp_12c9_is_rs_2yoo.jpg

― 新着の感想 ―
そもそも、 日本で交通事故に遭ったから 死亡異世界転生した訳ですし ・・・
[良い点] 相変わらず面白い!! 小説6巻早くでてほしいです!
[一言] 御神籤は本来は、『吉』と『凶』だけでした。 後に、吉凶にランクを付けて『大吉・吉・小吉』『大凶・凶・小凶』更に『吉凶なし』となりましたが、 『小凶』は、『ちっとは良い事もある』ということで『…
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