04:模擬戦と実戦<side:信幸>
信「今回は戦闘があるはずなのだが。」
紅「作者に表現力がないからな~。」
式神の皆と知り合ってから、時間がたち、小学2年生の夏休み。
各属性との闘い方の教えてもらい、自分の力が上がったように感じたころ、
親父が俺ら兄妹を呼んだ。
「お前ら、"手伝い"をしろ。」
偉そうな口調で、親父は任務の話を始めた。。
「この手伝いは一人で行ってもよいし、二人でやってもよい。
ただ、場所は2か所で、時間も同じ。まあ、一人でやるしかないわな。」
にやにや笑いながら、前置きを話す。本当にいやな人だ、
なぜ母はこんな男と結婚をしたのだろう。
たしか、一度聞いた気がするが忘れてしまった。
「一つは、野犬が悪霊化して、あふれている空き地の除霊。
もう一つは、川辺の桜並木の除霊。
桜並木のほうは、どうも複数の女性が悪霊化したらしい。
どっちが、どっちに行く」
しばらく考えて、
「空き地のほうは、俺が、桜並木は紅葉に任せます。」
「そうか。では、よろしくな。」
そういって、出ていけと手で促された。
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部屋に戻り、天空に固有結界の<隔絶>を張ってもらう。
家では壁に耳あり障子に目ありだ。
力を知られて、いいように使われては、
面倒くさい。
<そんなことにはならんと思うがね。
主の父親は不器用なだけだ。言葉が足りない。
行動が足りない。足りない尽くしではあるがな。
年を重ねれば、お主もわかるようになる。>
白虎が独りごとに返してきた。
訝し気に頭を傾けていると、玄武が聞いてきた。
<主、隔絶まで使って、何の話です?>
「そうそう。今回の任務なんだが、力をあまり見せずに戦いたい。
固有結界を使うとして何か方法はないか?」
暫くして、勾陳が
<木で充満させて、騰蛇と朱雀の炎で燃やしたらどうでしょう?>
「それはいいな。それで行こう。」
<でも、どうやって結界の中に閉じ込めるのです。>
青龍が聞いてきた。
「空き地全体を、囲む。木の符はあらかじめ、空き地に入れといて、
時間が来たら、囲むかたちで。」
<ふむ。それなら、できそうじゃな。では、実際に隔絶の中に木をはやして、
模擬戦を行ってみよう。相手は勾陳と玄武でよいかな。>
勾陳は双剣を、玄武は刀を顕現させ、合図を待った。
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実戦と同じように、木が生えるイメージを施した符を床に置き、
少し離れて固有結界を展開すると当時に、符を起動させる。
結界の中に、朱雀と騰蛇、勾陳、玄武を入れて展開する。。
勾陳と玄武が必至に木を切りざむなか、騰蛇と朱雀が火を放つ、
炎は高温に達し、結界の中を満たす。
すると、空間が一瞬揺らぐ、
<まずいですよ。天空>
<うむ、天后。急いで結界を張るのじゃ。>
ーバンっー
爆発し、信幸の固有結界が破裂した。
間一髪のところで、天后と天空の結界が、衝撃を封じる。
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「どうして、こうなった。」
<あー。恐らくですが、主の属性は火と相性が悪いため、
あまりに高温の炎が結界をみたしたので、
力が消失したのでしょう。結界が消失すれば、膨張した力があふれるので、
風船が破裂するように爆発が起きたと考えれれます。>
「説明ありがとう。太裳。」
<これでは実戦では、無理じゃな。>
「いや、騰蛇と朱雀の二柱を使ったからだと思う。
朱雀だけにお願いして・・・・・。待てよ、
鋼の針で結界を満たせばいいんだ。そうだ、そうすれば、問題ないじゃないか。
残りは銃で片づければいいし。」
その後、試したところ、サボテンのようにすれば効果的に刺さることが分かった。
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任務前日の夜21時に現場の空き地で、ヘッドライトの明かりを頼りに、
符を置いていく。
実は、夜に悪霊が出やすいといわれているが、出やすい時間は、
夜中の0時から4時44分までである。
また、出やすい曜日もあるが、今回は事前調査で明日が出やすい日として、
指定されている。
そこで、21時の夜の暗い中、人払いの結界を張って、せっせと準備をする。
1時間ほどで、作業が終わり、時間まで母に作ってもらった。
豚汁をすすりながら、待つ。
夏とはいえ、この場所は肌寒いので、作業後の豚汁はちょうどよかった。
しばらくぼーとしていると、指環の中の太陰が念話で話しかけてきた。
<主だれかが、見ているよ。>
(気配からすると、母さんだな。心配して、見ているだけだろう。)
<父親との差がひどいな。>
白虎がなんかぼやいたが、無視をする。
<あとね、言いにくいんだけど。足元に、子犬の霊が、豚汁を欲しがってるよ。>
言われて、足元を見る。確かに子犬の霊が、ちょこんと座って、
じっと手の豚汁を見ている。
(太陰。この子犬指輪の中に入れられるか?)
<天空は大丈夫だろうって。どうするの?>
(母に見つかる前に、助けてやりたい。頼めるか。)
<いいよ。あと、私たちも豚汁食べたいな~。>
(いっしょに持っていけ。食べ終わったら言ってくれ。残りを食べるから。)
<わかった。>
供物として与えたものは、味がなくなるが、仕方がない。
お椀に少しづつ足して、食べるとしよう。
10分ぐらいすると、
<食べ終わったよ。>
と声がかかる。味のしなくなった豚汁を、すすりながら待った。
約1時間後、
ーワオーンー
遠吠えが聞こえたかと思うと、そこかしこから、
犬の形をした何が、地面から出てきた。
その様子を隠れながら、観察し、出きった段階で、結界と符を起動させる。
神眼で結界の中を確認する。
ひときわ大きい犬が他を守るように一身に針を受ける。
だが、隙間なく生え続ける、針は無情にも、
他の犬を貫いていく。
ふと、この犬たちの生前の記憶が見えた、この空き地はもともと野良犬たちが、
雨かぜをしのぐために利用していたようだ。
もともと天井があるような建物がまばらにあり、それを使っていた。
暫くして、工事が始まると犬たちはたたかれたり、刺されたりして殺されたのち、
死体を燃やされた。
そこまでのイメージをみて、先ほどの子犬の母親が
他の犬を守ろうと必死になっている、大きな犬であることが分かった。
(ああ。なんてことだろう。死んだあとでも、人間に殺されるなんて。)
工事の妨げになるから、除霊をしてほしいとのことだったが、
これでは人間の思惑で犬たちを振り回しているだけだ。
どうにかできないかと考えていると。
<あらあら、主さま。この犬たちを助けたいのですか?>
(天一できるのか?)
<人への恨みはあるものの。まだこの元たちは、
自らの仲間を守ろうとするやさしさがございます。
それに主様が迷ったこともありますが、まだ魂が壊れておりません。
先ほどの子犬との縁を使えば、我らが眷属とできましょう。>
(頼む、天一。救ってやってくれ。)
<ふふふ。主さまはお優しい。では、こちらに魂を運びます。
運び終えましたら、符だけを残して、結界を解除してください。
さすれば、針の筵でさされて消えたように見えるでしょう。
では、そ~れ。>
合図と同時に結界を解除する。魂を抜かれた悪霊が黒い霧になり、消えていく。
天一の言う通り、針に刺されて消えたように見える。
俺は立ち上がると、空き地の様子を確認し、符の力を解除し、帰ることにした。
信「やはり、戦闘シーンはないか。」
紅「信兄。あとで、犬をもふもふさせて~。」