姫騎士メープル①
紅「だれの話?」
信「日本語で『楓』だし、お前の過去でじゃあ?」
ーカンカンー
木剣の打ち合う音が聞こえる。
東方の恰好をした男が目の前に見える。
(あれ?勇?私何をしていたっけ?)
紅葉は意識がはっきりとしはじめると、混乱した。
(あれ?体が動かない?なんで?)
自分なのに、自分の自分とは違う意識で動く体、思考も違っている。
紅葉はしばらくの間混乱したものの、何度やっても動かないので、
あきらめて、自分の置かれている状況を考えた。
日々”脳筋”と呼ばれている紅葉だが、こういった場合の切り替えは早かった。
(夢?ずいぶんリアルな夢ね。音も伝わってくる感覚も。)
紅葉はとりあえず、現状を楽しむことにした。
何よりも、自分の武器の一つの刀の意志の勇よりも
数段上の実力を目の前の勇からは感じる。
それに相対する自分も惜しいところまで打ち込んでいる。
それを邪魔するのは無粋というものだ。
「ヤァ。」
自分が剣の腹で思いっきり相手の剣をはじく。
勇と思われる男はそれがわかっていたのか逆に払いにかかるが、
ーバキバキッー
自分の木剣は衝撃に耐えきれず、折れてしまった。
・・・・
「いや~。相変わらず姫の剣は重たいですな。」
「当たる瞬間だけ、強化しているからね。でも、だめね。
この方法だと、武器がどれもこれもすぐダメになってしまう。
やっぱり、属性系の魔法で搦め手を考えた方がいいかな。」
「姫、慣れない手は逆に隙につながります。力で押すなら押すで、
その力を後押しする手を考えた方が良いかと。」
「そうね。今の延長で考えてみるわ。」
そういって、振り返った先はアンとサラに似た女性たちがいた。
「姫様、どうぞ。」
そう言って、アンに似たメイドはタオルを渡してくる。
「姫様の太刀筋はいつ見ても豪快ですね。」
「馬鹿にしているの?」
「滅相もございません。私のようなものではかなわないと思うぐらいです。」
「ふふふ。わかってる。冗談よ。」
そう言って私?は荘厳な廊下を歩き始める。
「「メープルお姉様~。」」
「あら、ユエ、ユン、遊びに来たの?」
「「ううん。マーリンお姉ちゃんに呼ばれたの。」」
「マーリンが?」
「「そう。」」
「ああ。それでしたら、私も呼ばれています。
なんでも、魔法武器の実験に付き合ってほしいとのことです。
私の他にもそこのアン、先ほどの武人殿といった面々が呼ばれているそうで。」
「あの人にも困ったものね。でも、あの人ほど、魔道に詳しい人もいないものね。
弟子のあの子も大変ね。いつもいつも突拍子もない実験や行動に振りまわされて。
あとで、私も顔を出すわ。なんか変なことをされたら、いつでもいうのよ。」
「お心遣い、痛み入ります。」
「さて、父上のところに近隣の様子をお伺いに行こうかしら。
どうも、魔人の国の動向が怪しいのよね。」
「あそこは、常に欲に忠実なものが多いですからね。」
「そうね。何事もなければよいのだけれども。」
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-コンコン-
「入れ。」
「父上、失礼いたします。どうしたのですか?そのような顔をして。」
「あぁ、メープルか。いや、先ほど国境付近に魔人の軍勢が現れ、
侵攻の気配があると連絡があってな。
次の連絡次第では、儂自らが出なければならんかもしれん。」
「やはり、そうなりましたか。では、執政は以前の取り決め通りで?」
「ああ、儂の不在および死亡時はお前が執り行え。
あ奴が生きておればな・・・。」
「それは言わない約束です。兄上は民のために身を犠牲にしたのですから。」
「あの流行病さえなければ。そうだ、伝え忘れておった。
お前だけでは何かと不安だから、
マーリン殿とジン殿に手助けを頼んでおいた。」
「マーリンとジンですか?マーリンはともかくジンは。」
「内政はお前に比べれば優秀だ。まぁ、軍事はお前の方が優秀ではあるがな。
如何せんお前は、外交と内政というものを理解していない節がある故。」
「はははぁ~。」
「笑って誤魔化すでない。まぁ、良い。あと、話を聞いていると思うが、
マーリン殿が新たな試みをしているのは聞いているな。」
「ええ。詳細は知りませんが。」
「なんでも、主となる者の絆によっては不死になる魔法の研究だそうだ。」
「なんです。それは?魔人でもない人が不死になるはずがないではないですか?」
「精霊がどうとかと言っておったな。」
「はぁ。難しそうですね。」
-ポゥ-
机の上の水晶が光る。
<国王様、魔人たちの進軍を確認しました。
国境の諸侯はすでに防衛の準備を整え、接近し次第、迎撃の予定です。>
「わかった、我も準備を整え、戦場の中心へ向かう。例の首輪は付けたか?」
<はっ。魔人に身を汚されぬと聞き、皆つけております。>
「うむ。マーリン殿謹製の魔法具だ。間違いないだろう。死体になったものは何でも、
結界の中にある聖域に転移され、魂は輪廻に送られるそうだ。つけておれば、
魔人どもに死体を操られることもあるまい。」
<はい。身内を盾にされては指揮に影響がでますからな。>
「うむ。では、我も準備をし次第向かう。」
<はっ!>
水晶の光が消える。
「聞いての通りだメープル。後は頼むぞ。」
「お任せを!」
信「出番はなしか~。」
紅「なんでこの夢の話を知っているの!!」




